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あべこべ世界も大変です  作者: 川木
恋人編
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テスト勉強

「ただいまー」

「ああ、遅かったな」

「ん? あれ、お姉ちゃん、って、そっか。今日からテスト期間だもんね」


 家に帰るとお姉ちゃんがいた。テストの前はテスト期間として部活動は活動禁止だ。今日は元々ボランティア部の活動はないから、うっかり忘れていた。

 キッチンとつながっているので、そのままお姉ちゃんのいる居間に入って、テーブルをスルーして流しに移動する。


「あ、かなちゃんは先に部屋行ってて。僕、お弁当洗っておくから」

「あ、うん。じゃあ、詩織さんも、お邪魔します。」

「ん? あ、ああ」


 かなちゃんは居間をスルーして通過し、そのま僕の部屋へ向かう。早く追いかけよう。

 鞄からお弁当袋を取り出し、鞄は床において中身を取り出す。蛇口をひねって洗い桶に水をためつつ、まずはゴミを捨てて、と。


「な、なぁ、卓也」

「なに?」

「その、なんだ。加南子を部屋にあげるのは、珍しいな」

「え、そう? 前はしょっちゅう上げてたと思うけど」

「それはそうだが、何というか、春以降では久しぶりじゃないか?」

「んー? そう言えば、そうかもね」

「ああ……か、加南子とは、仲良くしてるのか?」

「ん? まあそれはね。どうしたの? お姉ちゃん。挙動不審だよ?」

「いや、何というか、まあな」


 え? 挙動不審だよ→まあな? どういう返しなの? ほんとにどうしたの? もしかして、中間テストの時には気づかなかったけど、勉強苦手? もう三年生なのに、やばいって思って、焦ってる?

 洗い終わったお弁当箱を乾燥機にいれて、お姉ちゃんを振り返る。挙動不審だ。新聞をひろげたまま、ちらちら僕を見ている。前から思っていたけど、どうもお姉ちゃんってこの家の向こうでの父親ポジな気がする。


「お姉ちゃん、なにかあるなら、聞くけど。でも早くしてね。これから僕、かなちゃんと勉強会するから」


 お姉ちゃんの向かいの席について、真面目に話をするモードに入る。お姉ちゃんは怪訝な顔になる。


「勉強会? テストに向けてってことか?」

「そうだよ。中間はあんまりよくなかったから」

「そうなのか? だったら私が教えてやるぞ」

「お姉ちゃんもテストあるのに、何言ってるの。ちゃんと勉強して」


 現実逃避はいけない。真面目に自分の成績と向き合わないと。ちょっとどや顔で、何を言っているのかな。

 僕が真面目に言うと、お姉ちゃんは眉尻をさげた。


「それはそうなんだが。と言うか、じゃあ、別に他意はないのか」

「他意? なにが? かなちゃんを久しぶりに部屋に招くことに、他意があるかってこと? なにもないし、今更部屋に呼ぶくらいでそんな特別視されても」

「今更なぁ」


 何だか、お姉ちゃんは妙に引っかかっているらしい。と言うか、他意? 他意ねぇ。確かに言われてみれば、異性を部屋に呼ぶって言うと、なんだか大げさって言うか、そういう感じもある。でも、かなちゃんなのに。


「どうしたの、お姉ちゃん。何か気になるならはっきり言ってよ」

「そうだな。わかった。ズバリ聞くが、お前、加南子と恋人じゃないよな?」

「え? 違うけど」


 え、そんなこと疑ってたの? 普通に違うけど。僕とかなちゃんは幼馴染で友達で、それ以外ではない。そういう含むところが全くないことはないけど、今はお互いに友達だと思っているはずだ。

 僕の返答に、お姉ちゃんは何故か逆に不思議そうにして、だけどすぐにうんうんと頷いた。


「そうか、ならいいんだ。引き留めた形になって悪かったな。勉強を頑張れ」

「あ、うん。お姉ちゃんも頑張ってね」


 何だかわからないけど、納得したならいいか。僕は席をたって、飲み物だけ用意して、自分の部屋に向かう。


「かなちゃん開けてー」

「あ、うん」


 中に入って、かなちゃんと向かい合って小さめのテーブルにつく。よし、頑張るぞ。









「いよいよ、明日だね」

「そうだねぇ」

「……勉強しないの?」

「するけどさぁ」


 毎日コツコツ、勉強をしてきた。授業中はもちろん、放課後はみんなと図書室でしたりとかもしたし、夜も個人的に多少寄り道はしつつもしたし、土日はみっちりかなちゃんと勉強した。やっぱり見張ってくれる人がいる方が、やる気は持続すると言うか、少なくとも休憩する回数と時間は減る。

 そうして真面目にやって、一通り勉強して、うん。疲れた。昨日で目標にしていたひとさらいできたせいもある。今日もやるよって昨日言って、来てもらったのはいいけど、うーん、なんだかやる気がでないなぁ。


「……ちょっと気晴らしに、なんかしない?」

「えー、なんかって?」

「うーん、しりとり?」

「えー、いいけど」

「いや、やっぱヤダ。うーん、いっせーのでしよう」

「え? あの、親指立てて数字あてるやつ?」

「うん。昔よくやってたじゃん?」

「うーん、確かに小学生の頃してたよね」


 気づいたらお昼になっていたので、ご飯を食べる。食パンの期限がすでに過ぎているので、なんちゃってピザトーストで消費することにする。

 お姉ちゃんとお母さんは2人とも出かけているので、居間で食べることにした。2人とかなちゃんを同じ場所に置くと、二人はともかくかなちゃんはとても気まずそうにするので。昨日とかは部屋に持って行って食べたけど、あんまり匂いとかしたら嫌だからやりたくないんだよね。


「美味しいよ、たくちゃん」

「ありがと。午後からは真面目に勉強しよっか」

「そうだね。でも確かに、一通りやったわけだし、どうする? お互いに問題を出し合うとかする?」

「そうしようか。その方が頭に残りそうだし」


 ピザトーストを食べ終わる。

 不思議なことなんだけど、女性の体格はむこうよりやや背が高めってだけなのに、女性は向こうより断然食べる。五枚切りのピザトースト三枚は食べ過ぎ。僕は一枚でお腹いっぱいなのに。


「んー」


 何となく、物足りない。いや、お腹はいっぱいなんだけど口寂しいと言うか。なんか甘いものとか食べたいな。


「かなちゃん、アイス食べたくない?」

「ん? そうだね。もらおうかな」

「ないよ」

「え、なんなのそのひっかけ」

「買いに行……行ってもらおうかなって」

「途中で言い淀んだのはなに?」

「一緒に行こうと思ったけど、めんどくさいから一人で行ってもらおうかなと」

「1人で行くって言われるよりはいいけどさぁ」


 微妙な顔をされた。いやほんと、からかおうとか思ってなくて、普通に食べたいなら一緒に買いに行こうって提案しようとしただけなんだけど。

 でも暑い中出かけるのめんどくさいなぁとか思ったりして? うーん、でも、そうだなぁ、やっぱり横着せずに行こうかな。実際に見て選びたいし。


「しょうがないなぁ、かなちゃんは寂しんぼなんだから。わかったわかった、一緒に行くよ」

「ええぇ、急な方針転換。いや、いいんだけどさ」

「いいなら、文句言わないでもいいんだよ」

「いいけど、一言は言いたい」


 なんだよー。と言うか、やっぱり行くって意味もなく手のひら返すのもあれだから、かなちゃんにねだられた体で言ったのに、むしろそこには突っ込まないの?


「寂しんぼ扱いには一言言わないの?」

「え、まぁ、たくちゃんと離れるのは寂しい、し……まぁ、うん」

「あぁ、うん……そう」


 う、なんだ。そういう事、普通言う? ていうか、そりゃずっと一緒に居たら、一緒にいないことにあれって感じになるのはわからないでもないけど、でも、じゃあ言ってからそんな変に照れないでよ! そんな頬染めて目をそらされたら、こっちだって変な感じになるだろ!


「と、とにかく行くよ!」

「う、うん!」


 アイスを買いに行くけど、でも別にこれは純粋に暑いからだ。顔が熱いとか、そういう事じゃないから!


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