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あべこべ世界も大変です  作者: 川木
友達編
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なんでもない休日

「おはよう、卓也」

「あ、お姉ちゃん、おはよう」

「ああ、今日は遅かったな」


 昨日は一日清掃とかカラオケではしゃいだからか、昨日は妙に目がさえて日付が変わってから寝たから、普通に九時まで寝てしまった。寝すぎてちょっとしんどい。

 世には結構休日は昼まで寝てるって人もいるらしいけど、僕は昔から家のリズム的に、休みの日も朝ご飯は食べるよう用意されるし、夜中眠くなったら寝るから、割と休みの日も平日よりちょっと遅い八時くらいには起きる。


 お姉ちゃんは先に食べ終わっているようだけど、リビングテーブルについてコップ片手にテレビを見ていた。

 自分用に飲み物と、買い置きされている総菜パンを用意して席に着く。我が家では休日の朝はいつも軽く食べるようにパンを買っている。


「お姉ちゃん、今日は部活いかないの?」

「ああ、毎日あるわけじゃないぞ。春休みでもないし、交代制だ。バスケは普通に土曜だけだな」

「へー」

「あんまり興味ないな」

「うーん、お姉ちゃんが休みだってことには興味が出たけど、バスケ自体はどうでもいいから」


 今日の総菜パンはウインナーの入ってるやつと、コーンの乗ってるやつだ。ウインナーは素朴に美味しい。


「そうか。マネージャーになってほしいと要望があったが、無理か」

「うーん、無理かな」

「ボランティア部はどうだ? 楽しいか?」

「うん。あのね、クラスでも隣の席の子と友達になったって言ったでしょ?」

「ああ、一緒に見学にも来てた子だろ?」

「うん。で、一緒にボランティア部にも入ってるんだ。あと、中学一緒だった井上、じゃなくて登利子ちゃんも一緒だったんだ」

「ん!? と、登利子ちゃん、と、呼んでるのか。中学から、仲は良かったのか?」

「え? ううん。むしろ苦手だったけど、昨日歩ちゃんたちと……ん? ていうか言わなかったっけ?」


 昨日の晩御飯の席でもお母さんと色々話してたのに、お姉ちゃんは確かに部活で疲れている感じだったけど、そんな全然聞いてなかったの?

 ちょっとジト目になってしまう僕に、お姉ちゃんは視線をそらしてカップを傾ける。


「そうか……と言うか、まぁ、なんだ。お前って、加南子以外もちゃん付けするんだな」

「え? まぁ、友達で下の名前ってなったら、さん付けもおかしいし」


 呼び捨ては馴れ馴れしいし、ちゃんが無難じゃない? と言うかそこに驚いていたの? 凄いどうでもいいんだけど。


「そ、そうなのか……まぁ、仕方ないか。今日は暇なのか?」

「うん」

「学校の授業も始まっているが、どうだ? ちゃんとついて行けてるか? わからないことがあったら教えるぞ?」

「ううん。大丈夫だよ、ありがとう。そう言えばお母さんは?」

「母さんなら買い物に出かけるとかで、さっき着替えに部屋に行ったぞ」

「そうなんだ」

「一通り掃除機もかけているし、洗濯も終わってるから、今日お前もゆっくりするといい」

「そうなんだ。ありがとう」


 ゆっくり、ねぇ。どうしよう。手持ちの本は一通り見直した。向こうの手持ちとは似てても微妙に違うし、こっちで読んだ記憶もあるっちゃあるけど、詳細は忘れているから普通に楽しんだ。ゲームは、好きだけどやり始めたら結構時間が過ぎてしまうのが分かっているから、ちょっと億劫だ。だって、途中で止めてるならともかく、全部最初からってなると、面倒だし。


「お姉ちゃんは今日、なにするの?」

「ん? 別に決まってないが、なんだ、暇なのか?」

「うん、まあ」

「ふむ。じゃあ一緒に遊ぶか。ゲームが好きだったが、複数人で遊ぶ奴はもってないのか?」

「あ、あるよ。やろうか」

「ああ」


 最近のだと、アクションと音ゲーがある。昔の機種のなら格ゲーとレースゲーもあるけど、どれがいいかな。……お姉ちゃんとゲームした記憶が、ほんとに小さい頃しかないし、とりあえず新しいほうでいいか。二人で露骨に争うやつよりは平和だよね。

 朝ご飯を食べ終わってから、リビングにゲーム機を運ぶ。自分の部屋をもらうまではここに置いていたんだよね。懐かしい。


「じゃ、音ゲーしよっか」

「ああ。これは私も知ってるぞ。これも持ってたんだな」

「うん。やったことないなら、とりあえず優しいからしよっか。どの曲がいい?」


 と聞きながら、あ、全部こっちの曲だ、と気づいた。どっちの記憶もあると、あっちでもこっちでもある曲もあれば、微妙に変わっているのも全くなくなっているのもあって、わかりにくい。うーん、まあ知らない曲でもプレイするし、一応こっちでプレイしたわけだし、やったら思い出すでしょ。


「そんなに新しい曲だけじゃないんだな。じゃあ、これで」


 コントローラーを手にしたお姉ちゃんは、慣れた手つきで曲を選択した。コントローラーの操作は、昔と基本同じ形なので覚えているらしい。


「操作方法はわかる?」

「んー、問題ない」


 冒頭が始まってからすぐに、お姉ちゃんはボタンを順に押して音を鳴らして確認してそう答えた。おお、さすが。シンプルとは言え、そのレスポンスの力強さは、なんだか憧れるなぁ。格好いい。

 曲が始まると、何となく僕も思い出してきたので、それに合わせてボタンを押す。と言っても優しい何度の中でも前半のレベルだから、普通に音無しでもパーフェクト余裕だけど。


「ふむ。何となくわかった。難易度をあげても大丈夫だぞ」


 案の定お姉ちゃんもパーフェクトだった。問題ないみたいだ。


「じゃあ、普通でやろっか」

「ああ、次は卓也が選んでいいぞ」

「どれにしようかなー」


 あ、これは知ってるやつだ。じゃ、これにしよう。難易度もそこそこだし。

 プレイが終わると、さすがにさっきに比べると難しいからか、パーフェクトを逃したお姉ちゃんは、燦然と輝く僕のパーフェクトに少し悔しそうな顔になる。


「卓也、得意なんだな」

「まぁね。普通難易度なら、全曲クリアしたし」

「ふふ。なら私も負けてられないな。どんどんいくぞ」

「うん。じゃあ、全曲順番にいこっか」

「どんとこい」


 最初の曲に戻って順に演奏していくと、お姉ちゃんも慣れたのか、さっき僕が選んだ曲もパーフェクトになった。どや顔された。おねえちゃん……ちょっと可愛いと思ったのは黙っておこう。


「ただいまー」

「おかえりー」


 何曲かプレイしていると、お母さんが帰ってきたので声だけ返事する。


「え、なにそれ楽しそう。お母さんも混ぜて!」

「いいよー」

「順番にしよう」


 慌てたように着替えてきたお母さんも交えて、三人でゲームをした。それからお昼を食べてから、今度はアクションゲームに切り替えた。これなら見てるだけでも結構面白いしね。

 一日ゲームすることになったけど、楽しかったから、また今度しようと思った。気づいたら夕食の時間を押してて、三人協力して簡単なご飯をつくったのも楽しかった。

 2人も楽しんでくれたみたいで、ずっとこんな風に、家族仲良くいられるようにしよう、と僕は改めて心に決めた。


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