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第50話○追憶編⑥~初恋~


 高校2年の12月、私は高校の近くの進学塾に通い始めた。


 初めての塾での英語の授業……

 周りは通い慣れている子ばかりのようで、いくつかのグループができていた。


 私が入ったクラスは丁度、12月から新しい先生になったようで、授業の最初に簡単な自己紹介があった。


「はじめまして。篠田(しのた)一幸(いっこう)です」


(あ、名字が同じ……でも読み方が違う……)


(『しのた』って読み方もあるって、名前の授業で自分の名字調べた時に載ってたけど、本当にいたんだ……)


「あ……あの、『しのた』は言いにくいので『しのだ先生』でいいです。えっ……と……ちなみに年は36歳です」


(うわ~丁度20歳年上だ……全然見えない)


 先生は見た目では20代前半といった感じで声も高めなので、年齢とのギャップに何だか違和感があった。

 メガネをかけていて少しオドオドした感じで、人が良すぎて損するタイプにも見えた。


「いっこ~先生?……って珍しい名前だね」


「もしかしてオネエ系ですか~?」


 自己紹介の名前に盛り上がる教室内……


「先生って結婚してるんですか?」


 誰かがからかうように聞く。


「お見合いは何度かしたことあるんだけど……なかなか上手くいかなくて……」と照れながら苦笑いする先生。


「先生って絶対Mでしょ?」


「えーとM……で……は……ありませんっ」


 爆笑の中、最初の授業が始まった。


 一瞬でいじられキャラを確立してしまった先生は、罰が悪そうに授業を進めていたが、


(あ……寝癖……)


 一生懸命教えようとする後ろ姿に寝癖を発見してしまい、20歳も年上の男の人にこんなことを言うのは失礼だが、(とてもかわいい)と思ってしまった。


 その気持ちがただの親近感なのか、恋なのかまだ分からなかった。


(そういえば先生って誰かに似てる……ちょっと天然で優しいお兄ちゃんて感じの……)


 その夜、私は懐かしい夢を見た。

 もう忘れかけていた初恋の夢……


~~~~~~~~~~

初恋の悠幸(はるゆき)くんに出会ったのは小学校1年生の時……


隣の席同士で自然と仲良くなり、二人とも名前に『ハル』がついているので「ハルちゃんコンビ~」とからかわれたりもしたが、一緒に遊ぶのがとても楽しかった。


妹がいて優しいお兄ちゃんという感じで、面倒見がよく誰にでも優しいけれど、

なぜかたまにおネエ言葉になってからかわれるといういじられキャラ。


学年が変わり違うにクラスになって以降、全く同じクラスになることもなく……

話すこともなくなってしまった小学4年生の時だった。


飼育委員をしていた私は、ある日の放課後に小鳥小屋の中で餌の交換をしていたが……

クラスの意地悪な男子に鍵をかけられてしまった。

しかも南京錠……しかもほとんどの生徒が帰った後……


「ちょ……ちょっと」


「や~いや~い」


ガチャガチャとフェンスを揺さぶってみたが開かない。


「出られない……どうしよう……」


さっきの男子たちも帰ってしまったみたいで校庭には誰もいない。


「誰か…………助けて……」


とフェンスに手をかけ泣きそうになっていたら……

忘れ物を取りに来たという悠幸(はるゆき)くんに会った。


「どうしたんだ?」


「出られなくて……その……鍵かけられちゃって……」


「誰に?」


「クラスの男子……」


「鍵ってコレか?」


「そう……南京錠だから鍵もらいに行かないと……」


「あ~締めたふりしたんじゃない?」


フェンスのカギ穴に入っていた南京錠がスッと外され、「キィ」と扉が開いていく……


照れながら扉を開けてくれた彼が、おとぎ話の王子様に見えた。


「あっ……ありがと……」


それからは彼をまっすぐ見られなくなり、隣にいるだけでドキドキした。


6年生になり、せっかく同じクラスになれたのに自分からは全く話しかけられず……


卒業前に悠幸くんから貰ったサイン帳も、一生懸命書いたものの渡すのが恥ずかしくて、結局渡せなかった。

~~~~~~~~~~


 自分の中に封印し、忘れていた後悔ばかりが残る甘酸っぱい初恋の思い出の夢……


「そういえば先生って悠幸くんに似てるかも……最後の漢字同じだしっ」


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