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bio element  作者: 桃月
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7.H2

 コアの部屋に戻った俺は扉の表示を確認する。

正面から時計回りに「7/1」、「26/1.7.8.13」、「6/8.26」、「1/2」となっている。

ここまでの流れでこの数字は原子番号、そしてスラッシュ以降ははその元素を手に入れる為に必要な元素なんだと思う。

手持ちの元素と原子番号は銅の29、カリウムの19、コバルトの27とアルミニウムの13、酸素の8とヘリウムの2。

よって次は「1/2」でヘリウムを使い水素を回収するのだろう。

俺は再び一番最初の失敗した扉を開けることにした。


室内は最初と同じで三本の配管と排水口があるだけだ。ただ最初のトラウマがあるせいで怖気づきそうになる。

酸素と同じで排水口から気体が出てくるのならまたヘリウムで……


「呼んだ?」


アクシーが勝手にクロクラから出現した。


「……呼んでない。とゆーかここで登場するのは危険すぎるから勘弁してくれ」


「このクソ下僕めっ。早くわたくしを宇宙一のお嬢様に仕立て上げ奉りなさい」


「アルミンは言葉使いまったく理解してないだろ……。てかお前らがここで登場って爆発する未来しか見えないんだけど」


俺は何事もなかったかのように二人をクロクラにぶち込み、ヘリウムを呼び出した。


「ヘリウム、さっきみたいに排水口から気体が出てきたら冷却してくれ」


「あっ、はい! わかりましたぁ。えーいっっ」


「あの……まだ音聞こえないから出てきちぇない……」


くっそ! またアヒル声になったじゃねーか!!

しかしヘリウムの足元にまたもや液体が溜まりだした。もしかすると大気中の元素、窒素や酸素が液化されたもの?

俺は念のためクロクラを近づけたが無反応だった。やはり扉に表示されていた元素しか回収出来ないのかもしれない。

そしてその液体は白い煙を上げ消えてしまった。


「何これっ……すっごい硬い。ヤス~、ちょっとこっちに来て回すの手伝ってよ~」


コッパーの声――まさかと思い、振り返ると危険なバルブをおもいっきり回そうとしていた。


「ら、らめぇぇぇぇぇぇぇえーーーー」


情けないアヒル声が響き渡った。コッパーは俺の声を聞いて笑い転げている。そのおかげで爆発を阻止することが出来た。

ちょうどその時ヘリウムの冷却能力で、排水口付近から大量の液体が出現していたので、俺はクロクラを使いまた新たな元素を回収した。


「あれ? アンタさっきあたしにやられてなかった? また懲りずに来たのね。そんな不甲斐ない人に回収されちゃうなんてヤダな~」


「さ、最初のは油断しただけだ! もうあんなミスはしない」


「そんな強がり言っちゃって。まだ序盤よ? アンタが全部回収出来るなんて到底思えないわ。ふふっ」


「くっ、そんなのやってみなきゃわからないじゃないか!」


「でももう共感の粉ないんでしょ?」


「あんなのなくても俺はこの扉の法則を理解したからすべて回収してみせる!」


「あははっ。全然理解してないわよ。ないと思うけど、もし最後まで辿り着いたら……ふふっ、その時が楽しみだわ」


なんなんだあいつ。言いたい放題いいやがって。だけど油断出来ないのは確か。

共感の粉がない俺にとっては一度のミスも許されない。元素を失うことで俺自身どれだけ耐えれるかも分からないし。

今までのステージをノーミスでやることは容易いが、少なくとも今回は出来る限り進めたい。


「あの……泰千代さん」


クロクラからおっとりした声が聴こえる。画面を見るとヘリウムのようだ。


「ヘリウム、さっきはありがと。おかげで水素を回収することが出来たよ」


「くすっ、お力になれたみたいでとっても嬉しいです! こんなわたしで良ければずっとお役に立ちたかったのですが……」


「俺だって嬉しいよ~! ヘリウムみたいに優しい子がいて。さっきのアレとは大違いだ」


「ちょっとアンタ。聞こえてるわよ。あたしを怒らせたら協力なんてしてあげないからね!!」


水素って確か宇宙で最初に生まれた元素って聞いたけど、長生きしすぎてイジワル小姑みたいになったんだな……きっと。


「あっ、あはは。あの……泰千代さん、寂しいですけどわたし……ここでお別れになっちゃうのです」


「ええええっっ!? そ、そーなの?? って元素回収しろって言われたのにお別れって……俺がヘリウムに嫌われたとか……」


「い、いえっ! そんなことは決してありませんっ! 泰千代さんが集めなきゃいけない元素にあたしは含まれていないからなのです」


そんなの初耳なんだが……。そもそも集める元素って一体なんなんだ?


「これ以上詳しくお伝え出来ませんが……わたしはここで泰千代さんのご無事をお祈りしています」


「そうか……。ヘリウムの笑顔が見れなくなるのは寂しいけど、なんとか頑張っていくよ。今までありがとう!」


ヘリウムの無垢な笑顔に後ろ髪を引かれる思いで俺は出口へと向かった。


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