SSGK!!
「ご利用ありがとうございました~。」
ここは、リクット国の外れにあるワカトの町の冒険者ギルド内の一室のいわゆる受付と呼ばれるカウンター。
今日も今日とて、日がな一日受付業務をしています。年はさんじ…いえ、一月前に40のクラスにレベルアップした背低い、冴えない、金がないの三拍子揃ったおじさんです。
子供のころ、木登りで遊んでいる時、落ちて頭を打って前世の記憶を思い出した"転生者"ってやつですが、前世のことわざにあるように子供のころは、やれ天才とか言われましたが、15過ぎたら只の人です
特にオレSUGEEE!とかつえぇぇぇ!!とかの知識や力もなく、真っ当に人生を送り、20の時にギルドの採用試験に受かって、20年のヴェテランになりました。
容姿は、中の中なんで、出会いの無いまま気付けばお一人様いらっしゃい~です。受付嬢?公務員に出会いを求めてはいけません。アレらは人外のナニカです(遠い目)
やつらは、「笑い」の面の影に「怒り」、「冷血」の面を持ってます。同じ職場だから、嫌でも知ってしまうんですよ…
イケメンの冒険者が来るたびに、「カ~カカカ」と笑うアシュ○マンの姿を幻視します。「しがらみ」や「受付担当」とか言って近づくのは、心の中で「蜘蛛糸縛り」と呼び、男性ギルドスタッフの暗黙の了解になってます。
閑話休題…私の仕事ですが、あのギルドカードの再発行手続きをしています。
前世風には運転免許証サイズの名刺が分かりやすいですね。
極薄なんで持ち運びに便利で一目で何処のギルドの誰々ですってわかりますから、みんな証明書がわりに作ってます。
私も持ってるけど、実績無いから最低の白色Fランクのままです。
初めての登録は銀貨一枚(日本円にして約千円)とリーズナブル♪と言っても再発行に金貨一枚(日本円にして約1万円)かかり、ランクアップで古いカードを集めたり、紛失された方のカードを再発行する事が仕事で、めったにお客様が来ないんですよ。
配置換えになって半年、初めは楽でいいや♪と思ってましたが、最近では終業までの時間潰しに困ってます。給料は基本歩合制なんで、最低賃金しかもらってません(泣)
受付なんかは、担当した冒険者が依頼完遂や、大きな成果をあげると給料アップ(適性な見極め)するし、 解体係は危険手当てつくし(物によっては毒袋等取り扱うため)、再発行係は再発行した数って、そんなに頻繁にカード無くさないよ!
結局、今日も一日事務室で腹筋、背筋、腕立て伏せなんかの筋トレで終わりました。
ブルー○ーカーばりの効果で見た目なら腹の出た親父から、そこそこ筋肉のついたおっさんにジョグレス進化しました。
でもやっぱり、この配置換えの原因は半年前の新しいギルドマスターに廃棄用ギルドカード(穴の空いた物)使ってた遊びを見られたからですね。
アレはつい出来心で、綺麗な運転免許証サイズのカードが1000枚くらいあって廃棄するって聞いたから、幼なじみ二人と計三人で前世の○戯王ルール作って
「Bランク三枚を生け贄に、Sランクの《暁のライズナー》を召還!!」
「くっ、ならトラップ発動!!Aランクの女エルフの弓魔戦士によるチョット待ったコールによりBランクの一人ニヒルなダ・サイダーに誘惑攻撃!!ラブ・アローがヒット。3ターン愛の奴隷とされ、召還キャンセル!!ライズナーの召還は失敗」
「なら、ぼくは《強欲のギルマス》の特殊能力により、ギルマス強権発動!!Aランク以下の冒険者は2ターンの間、支配を受ける」
とかやってたら、そのギルマスに見つかって、「君たちの能力が十全に活かせる場所を紹介しよう」って言われてめでたく配置換えとなった次第です。
後の二人は、資料室整理係(ギルド内の資料室の本を索引順に並べる係貸し出しや返却のたびに整理し直し)と天候調査係(ギルド内の部屋から外を眺めて、快晴、晴れ、曇り、雨、豪雨、雪と変化あるごとにラウンジのボードに24時間記載する)に任命されてました。
パワハラってやつですかね。早く辞めろと声無き声が聞こえてきます…まあ、その二人も、『天職だっ!』と喜んでいたので見事にギルマスの期待を裏切ってますが。
筋トレも終わりましたので、仕事でもしますか。
廃棄用と書かれた木箱に貯まっているギルドカード(もちろん穴空き済みです)をトントンと揃えて、ギルド内にある謎機械にセットします。
んで横の大きなスロットルレバーっぽいのを、ガチャンと倒します。
それだけでガチャコン、ガチャコンと一枚ずつ飲み込まれていきます。
この謎機械、ギルドを創設した人物が作ったとか、神話のころからあるとか言われてますが、どうにも、パチンコ屋の景品数えるアレに見えるのは性格が540度くらい曲がってるからだけでは無いはずです。
ピーッ!!
数え終わったようです。「2083」と表示されてます
4万とチョットか…いや、結構貯まってましたね、ってイヤイヤ違う、新しく新規作成用のまっさらなカードにするためにボタンをポチっと♪
再びガチャン、ガチャンと音がして数値が減って行きます。程なくして「0」になりました。これでストックは終わりです。
そう、この謎機械、実質材料0の登録料だけとるぼったくり機械なんです。
更新したカードへの穴開けも専用機械でないのと開けられないし、無駄に「不変」や「時間停止」っぽい機能ついてて、折れず、曲がらず、錆び付かずとほとんど日本刀みたいな壊れ性能を持ってて
あのあるあるシーン
「大丈夫か!!お前コボルドの矢が胸に!!」
「ああ、コイツが、ギルドカードがオレを守ってくれた。」
と言いながら胸元から取り出すギルドカード、テンプレ乙な展開は結構有名な話です 。
いわゆる破壊不可のオブジェなんで皆さん急所を守るようにカードをセットしたりしています。
アレ…破壊不可?アレ…もしかして……
~~~~半年後~~~~
「ギルドを辞めたいと。」
「はい、ギルマス。やりたいことが出来上がったので、これを機に職を辞めて冒険者になろうかと」
「(出来上がった?)わかった。退職金の計算はやっておく。まあ、その体だ冒険者になってもやっていけるだろう。辞めた後の誓約はわかってるな?」
「ギルドの機密を持ち出さない、しゃべらない、メモしないでしたね。」
「そうだ。それを誓約しなければ退職は認めん。」
「わかりました。職場の私物やゴミの整理はいいんですよね。」
「あの筋トレ器具か、それは構わん。むしろ綺麗にしてから出ていって貰わんとな。」
「わかりました。ゴミひとつなく掃除しておきます。」
「では退去は明日までだ。下がれ。」
「失礼します。」
ドアを閉めて男が出ていく。ようやっと辞めたか、ギルドカードを使って遊んでいたところを見つけて、閑職に配置換えしたのに1年近く持つとはな。使えんヤツは、さっさと辞めてもらいたい。ただの害悪にしかならん。後の二人もいつまで持つかな。
~~次の日~~
「では皆さん長らくお世話になりました。明日からは、冒険者なんで、お客側からよろしくお願いします。」
職場のみんなに頭を下げる。女性陣は特に興味も無い目で見てますが、それなりに長くいたんで男性陣には、頑張れよとか暖かい声をかけられる。
「しっかし、大丈夫かよ。体は結構出来てるみたいだが、装備品はどうするんだ?」
古株のキュウさんに聞かれたので、
「大丈夫、出来たから辞めるんですよ。」
「???」
そうこうするうちに幼なじみの二人、クトとウトーが来る。
「ヨオ、昼寝付きの職場辞めて大丈夫かよ。」
「雨もなく、快適な室内職場から、外回りか、頑張れよ。」
二人ともあの装備を見てるからか、あまり心配していない。
「話しているところ、悪いが先に登録していいか?明日するより今のうちに登録しとけば手間がかからんだろう。」とキュウさんが割って入る。
「いいですよ。得意武器は剣?で、職業は…GK(Guild Knight)って書いておいてください。」
「はっ???ギルドナイト???」
~~三日後冒険者ギルド~~
「ギルマス!!ギルドカードの材料がほとんどありません!!」
新しく再発行係になった男性がギルドマスターにあわてて報告する。
「は?廃棄用を廻してるんだから無くなる訳無いだろう。」
「それが廃棄用ボックス内にこのメモが…」
『廃棄用なんで、きちんとゴミとして捨てておきます。捨ててあるゴミを拾うのは自由なんでもらっておきますね』
「ふざけるなぁぁぁぁ!!」
ギルドマスターの叫びが上がった
~~三日後 森の中~~
ギャーギャー、ゴブリン達が騒いでいるなか一人ラメラーアーマーを着た冒険者が森の中を進んで行くチョット違うのはラメラーアーマーの材質がギルドカードで出来ており、穴の空いた部分を紐で結んでおり、籠手の部分にもギルドカード、左手のヒーターシールドの前面にもギルドカード、ブーツにもギルドカードと一目見るとカードが光を反射して目立っているが、ランクごとの色違いを利用して幾何学的な模様を作り、オシャレに見えることだろうか。ヘルメットの部分にもギルドカードが使われているが全体的に見て風通しも良さそうで、汗をかいている様子はない。
逃げるゴブリンに対してゆっくりと追いかける姿は泰然としており、歴戦の強者を思わせる。
ども、フロム○したおっさんです。
いや~遊○王してるときに気づいたんですが、ギルドカードをデュエルディスクの代わりに紐で繋いだら、紐にまで不変と破壊不可がかかったみたいで壊れなかったのでどんどん繋いだら、ラメラーアーマー出来ました~
んで、他にもヘルメット、ブーツ、籠手、ヒーターシールドと作ってみたら軽くて、壊れず、通気性良し♪とぶっちゃけ最強クラスの防具になりました。
さっきも、ゴブリンに棍棒で殴られましたが、衝撃無しでノーダメージ!!こりゃつえぇぇぇ!!って思いました。
武器もロマン武器の蛇腹剣風にカードを繋げて、先端に重りがわりにカードを何枚か結んで鞭みたいに使ってます♪
薄い紙で指先を切るように、カードの薄さで相手を斬るんですよ。
おや、そうこうするうちにゴブリンアーチャーっぽいのがこちらを狙ってるのが見えたので、左手の籠手にセットしてある虎獣人のコジローさんのカードを抜いて、投げつけます。
喰らえ!!前世時代の無敵技、名刺手裏剣!!
サラリーマンなら誰しもが持つスキルで、百発百中の腕前は錆び付いてはいませんでした。
虎獣人だけに、TSですかね。シュートでないのでネーミングは多分?セーフかとゴブリンアーチャーの眉間にサクッとスパッと貫通してます。後で拾うのが面倒ですが…
ム、ゴブリンウォーリアーの壁の奥にゴブリンメイジが詠唱中です。さらにカードを抜き取るとやや力を込めて縦に投げつけます。
カードがゴブリンウォーリアーの上を越えたあたりでドライブ回転により、落ちたカードがメイジの頭を唐竹割りにします。
やはりDSは最強ですね。何分相手の下に落ちるので拾う手間がかなり省けます♪
ゴブリンたち50匹を全滅させ、奥にいたキングも蛇腹剣で一刀両断すると、討伐証明となる魔石を取ると、
「んじゃ、ワカトに帰りますか。まだギルドカードはあるし、あいつらの分の装備も作らんとね。」
と呟いておっさんは町へと帰るのだった。
これは、ギルドから生まれた最強パーティー、《ギルドナイツ》の結成前の物語
人は彼らをSSGK(スゲー、さすがはギルドナイツ)と呼び、やがては、魔王をも倒すのだがそれは、また別の物語。
推敲甘いので後日訂正するかもしれません。