おっぱいに貴賤はない
「ぐぅ。そんなの、絶対無理じゃん」
かなちゃんとの再現デート。いきなりの大進展にそう驚かなかったかなちゃんだけど、加恋としかできない大きなおっぱいの存在に、睨み付けてきた。可愛い。
「諦めないで、かなちゃん。もっと頑張って」
「頑張っておっぱいが大きくなると思わないでよ!?」
「お、怒らないでよ。小さくても好きだから、小さいまま頑張ってくれたらいいから」
「上から目線で言うねぇ。するけどさぁ」
かなちゃんは頑張ってぎゅっと僕に胸を押し付けてくる。もちろんそれはそれで心地よい。ほわっと柔らかくて落ち着く。
だけど悲しいけど、あのおっぱいを知ってしまったら以前より小さくすら感じる。これはこれで、好きなのは変わらないけどね。
「……ねぇ、ちょっと馬鹿にしてない?」
「小さくて可愛いって思ってるだけだよ」
「……別にさ、胸なんて大きくなりたいとも小さいのがどうとか、よっぽど平均から外れなきゃ悩むものでもないんだよ? 普通はね? なのにたくちゃんがそう言うこと言うから、こっちまで気にしてきちゃうんだけど」
この世界的には胸の大きさは、手のひらや足の大きさみたいなものらしい。むしろバカの大足とかって言うみたいに、大きすぎたらなんでもバカっぽく見られるらしいけど。
なのでかなちゃんみたいなサイズは、全然気にするものじゃないらしいけど、僕があんまり喜ぶから最近気になってるらしい。とてもいいぞ! 胸のサイズは大きいとか小さいより、そのサイズを気にして恥じらっている感が可愛いんだよ! あ、もちろん普通に触る分に大きいの好きだけどね。
「気にしてるんだ? でも、だとしたら余計可愛いよ」
「あのねぇ。調子に乗ってるなぁ」
腕を組んでおっぱいを押し付けつつも、かなちゃんは僕の頬に軽くキスしながらそう言ってくる。調子にのってる、ねぇ。
「そう? うーん、でも、だとしてものせてるのはかなちゃんでしょ? そりゃ、まあ、愛人とか言ってる時点で調子乗ってると思うけど」
「それはそれとして、だよ。私の嫉妬心あおって楽しむのは別でしょ」
「えー。それはそれで好きじゃん」
「好きじゃない」
「楽しんでるじゃん?」
「それはそれだから」
それはちょっとわがままじゃない? 嫉妬プレイを楽しむ癖に、わざと嫉妬させてもっと楽しもうとしたら文句言うとか。
「ていうか、別にわざと嫉妬あおってはなくない? いや、この再現説明をそう言うならともかく、いつもしてるからこれは別でしょ? 今日別にそれ以外で特別なことしてないけど」
かなちゃんが勝手に、再現できないから腹をたてて、勝手におっぱいが負けてるとか思ってるのか知らないけどいつもより嫉妬してるだけだ。僕はそれはそれで嫉妬されて嬉しいと思ってるだけで、わざとあおるためにおっぱいが好きなわけではない。
「……とにかく、おっぱいばっかり気にするの禁止。加恋先輩と居る時はともかく、私と居る時は禁止」
「えー。僕は元々、かなちゃんのおっぱいだって大好きだよ?」
「……くっ、悔しいっ」
「え? なに? 急に?」
「普通に嬉しいと思ってしまった。悔しいっ」
普通に悔しがられた。いや、嬉しいと思ったのはまぁ、いいけど。悔しいって。何に対して悔しいのさ。声に出してそんな悔しがることある?
「いや、普通に喜んでいいんだよ?」
「それじゃたくちゃんの思うつぼだよ」
「別にいいじゃん。なに、僕はかなちゃんの敵なの」
「ある意味ね。この世で最も手ごわい、倒したい敵だよ」
「何言ってるの? ちょっと発言振り返って」
そんでちょっとくらい恥ずかしがって。なにをうまいこと言えた、みたいなどや顔してるの? 僕にしてみたら、現在進行形で黒歴史つくってるよ? いやそりゃ、人のこと言えないかも知れないけどさぁ。
「はぁ。ていうか、普通にさ、私はいつだって、たくちゃんの一番でいたいの。わからない?」
「わかるっていうか、普通に、かなちゃんはいつだって僕の一番だし、僕もかなちゃんの一番でいたいよ?」
なんかその、わかってないな、みたいに言われるの心外なんですけど。普通にそんなの大前提じゃない? 僕らはそんなの大前提としての恋人で、愛人予定の恋人がいるわけじゃないの?
僕のツッコみに、ため息をついてやれやれ顔だったかなちゃんは、ゆっくりと視線を外しながら赤くなって、黙ってずっと抱きしめてた僕の腕をぎゅっとさらに抱きしめてきた。ちょっと痛いくらいだ。
「なに、かなちゃん、その顔。当たり前のこと言っただけなのに照れてるのー?」
「う、うるさいなぁ、当たり前とか軽く言うけど、私はいつだって、たくちゃんをひきとめるのに必死なんだからねっ。何回でも、好きって言われたら嬉しくなっちゃうんだからねっ」
「好き好き大好き、愛してるよ」
「うっ。く、くぅ……絶対からかってるのわかってても嬉しい自分が、憎いっ」
「そこまで言う? からかってるけど、別に本気だし、喜んで大丈夫だから。嘘でーす、みたいなオチないから」
「そんなことになったらノータイムで首くくるよ」
「ちょっとー」
「嘘嘘。そんなことしなくてもショック死するから」
「洒落にならないから続けるのやめて。冗談でも、死ぬ系は嫌なんだけど」
「あ、ごめんね、でも冗談じゃないから、絶対やめてね」
「はいはい、しないから」
死ぬほど好き、とか言う気持ち、わからなくはないよ。僕だって、かなちゃんのことなら命とか考えられなくなるし。でもやっぱり、軽く冗談で言っていいことではないよね。だって死ぬって、やっぱダメじゃん。
「ねえ、かなちゃん」
「ん? なに?」
「すっかり、加恋との再現忘れてるけど、どうする?」
「え、ああ。確かに、おっぱいのせいで話それちゃったね」
あれ? おっぱいのせいだっけ? まぁいいか。そこはスルーしよう。
「で、もっかいするの? それとも、普通に僕とかなちゃんでする?」
「……な、悩むなぁ」
「あ、悩むとこなんだ?」
やっぱそこそこ、楽しんでるよね? 普通に首ひねって考えてるけど。僕はにこっと笑って、かなちゃんに向くように膝立ちになってからぐるっと回るようにかなちゃんの膝の上にのる。
「あの、たくちゃん? 加恋先輩とこんなことしてたの?」
「してないよ? かなちゃんにしたくなったんだけど、駄目なの?」
「いやぁ、いいけど。なんか、積極的だね」
「そう? 割といつもそうじゃない?」
「そうだけど、誘った後は、受け身だよね? 私相手だと」
「嫉妬してるみたいだから、せっかくだし、今日はかなちゃん相手に、おっぱいの探求をしようかと思って」
「……んー。つまり、加恋先輩のおっぱいの探求で味をしめたと?」
にやついていたかなちゃんだけど、僕の言葉に半目になる。それでも目の下も口元もにやついているし、乗り気なのは明白だ。
「そうそう。大きいのがよかったから、小さいのも、今まで以上に楽しみたいなってこと」
「複雑だなぁ、なんか」
「いいじゃん。加恋との再現じゃなくて、かなちゃんのことをみて、かなちゃんのおっぱいを楽しむって話なんだから」
「いいんだけど、私別にそんなおっぱいにこだわりないし、改めてそこだけ責められても微妙なんだけど」
「じゃあ、終わったら逆に僕のおっぱいを探求してもいいって言ったら?」
「よし、やろうか!」
僕からしたら、むしろどうしてこの平坦な胸の探求でそんなに元気になれるのか不思議でしょうがない。でもまあ、かなちゃんもそれで楽しいなら、いいか。今までもかなちゃんに触られたりして、それなりに感覚が鍛えられてるし、僕も楽しくなくはないしね。
とりあえず、僕はかなちゃんで、改めて、おっぱいに貴賤はないねってことを実感した。




