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 そうして皆一緒になって泣いていると、ふと飛び上がってモモちゃんが叫びました。

「いいこと考えた!」

 皆一斉にモモちゃんを見ます。


「モモちゃん、冬の女王さまが他の季節にも起きていられる方法が思いついたの?」

「いいえ。だけど、冬の女王さまが少しでも寂しくならないような方法を思いついたわ。手紙を書けばいいのよ」

「手紙?」

 モモちゃんは自信たっぷりに言います。

「春の女王さまが春から秋の間、冬の女王さまが読みきれないくらいたくさんのお手紙を書くの。そして、冬の女王さまは春の女王さまにお手紙を書くの。そうしたら冬の女王さまが次に目覚めるときには、春の女王さまから読みきれないほどの返事があるはずよ。そう思ったらお一人で眠っている時だって楽しみであっという間に冬になるわ」

 冬の女王さまも春の女王さまも、モモちゃんの話をじっと聞いていました。

 そうして二人で顔を見合わせて頷きました。


「お手紙、とても素敵な方法だわ」

「だけどわたくし、お手紙なんて書いたことがないわ。何を書けばいいのかしら」

 そう言う春の女王さまに、アオくんが答えます。

「何だっていいはずですよ。この話をすればきっと冬の女王さまが楽しんでくれるだろう、そう思って書くだけできっと言葉が浮かんでくるはずです」

「そのように思って書いていただけると思うだけで、どんなお手紙でもわたくし、とっても嬉しいわ」

 冬の女王さまがやっと笑って言いました。

「わたくし、たくさん書くわ。夏の女王さまにも、秋の女王さまにも伝えておくから、次の冬にはきっと読みきれないほどたくさんのお手紙がここにあるはずよ」

「素敵! 嬉しいわ」



 そうして、ついに冬の女王さまが春の女王さまに夢のティアラを渡すときが来てしまいました。

 冬の女王さまはモモちゃんたちと向かい合って言います。

「みなさん、お礼を言っても言いきれないわ。会話をする方法を変えればいいなんて、考えもしなかったもの。きっと、これからはどんな季節が来ようと楽しく過ごすことができるわ。本当に、ありがとう」

 冬の女王さまはモモちゃんたちと握手をして別れを告げます。

「みなさん、良い季節をお過ごしになって」

「はい。冬の女王さまも、良い季節を」


 別れを告げた冬の女王さまは夢のティアラをゆっくりと頭からはずし、かがんだ春の女王さまの頭につけました。

 そうして夢のティアラの黄緑色の宝石がキラリと輝くと、一拍もしない間に、冬の女王さまは眠りについてしまいました。


 たちまち窓からはあたたかな太陽の光が照り、雪は止み、雪解け水の間に若い芽吹きの色が見え始めました。

「春だわ!」

 モモちゃんがそう言うと、フィンのガラスのような身体がキラキラと光り始めます。

 光りはフィンを囲んで光の渦となり、卵のような形でフィンを覆い尽くしました。

 光の卵は自身にヒビを入れると、一斉に殻を破きます。


「フィン?」

 殻から現れたのは大きなくちばしと、大きな翼を持った、緑色の大鳥でした。尾はとても長く、先っぽにいくにつれて黄色くなっています。

「どうだ、これが俺様の春の姿だ」

「すごいわ、フィン! とっても綺麗」

「そうか、フィンは季節によって姿を変えるんだね!」

 モモちゃんもアオくんも大喜びでフィンを絶賛します。春の女王さまや執事たちは驚きで声も出ない様子です。


「さあて、春になったなら行かなければな。俺様の友だちが土の中で待っている。じゃあな、モモ、アオ! また会おうぜ」

「ええ、きっとよ!」

「すぐに遊びにいくからね、フィン」

 二人の答えに満足したフィンは、春の風に乗ってあっという間に行ってしまいました。



「驚きました。あのような不思議な生き物もいるのですね」

「さア、モモ殿、アオ殿。王宮へご案内しまショウ。王様が待っテいらっしゃル」




 モモちゃんとアオくんは、白フクロウに連れられて王宮へ行きました。

 冬の女王さまと春の女王さまを交替させた二人には、王様から褒美が与えられます。

 二人の願いはすでに決まっていました。


 それは、冬の間、季節の塔へ行く権利です。

 二人が季節の塔へ遊びに行けば、きっと冬の女王さまが寂しい思いをすることはないでしょう。

 モモちゃんはこのことも考えていましたが、次の冬に冬の女王さまを驚かせたくて黙っていたのでした。

 その提案に王様はひどく喜び、快く二人に権利を与えました。



 そうして王宮から最高級のコーヒーをお土産にもらったモモちゃんは、家に帰ってお母さんに今回の冒険の話をしました。

 最高の出会いと、最高の季節を過ごした大冒険を。


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