お家デート 市子視点
「ねぇ、これ、本当に、楽しいの?」
「すごく楽しいよ」
今日は卓也君とのデートだ。とは言え、今日はなんだか夏の逆戻りをしたように暑くて卓也君が外に出るのもなーと言ったので、思い切って私の部屋で遊ぼうかと誘った。
そうなると自然と二人きりだし、いい雰囲気になるものだ。思い通りとは言え、ここまでその通りだと、逆に卓也君が少し心配にもなってくる。
とは言え、それが他ならぬ自分ならばもちろん全然OKだ。もうすぐにでも、ベッドにもつれ込みたい、と思ったのだけど、何故か卓也君は急に私のファッションに興味を持ちだし、昔買って小さくなってはかなくなった短いスカートをはかせた。
それだけならまぁ、って感じだけど、さらにベッドの上で駆けあしさせて自分はベッドの下で寝転がって見上げてくる。
なんだこれ。いや、逆の立場ならわかるよ? 男の子の下着が見えそうな状況で下から覗き込むとか、なんか犯罪的でドキドキするし、合法でしたいってきもちはわかるよ? でも、なんで私が?
卓也君はにこにこと、とても可愛い笑顔で楽しいとか言ってる。ほんと、改めて、卓也君って結構なスケベと言うか。いや、悪いことないけど。
私から積極的になりきれない分、卓也君が積極的になってせめられているのも、どきどきして、悪くないんだけど。
「ねぇ、ちょっと、座ってみて」
「え? う、うん……」
息が上がってきたところで、卓也君が私を座らせた。下着が見られるくらいどうってことないはずだけど、覗かれていると思うとどうにも気恥ずかしくて、変に感じてきたところなので助かる。妙な扉を開けてしまうところだった。
とは言え、ベッドに座ると足のすぐ横に卓也君の顔がある。気温が高い分、汗ばんでいるし、足がくさくなってないか心配だ。遠慮がちに、ベッドにぶつけるくらい足をそろえて卓也君から距離をとった。だと言うのに、卓也君は距離をつめてきて、そっと横からふくらはぎをつついてきた。
「っ、く、くすぐったいよ」
「まぁまぁ、我慢して。終わったら順番に、同じことしてあげるから」
「えっ、ま、まあ、それなら」
今度こそ何が楽しいのかわからないけど、卓也君は指を三本に増やしてふくらはぎを撫でてくる。くすぐったい。
「ねぇ、これは本気で聞くけど、楽しい?」
「うん。でもじゃあそろそろ、僕がベッドの上で走ってあげようかな」
「あ、あの、もう、それいいから、その、一緒にベッドにあがったり、しない?」
さっきは卓也君がベッドの上で走るのを下から眺めるのもいいかなって思ったけど、こんな風に妙な触られ方をすると、もどかしすぎる。卓也君なりに、場を盛り上げようとしてるのかも知れないけど、でも私みたいな性欲繁忙期の高校生にはもうそんなのいらないから! なんならもう、キスしてくれたらそれだけで準備万端だよ!
「んー、それはダメ」
だと言うのに、私の必死のお誘いに卓也君は無邪気な笑顔で却下した。何故に!?
「ええっ、な、なんで? た、卓也君だって、その、ちょっとはその気があるんだよね? だってほら、結構、えっちだし」
「あ、僕のこと変態だと思ってるー?」
「そ、そこまで言ってないって。でもその、嫌いじゃないでしょ?」
「うん。好きだよ」
「じゃ、じゃあ……」
にこっと微笑んだので、私はそっとベッドから滑り降りて、卓也君に顔を寄せていく。
「あのさ、ゲームしない?」
「え? げ、ゲーム?」
が、くっつく前に卓也君は素っ頓狂なことを言い出した。え? 何を言ってるんだろう。
ていうか、今日はどうしてそんなにもったいぶってるの? いつもはもっとノリノリなのに! えー、そんな。絶対最初からそのつもりで家まできたでしょ? そんな、どうしたの急に?
「うん。格ゲーでいいでしょ? そこにあるソフト、僕も持ってるし。それで、負けた方が一枚ずつ脱いでいって、全部脱いだら、いいよってことでどう?」
なんかすごいこと言い出した!? え、野球拳的に、格ゲーしようって? この子、頭がどうかしてるな! しかも野球拳に比べて結構時間かかるし!
「どうって、それだと、私が先に全裸になったらどうするの?」
「僕が全裸になるまで続けるよ? ただそうだね、もし先に全裸になってから、僕に負けたら、そのたびに何か罰ゲームをしようかな」
「ば、罰ゲームって?」
「そんな酷いことはしないけど、でも全裸だったら、スクワットしてもらうだけでも面白そうじゃない?」
卓也君って悪魔なの? え、やばいこと言うじゃん。全裸でスクワットさせて面白そうとか、どうやったらそんな発想になるの?
「そ、そんなのは、さすがに恥ずかしいって言うか、全裸で格ゲーするとかシュールすぎでしょ!」
そもそもの絵面がおかしいでしょ。段々服脱いでいきながら格ゲーするとか。頭おかしくなるわ。
「んー、と言うか、僕としては、さすがにすぐだと、身持ち軽いって思われたくないから、時間稼ぎみたいなものだし、市子ちゃんが勝ったら終わりなんだから、そんな嫌がるなんて。もしかして、格ゲー弱いの?」
そう言われて、カチンときた。いくら卓也君でも、今のは聞き捨てならない。卓也君が指名したのは長くシリーズの続く有名格ゲーだ。小学生の頃からやりこみ、歩と一緒に腕を磨いてきた。弱いと思われるのはさすがに、むっとする。女子として、格ゲーの腕前にはそれなりの自信がある。まして棚に並べているゲームは殆ど格ゲーだし、卓也君だってわかりそうなものだ。
でも確かに、言われた通りだ。私がストレートで勝てば、一枚ずつ卓也君を剥いていって恥じらう姿を見れるのだ。そしてそうして最後にベッドインできるなら、これは今まで卓也君に押され気味だった構図を書き直せるのでは?
これはむしろ、チャンスでは? 卓也君に強気に出られるのも嫌いじゃないけど、たまには私から、卓也君を可愛がってみたいっていう欲求もある。
それに卓也君が言う通り、家に来てすぐにはってことで時間稼ぎをしてると言うなら、可愛いものだ。そのくらい乗ってあげるのが、いい女の言うものだろう。私は気持ちを落ち着ける為胸をおさえて、にこっと笑う。
「わかった。いいよ。そのかわり、私が勝ったなら、今日は私がリードするからね」
「ほんとに? それは楽しみだな」
そしてその後、順調に勝てたのは卓也君が下着姿になるまでだった。だって、そんな、シャツとパンツ一枚の姿で隣に居られて、ゲームに集中できるわけなくない!?
「罰ゲームって、なにするの?」
「とりあえず、軽いところで腹筋からしてもらおうかな」
腹筋から始まり、腕立て、スクワットに、ネットで検索した筋トレをやらされた上に、めちゃくちゃニヤニヤしながら見られた。筋肉フェチなの? そして、全裸で大汗かいているとこを見られるとか恥ずかしすぎるんだけど。
途中から、ゲーム外で妨害してくるのもあって、私は卓也君の気が済むまで筋トレさせられて、疲れたところをお風呂で癒してもらうことになった。結局この日も、私は卓也君には勝てなかった。まぁ、これはこれで幸せだからいいんだけどね!
でもとりあえず、明日は筋肉痛になりそうだ……。ちょっとは筋トレ、しようかな。




