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別れと芽生えた気持ち


「お は よ ー !」

「あー!うっるせぇー!!」


耳元で聞こえた声に起こされ叫びながら飛び起きた俺はこの方に顔を向けた。

朝が苦手な俺は基本夜型だ。


「ほらほら!朝ごはんもつくったからさぁ!さっさとお店開くよ?」


と言われ、ルイスの方を見ると両手にお皿をもっていた。湯気が

立っているところを見ると先ほど完成したようだ。


「おまえ、どこから入った。」

「え、鍵開いてたよ??」


きょとんとする彼女とは反対に俺は頭を抱えたくなった。

普段は城暮らしだ。鍵をかける習慣がなかったのだ。


「…はい、朝ごはん。」


手渡されたお皿を受け取りそのまま食べる。


「……ごほっごほっごほっ!!な、何だこれ。炭じゃねーか!」


口に運んだ途端に違和感を感じ、慌ててお皿をみる。すると、真っ黒で原型をとどめていない物が存在していた。


「ひどい、一生懸命作ったのに!…………ちょっと失敗しただけよ。」

「失敗ってもんじゃぇよ!………くそっ」


俺はやけになって、黒いご飯を食い尽くした。

あーまずいまずい。


「あぁ…食べちゃった」

「いいか!ご飯は俺が作る。お前は俺を起こすだけだ、いいな?」


俺の言葉にルイスは笑顔になる。


「……やったぁ!」

「やったぁ、じゃねぇ!一から仕込んでやるからな、覚えとけよ!?」


ルイスは俺に商売を、俺はルイスに料理を教えることになったのだった。



それから、1ヶ月。

俺が初めに出した損失は相当だったらしく、商売は上々でもなかなかお許しはくれなかった。

それに、今なら1ヶ月前の俺がどれだけ馬鹿だったかわかる。自分勝手で、お金を使いまくって。だが、ルイスが来てくれたおかげで変われたな、と自分でも感じていた。すべてはルイスのおかげた。


生活に余裕も出てきて、日々が楽しくなる頃。


「ネンジュリス様。」


無表情でやってきた騎士はこの生活の終わりをいとも簡単に告げた。


”明日、お迎えに上がります。“と。


俺はしばらくその場から離れられなかった。

が、そんなこともしていられず、荷造りを始めた。


ルイスにはなんて言おうか。彼女はいつも通り、笑顔で朝やってくるだろう。


この町にきてたくさんの人と仲良くなったが、1番良くしてくれたのはルイスだ。何も言わず出ていくのは申し訳けがなかったが、俺自身にそうもいかない事情ができてしまっていた。


唇を噛みながら手早く荷造りをする。そうでもないと柄にでもなく、悔しくて涙が溢れそうで、仕方がなかった。


早く、早く出て、城に戻ろう。あの騎士が向かいにくるとか言っていたがそんなもの無視だ。


急げ、急げ。”この気持ち“が何なのかを知る前に……。






予定より早く帰ってきた王子に門番は慌て、メイドはせかせかと働きだした。


「迎えをやると、行ったはずだか?」


朝になり、人が活発になり始めたぐらいに俺はある人と会っていた。出来事を起こした張本人、父親でもある国王である。


「………早く戻りたいと、願ってましたから。」

「報告書によれば、楽しそうにやってたそうじゃないか。………確かルイス、と言ったか。」


彼女の名前が上がると、俺は唇を噛んだ。彼女への罪悪感が胸の中に広がる。

あれから、少し考えて手紙と朝ごはんを置いてきた。手紙には感謝と、謝罪を書いて。もちろん、自分が王族ということは書いていない。


「彼女には大変お世話になりました。」

「恋情でも抱いたか。」


国王の言葉に下げていた顔を勢いよく上げた。


「彼女は一般民です!」

「……否定はしないのだな。」

「…くっ……」


返す言葉が無く、言い返せず終わった。大体、王族と一般民の恋愛だなんて誰が許すんだ。馬鹿にされて苦しむのは立場の弱い人間だ。

ルイスにはそんな思いをさせたくない。そこまでして想いを告げようとは思えなかった。いや、告げたくなかった。


「まぁ良い。来週、夜会を開く。その時お前に褒美をやろう。」

「…褒美?」


国王はニヤリと笑うと奥に下がった。



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