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ようこそ、俺の異世界へ!  作者: 赤井 つばさ
異世界転移編
6/9

師匠の悩み



俺は師匠から一週間逃げ続けた。

かなり成長したと思う。

日没が特訓終了の合図だが、一日中捕まらない日も結構あった。

日に日にステージを変え、いろんな場所で逃げ続けた。



俺の「ステルス」の熟練度もかなり上がった。

MAXで効果が30秒ほど持続する。

そして、「ステルス」を発動するときの呪文の詠唱もいらなくなった。

さらに、「ステルス」の効果が途中で解除できるようになった。

MAXまで「ステルス」を使い続けるとインターバルが三秒ほど必要なのだが、途中で解除すると秒数に応じて、インターバルも短くなる。



「そろそろ次の段階へ進もうか。」

「次は何をするんですか?」

「お待ちかねのモンスターとの戦闘さ。」



俺はまだ、モンスターとの戦闘を経験したことがない。

この前うっかりでかめのゴブリンを倒してしまったが、あれはノーカンだ。



俺は師匠に連れられ、ステラの南に位置する山をのぼった。

山の中腹辺りの開けた場所についた。奥には洞窟のようなものも見える。

師匠は荷物を置くと、俺に近づき、腕輪を付けた。



「師匠、なんですかこれは?」

「それはスキル封じの腕輪だ。弟子よ、君には『ステルス』無しでモンスターと闘ってもらう。」

「でも、モンスターなんて何処にも......」



すると、洞窟からタイミングを計ったかのように一匹のオークが現れた。



「あれはサムライオーク。普通のオークとさほど変わりはないが、彼らは剣を使う。そして基本的に一騎打ちしか行わない。君はあいつと闘ってもらう。」

「でも俺、モンスターとの戦い方なんてわかりませんよ。」

「考えるな。感じろ。」



師匠は、無責任な言葉を放ち、あぐらを組む。



「え?師匠は闘わないんですか?」

「言っただろう。彼らは一騎打ちしか行わないと。ほら、早く準備しないと、彼が待ちくたびれてるよ。」



俺は少し困惑しながら戦闘の準備をする。といっても、短剣くらいしか準備するものもないのですぐに終わり、右手に短剣を構える。

そして、サムライオークも剣を構え、こちらに向かって走りだした。

戦闘が始まった――――――



まずはオークが大きく一振り。俺はそれを受け止め......ない。

とっさによける。そしていったん距離をとる。姿勢を低くし、左手を地に付ける。そして拳を握りしめ、走り出す。俺は勢いよく、オークに向かっていく。そして...


 

「――――目潰し!!―――――」

「なっ...!」



俺は左手にもっていた砂をオークの顔面に向かって投げつける。

俺の攻撃になぜか師匠が声を上げ、オークは混乱している。

俺はすかさず後ろをとり、グサリ。

オークは急所を突かれたのか、ばたりと倒れる。



こうして俺は初めての戦闘に勝利した。



「師匠、やりました!」

「弟子よ。まだ終わっとらんぞ。」



初勝利の余韻に浸る間もなく、洞窟からまた一匹サムライオークが現れた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



私の初めての弟子が今、サムライオークと闘っています。

最初は苦戦すると思っていました。なんせ初めての戦闘。

そして彼の最大の武器である「ステルス」も封じているので。



しかし、彼は先程から何度も何度もオークを倒しています。

彼は世間一般的に、卑怯だとか、姑息と呼ばれる手を使って勝利しています。



私は今、迷っています。彼には、この特訓で基礎的な剣術と体術を身に着けて欲しかったのですが、何か違うものを感じ取ってしまったようです。

まだ、初日なので卑怯な手は無し、と言ってしまえばまだ間に合うのですが...。

あの笑顔。オークを倒すたびにこちらに向けてくるあの、高校球児のようなさわやかな笑顔。

どうやら彼は、無意識のうちに卑怯な手を使っているようです。

私はいったいどうすればよいのでしょうか......。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


俺のオークとの修行は十日ほど続いた。

どうやら、洞窟のなかのオークをせん滅してしまったようだ。

最初こそは緊張したが、やってみればなんとかなるものだった。

師匠は、なんだか困ったような顔をしていたが、まあ俺の想定外の強さに困惑していたのだろう。



俺と師匠は、オークとの修行の間、ずっと野宿をしていた。

俺は初めての野宿に最初のうちはワクワクしていたものの、四日を過ぎたあたりから飽きていた。ていうか辛かった。

今日はようやく宿に帰ることができる。

ふかふかのベッドが待っている。



期待に心を躍らせながらステラの街に帰ってきた。

少しの間とはいえ、ここに帰ってくると何かこみあげてくるものが......ない。

俺たちは足早に宿へと向かった。



俺たちが宿に帰ってくると、アリアと見知らぬ少女がいた。



最後まで読んでいただきありがとうございます!!

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