間話 エレンのその後
そこには、ブラックウルフの群れが。
敵は五匹、いや六匹だ。
その群れが、遭遇したパーティーに襲い掛かる。
盾役であるジャックがまず一振り。先頭の一匹を一刀両断。
そのままもう一匹を受け持つ。
エレンの周りを三匹が取り囲んでいるが、攻撃を完璧に防がれ、攻めあぐねている。
残った一匹が、ロイとリリの後衛組のところまでたどり着く。が...
「―――――水弾!―――――」
すかさず、リリが魔法を唱える。
熟練度がかなり上がったので、発動時間も短く、威力も申し分ない。
一瞬にしてブラックウルフを葬る。
一方、ジャックも最近では複数のモンスターを相手取ることが当たり前になっているので、一匹では何の問題もない。なんなくブラックウルフの首を落とす。
そんな様子を視界に入れていたエレンが、一気に攻勢に転じる。
新スキル「ウィンドステップ」により、一定時間、風をまとったように移動速度を急激に上昇させる。
そんなエレンにブラックウルフ三匹は、成す術もなく一掃される。
「おおー!流石だねエレン」
ジャックが戦闘を終えたエレンに声をかける。
「こんなのどうってことないわ」
「エレンは少し変わったよね」
ロイがまじめな雰囲気で言う。
確かに、変わった。何せ、エレンはもうシルバーランクだ。
基本ステータスもかなり上がったし、剣術もかなり上達した。
だが、ロイはそういうことを言っているのではないのだろう。
「目標が出来たからよ」
「あのリーダーゴブならもう倒せるんじゃない?」
「あいつは違うわ」
確かに、あのリーダーゴブならもう、余裕で倒せるだろう。
だが、あのゴブではない。
私が狙っているのは、あのどこからともなく現れ、私に恥をかかせた盗賊よ。
今度あったら、コテンパンにしてやるわ。
エレン以外の、ロイ、ジャック、リリもかなり強くなった。
三人とも新たなスキル、魔法も覚え、連携もかなり板についてきた。
「そんなことより、先を急ぎましょう。今日のクエストはなかなかハードよ」
「そうだね。よし、今日も最後まで気を抜かずに行こう」
エレンは、リーダーゴブとの一騎打ちの後のことはみんなには言っていない。
なかなか恥ずかしかったからだ。
それにたいして重要そうな情報でもなさそうなので。
彼らの冒険も止まることなく進み続ける。それもかなりの速さで。
だが、彼らがめきめきと力をつけ、エレンとタロウが再会するのは、まだまだ先の話である。
最後まで読んでいただきありがとうございます!!
あと一話、間話が続きます。




