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あべこべ世界も大変です  作者: 川木
恋人編
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髪を編む2

「はい、ついでにピンとかクリップも持ってきたよ」


 昼食も終わったので、部屋に戻ってさっさとかなちゃんの髪をいじってみることにした。とは言え、そんなにすごく長いわけじゃないから、お団子とかは無理だよね。ていうかやり方しらないし。

 僕が知っているのは、せいぜい三つ編みくらいだ。小学生の時になんか紐でミサンガをつくったことあるから、あれと同じはずだ。


「ありがとう。じゃあ座って。三つ編みでいい?」

「み、三つ編み!? えぇ、そんなの似合うかなぁ」

「かなちゃんなら何でも似合うよ」


 不安そうなかなちゃんを落ち着かせながら、かなちゃんを勉強机前の椅子に座らせ、僕は後ろに立つ。

 後ろから見下ろすと、なんだか小さな頭だ。何となく両手で撫でてみる。うーん。なんだろう。とてもしっくりくる大きさだ。ずっと撫でてられる。


「ねぇたくちゃん」

「なに?」

「たくちゃんから触れられるのは嬉しいし、頭を撫でられるのもまんざらじゃないけど、そう、犬撫でるみたいにするのはやめてくれない?」


 人間の頭だから。もっと丁寧に扱って。とか言われた。そんなに乱暴にしたつもりはないんだけどなぁ。かなちゃんの頭を揺らしたりしないよう、力加減も優しくしたのに。

 でも嫌なら仕方ない。気を取り直して、今度こそ、かなちゃんを三つ編みっ娘にするぞ。


 まずは髪の毛を全体的にまとめてみる。こうしてひとまとめにすると、意外と量がない気がする。なんとなく、そのままポニーテールにしてみた。


「お、ポニーテールいいね」

「ほんと?」

「うん。活発そうな感じで」


 そして、別に変な所じゃないはずだけど、なんというか、うなじってなんかちょっとドキッとする。いつもかなちゃんのは見えないからだろうけど、何というか。

 そっと、指先で撫でてみた。拾いきれない短いけど、産毛とも言えない髪が落ちていて、何だかぞくぞくした。


「うひっ!?」


 だけどぞくぞくしたのは僕だけではないようで、かなちゃんは変な声を上げた。おもわず笑ってしまう僕に、かなちゃんは勢いよく振り向いた。


「な、なに!? もう、なにー、変なことしないでよ」

「首触っただけじゃん。過剰反応しないでよ。ビックリする」

「ええ? 私が悪いの?」

「悪いとかじゃないけど、そんなに嫌だった? 怒った?」

「お、怒ってはないけど……なんか、変な感じするから、やめてよ。くすぐったい」


 首ってそんなに敏感なものかな? 自分では全然気にならないけど。でも、いつもの困り顔にプラスしてちょっとむっとした感じの顔も、ちょっと可愛い。

 ん。駄目だな。僕、付き合ってからかなちゃんのことしょっちゅう可愛いと思っている気がする。もちろん前から可愛いとは思っていたけど、何というか、建前作る必要なくなって、すぐ可愛いと思ってる気がする。悪いことではないけど。


「じゃあ、次こそ三つ編みね」

「うん。お願いします。でも三つ編みって、私の長さでもできるものなの?」

「わからないけど」


 とりあえずポニーテールはほどく。えーっと、まずは三つの束にわけないと……ん? あれ、下の方の髪まで束ねるとなると、どうしても首から下の長さだけで編むことになるから、三つ編みって無理じゃない?10センチもないし。えーっと?


「ちょっと待って」


 こんな時は検索だ。なになに? ふむふむ。かなちゃんの髪の長さで三つ編みは無理だな。でも編み込みって奴ならできそう。ちょっとずつの髪の毛を、途中途中拾いながら下に行くのか。


「よし、やるよっ」

「ねぇ、無理そうなら、素直に諦めていいんだよ?」

「いや、できるだけ頑張るよ」

「う、うーん、まあいいけど。あんまり抜かないでね?」

「僕がかなちゃんの髪の毛を毟ろうとしているみたいに言うのはおかしいでしょ」

「そ、そんなつもりはないけど」


 編もうとしてぶちぶち髪の毛引き抜かないか心配してたの? どれだけ僕が不器用だと思ってるの?

 気を取り直して、てっぺんの旋毛から右側にかけて作ることにした。後ろにあったら変だもんね、サイドに一本でいいか。いっぱいあったらドレッドヘアみたいになっても嫌だし。


 まずはちょっとだけ髪の毛をとって、と。うーん? 意外と同じくらいの量の束を三本作るのって難しいな。僕の手は二本しかないわけだし。とりあえず作った分を人差し指と中指で挟んでキープしたまま、三本目を掴んで、こんなものかな?

 で、端を真ん中にするを左右交互にして、次に周りの毛を合わせて束を太くしていく、と。


「……」

「……」


 なにこれ、むっず! えー、なんだこれ。束にした髪の毛が、すぐ混ざろうとする。真ん中と左右の髪が混ざってわけわからなくなる。まして次の髪をすくってふやすとか、もうどれがどの毛かわけがわからない。


「……」

「……あの、たくちゃん?」

「なに?」

「あの、もしかして手間取ってない?」

「……うん」


 そんなことないよ。と言いたいけど、正直、まだ始まってすらいない。なかなか始められない。もっとするする行けると思ったのに。

 嘘をついても仕方ないので、正直に頷くと、かなちゃんが振り向いた。自然と髪がてから滑り降ちた。見上げてくるかなちゃんの瞳に、何故かどきっとする。


「難しいなら、別に無理しなくて。デートの時間も減っちゃうし、ね?」

「……うん、また今度にする」

「じゃあ、髪の毛、やりやすいように伸ばそうかな」

「うーん、悔しい気もするけど、そうだなぁ。そういうかなちゃんも興味なくはないかな」


 さっきまではそうでもなかったけど、いざポニーテールのかなちゃん見たら、他のも見たくなった。頷く僕に、かなちゃんは微笑んだ。


「うん。じゃあたくちゃんも伸ばしてね」

「えっ!? それはおかしくない?」

「なんで? いいじゃん。たくちゃんは可愛い系だから、きっと似合うよ」

「可愛い、も、嬉しくなくもないけど、カッコイイの方がいいし」

「大丈夫。たくちゃんはいつでも可愛いよ」


 カッコイイのがいいって言ってんのに、なに大丈夫とか言ってるの? 嬉しいからなんか悔しい。


「もう。かなちゃんこそ、いっつも可愛いから許すけど、可愛いって言われるの複雑だし、あんまり言わないでよね」

「……わ、わかった。気を付ける、ね」

「ん?」


 あれ? かなちゃんの様子が? え? そんな変なこと言った? かなちゃんはまあ、可愛いじゃん? 可愛いって、僕あんまり言ってなかったっけ?

 ていうか、かなちゃん、めっちゃ目元ぴくぴくさせて耳まで赤くして、そんなに反応されると、僕まで照れてしまう。ていうか、そういうとこ、本当に可愛い。もう、凄い可愛い。


「かなちゃん、ちょっと、動かないでね」

「ん? なに? もしかして髪の毛引っかかった?」

「いいから」


 そっとかなちゃんの頭に手を置いて動かさないようにしてから、顔を寄せて、頬にキスをした。

 顔を話すと、かなちゃんはとても驚いたようで、見たことないくらい目を見開いて口が半開きになっていた。くっ。

 こんなのも可愛い。だから、キスしたのもしょうがない。しょうがないけど、やっぱ照れるなぁ。したくなって衝動でしちゃったけど。だって、この後はしないつもりだし? しょうがないよね。


「た、たくちゃん……」

「さ、さあ、じゃあ、そろそろ出かけよっか!」


 そんな潤んだ目で見ないで! もうなんか、可愛すぎて僕の方が駄目になる! 早く離脱するんだ!


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