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あべこべ世界も大変です  作者: 川木
友達編
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お花見 班行動

 あの後、たくさんの生徒たちが来て、みんなの前でボランティア部の紹介もされて、班行動の説明とかをみんなにしていた。僕についての対男的な注意もされていて、なんかちょっと、ボランティアで手伝いに来たのに迷惑要素もあって申し訳ないなと思った。

 班に分かれて改めて挨拶すると、男の子も二人いた。男の子と僕をセットにしてくれたみたいだ。男だからどうってことはないけど、なんか嬉しい。子供五人で男の子二人と、女の子三人だ。


 男の子は全体の中で二人しかいなかったから、人数が少ないのは間違いないけど、当人たちは僕のイメージの中の子供とそんなに違いはない。他の女の子も、僕にとってのかなちゃんみたいに、それぞれ一人ずつくっついている女の子がいるけど、普通の兄妹って感じだ。

 よろしくね、と挨拶して出発する。外を歩くときはみんなで手を繋ごうね、ってなったんだけど、男の子が二人とも僕と手を繋ぎたがってくれた。嬉しい。男兄弟って、憧れたこともあるし、なんか、弟みたいで可愛い。

 もちろん喜んで手を繋ぐ。他の女の子とみんなも手を繋いで、園長先生が後ろで部長が先頭、と言う並びで、僕らはかなちゃんの後ろで出発する。ちなみに全体の列から見ても、一番最後の班だ。


「おにーちゃんは、高校生なの?」

「そうだよ」

「僕、大人の男の人初めて見た。思ってたより、ちっさいんだね」

「う。ま、まだ僕も、15歳だからね。20歳になるまでに、背は伸びるんだよ」


 僕の身長は約160センチ。実はかなちゃんよりちょっとだけ低い。でも、男の成長期はこれからだし! 中三の時、向こうでも別に、平均の身長だったし!


「僕はねー、いとこにお兄ちゃん居るよ。いいでしょ」

「えー、いいなー」

「聡志君と海人君は、前からお友達なの?」

「うーん、お友達、かなぁ?」


 聡志君は海人君をちらちら見ながら、照れくさそうにしつつそんなことを言う。あれ? 同じ学年で一緒に児童館に入っているだけあって、元々名前知っていて知り合いっぽい感じだったのに?

 と思っていると、反対側の海人君が、ぎゅっと僕の手を強く握りしめて、目をぎゅっと閉じて口を開く。


「お友達、なりたいなって、実は、思ってたんだ!」

「ぼ、僕も!」


 聡志君が重ねるように返事をすると、海人君はパッと目を開けて聡志君を見る。


「ほんと? えへへ、嬉しい」

「えへへ。ありがと。僕もね、前から思ってたんだ」

「やったぁ」


 か、可愛すぎか。なんだこの子たち。それですごい羨ましい。僕、同性の友達ゼロだし。


「よかったね、二人とも」

「うん! えへへぇ、お兄ちゃんも、友達にしてあげてもいいよ。ね?」

「うん。いいよぉ」

「ほんと? ありがとう。嬉しいよ」


 本気にしたいくらい嬉しいけど、どうなんだろ。とりあえず今日は、いっぱい遊ぼう。さっき園長先生に怒られたけど、男の子ならってことで特別扱いしてあげたい。


「おにいちゃんも、お世話係の女の子いるの?」

「いるよ。前にいる人」

「あの人? そうなんだ。あのね、僕のいとこのお兄ちゃん、お世話係の女の人のことすごい嫌いなんだ。僕はしよちゃんのこと、好きだけど、いとこのお兄ちゃんは、大人になったら嫌いになるって言うんだ。お兄ちゃんどう思う?」


 聡志君は少しだけ声を潜めるようにして、そう聞いてきた。

 うーん、なんだか深刻な顔で、ほんとに結構深刻なこと聞かれてしまった。

 今は仲がいいのに、嫌いになるって言い切るのはどうかと思う。でもそのいとこさんも、悪気はなくて、聡志君が嫌な目にあわないように言ってくれているのかもしれない。だって実際僕も、ひどい目にはあってるしね。


「うーん、人によるよ。もしかしたらそのお兄ちゃんは、その女の人と、好きなものも嫌いなものも全然違って、嫌いだって思うのかもしれないけど、僕はそうじゃないし、好きだよ」

「そうなの? じゃあ、僕もしよちゃん好きだけど、大人になっても好きでいても、いいのかなぁ?」

「もちろん。好きなら好きでいいし、もし嫌いになっても、それはその時だよ。思う通りでいいんだよ」

「そっかぁ」


 嬉しそうに聡志君が頷くのを見て和んでいると、反対の海人君が僕と繋いでいる手を引いた。そっちを見ると、唇を突き出している。


「あのね、おにいちゃん、僕は知世ちゃん、ちょっと苦手なんだ。でもじゃあ、それでもいい?」

「いいよ。僕もね、苦手な女の子がいるんだ」


 好きなことを強制することはない。僕もかなちゃんに相当ひどいことをしたんだから。好きか嫌いかは、自分でもどうにもならない。好きになるよう、努力するつもりだけど、それは僕が勝手にしたいだけで、こんな小さな子に無理をさせることはない。


「ほんと? 知世ちゃん、僕に嫌なことするわけじゃないんだけど、なんか、うるさいから、好きじゃないんだ。僕の為って、お母さんは言うけど、僕の為でも、嫌だなって思っても、いいのかな?」

「うーん、難しいね。でもね、内緒にしてほしいんだけど、いい? 2人とも、僕の言うこと、秘密にできる?」

「え? なになに?」

「できるよ。僕は口が高いんだから」


 それ、かたい、ね。まぁそれはいいとして。


「実はね、僕も全然悪いことしてない、むしろすごくいい人なんだけど、苦手な人がいるんだ」

「そーなの? 大人でもそうなの?」

「うん、そうなんだ。でも内緒ね? 大人になると、苦手でも、そうじゃないみたいにしなきゃいけないときがあるんだ。でも、心の中で苦手だって思っているのは、しょうがないよ。だって、苦手だもんね」


 にこっと笑ってみせると、2人ともにっこり笑ってくれた。よかった。納得してくれたか。


「うん! えへへぇ、おにいちゃんはいいこと言うね!」

「うん。いいこと言う! 僕、お兄ちゃんに花丸あげちゃおうかな!」

「えー、なにそれ? 聡志君、はなまるってなぁに?」

「え? は、花丸はねぇ、えっと、ひゃくてんまんてんってことだよ! よくできましたの、金メダルのことなんだ」

「金メダル! すごーい! 僕もほしい!」

「えへへ、いいよ。海人君はね、僕の初めてのお友達だから、お友達の花丸あげる」

「やったぁ! じゃあね、僕も聡志君にはなまるあげるね」


 二人との会話になごんでいると、目的地である近くの公園に着いた。

 公園の奥の桜が咲いている広場でお花見をする予定だ。

 桜が見えたあたりから、綺麗だねーと言い合いながら、広場に集まって座る。そして園長先生が人数確認をしてから、お昼にしましょうと宣言した。

それぞれの班で、手近な桜の木の下に集まって、レジャーシートを広げて座る。そしてお弁当を用意する。あれ、鞄にお弁当がない。えっ!!? な、わ、忘れ……あ、重いからかなちゃんがまとめて持ってくれてるんだった。

 かなちゃんはかなちゃんで、女の子とおしゃべりしながらシートを広げている。って、ちょっと距離があるぞ。これじゃ、みんな一緒に食べられない。


「かなちゃん、もっと全員のシートをくっつけないと」


 一年生同士を仲良くさせるためのお花見なんだから、全員が一緒にお話しできるようにしないといけないというのに。全く。

 かなちゃんの位置を修正させ、ようやくお弁当の準備ができた。


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