治癒術師(ヒーラー)
「だから、お願いしますなの。」
俺と師匠が宿へ帰ってくると、その少女はアリアに向かってそれは綺麗な土下座をしていた。
彼女の名はユフィ。桜色の髪を後ろで束ねている。歳は俺の二個下らしいが何ともかわいらしい感じだ。
そんな彼女がなぜ土下座をしているのかというと、どうやらパーティーにいれて欲しいらしい。
「そんなこと言われましても...。
私ではなくタロウ様にお申し付けください。」
「誰なの?タロウって。」
アリアがこちらに手を向ける。
アリアめ、面倒ごとを押し付けやがって。
「私をパーティーに入れてくださいなの。」
今度はこちらに土下座をしてきた。
は、はやい...。どうやらこの子にプライドと呼べるものはないらしい。
「おい、土下座はやめろ。だいたいなんでそんなことしてんだ。」
「私の里では、何かお願いするときはこうしろって言われてるの。」
だれだよ、日本の伝統文化を吹き込んだやつは...。まったく。
「とりあえず、ユフィの職業はなんだ?」
「治癒術師の上級職のプリーステスなの。」
「な、なに!?治癒系の職業で上級職って、お前他のパーティーから引っ張りだこじゃないのか?」
「そうなの。でもどこのパーティーでも長続きしないの。」
「心当たりはないのか?」
「まったくなの。」
うーん。これはどうしたものか。正直なところ、俺もアリアも、治癒魔法は使えない。
治癒系の職業、しかも上級職。喉から手が出るくらいほしいところだが。
どうにも怪しい。普通なら、どこのパーティーもほおっておかないはずだが......。
「アリア、どう思う?」
「私はタロウ様の決定に従います。」
完全に俺任せか...。
「それじゃあ、明日俺とアリアと師匠、そしてユフィも連れて、クエストに行こう。そこでパーティーに入れるかどうかを判断する。それでいいか?」
「かまわないの。」
「弟子よ。私もなのかい?」
「師匠には、僕の特訓の成果を見てもらわなきゃいけないですからね。」
「もう十分見たんだが...」
師匠がなんか言ってる気がするが俺は気にしない。
「それと...私は文無しなの。どうかここに泊めて欲しいの。」
「「「.........。」」」
アリアが一人部屋から二人部屋に変えてくれた。
俺は正しい判断したのか、怪しくなってきた。
――――――翌朝。
俺たちは、ギルドでクエストを受注。
内容は、「はぐれグリフォンの討伐」
グリフォンのランクはゴールド、俺にとってはかなり厳しいクエストかもしれない。
だが、こちらには、上級職が三人もいる。しかもプラチナランカーが二人も。
ちなみにユフィのランクはゴールドだ。
この布陣なら問題ないだろう。
そして俺も「ステルス」解禁だ。そうそうやれることは無いだろう。
俺たちは、ギルドで聞いた情報をもとにステラの南に位置する山へと向かった。
そうここは、俺がオークと修行した山だ。
この山の頂上付近に、群れからはぐれたグリフォンがいるらしい。
頂上に到着、俺たちは、綺麗な景色に見とれているとすぐにグリフォンはやってきた。
そしてそのまま戦闘に突入した。
俺は、サムライオークを倒したことで得たモンスターポイントで新しいスキルを習得していた。「移動速度上昇」と「エミシオン」だ。
「エミシオン」は手のひらから強い光を発行するスキルだ。主に目くらましに使う。
俺は新スキルと「ステルス」を駆使しつつ、師匠と共に、グリフォンを翻弄する。
その隙に、アリアが大技をかます。
かなり、順調だ。
俺と師匠が、ちょくちょく軽い傷を負うものの、ユフィがすぐに治してくれる。
やはり、ユフィの腕は確かだ。これならパーティーに入れても問題ないだろう。
その後も順調にすすんでいき、グリフォンはもう瀕死の状態だった。
ここで、グリフォンが最後の力を振り絞り、足元から風をまき散らし、俺と師匠を吹き飛ばした。俺と師匠はそれぞれ周りを囲んでいた木まで吹き飛ばされた。
「タロウ、私本気出したいの!一気に治療するの!」
「構わない!」
そこまで傷を負っていないのだが、ユフィはここが見せ場だと思ったのだろう。
俺の答えを聞くと呪文を唱えた!
「―――――フィルフィアネーション!!!―――――」
それは、本当にすごい魔法だった。
とてつもなくでかい魔法陣が現れ、その場の傷という傷というを一瞬で治してしまった!!
――――グリフォンの傷さえも。
「なんでグリフォンの傷まで治療してんだ!!」
「≪フィルフィアネーション≫は無差別に傷を治療する魔法なの。」
「魔法のことをきいてるんじゃねえ!」
「本気をだそうと思ってやりすぎてしまったの。」
そして、完全回復したグリフォンとの二回戦が始まった。
なかなか壮絶な戦いになった。俺たちは、ゴールドランクのモンスターにプラチナランク二人と、ゴールドランク、ブロンズランクの二人でようやくグリフォンを仕留めた。
どうしてこうなってしまったのか。もちろん犯人はユフィだ。
あの後もたびたびと失敗を犯し、接戦へと持ち込んでいった。
ユフィがどこのパーティーにも所属していない理由がようやく分かった。
こいつは、アホで、どうしようもないくらいドジなのだ。
確かに、ヒーラーとしての腕は確かだが。
俺は帰り道、ユフィをどうやって断ろうかと考えていた。
そんな時、不意にアリアが、
「タロウ様、その、ユフィをパーティーに入れてもらえませんか?」
なんだ、もしかして昨日一緒に寝たから仲良くなったのか?
「どうしてですか?」
「なんというか...この子を飼いたいんです!」
ん?何を言ってるんだこのひと。
「ちゃんとしつけもします。エサ...ご飯もあげますから。
それでもダメですか?」
いよいよほんとに何言ってるかわかんなくなってきたぞ。
ユフィを犬と思ってるのか?
うーん。正直パーティーには入れたくないが、そんなもの欲しそうな子供のような目をされては...。
「分かりました。その代わり、アリアがしっかりしつけてください」
「はい!おまかせを!」
「なんだか、すごく失礼な会話がされてる気がするの...」
こうして俺たちのパーティーに一人いや、一匹増えた。
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