22.Se
これで19個目の元素を集めることが出来た。あと一つ回収すればここから出られる。
しかし……アイの行方はわからないままだ。
このままアイと再開出来ずにこの世界を出てしまってもいいのだろうか。
それはきっと心残りになる。なんとしてでも見つけ出してここを一緒に出たかった。
伝えたいこともあるから……。
俺はそう決心しながらコアの部屋に戻った。
コアの部屋は最初の頃よりも生々しい状態になっていて、まるで何かの細胞の中にいるかのようにも思わせる。
視界がはっきりせずぼやけた感じになっている。
「お疲れ様でした。以上ですべての扉は終了です。お手持ちのクロクラをコアの中に戻してください」
突如、最初に耳にしたあの声が聞こえてくる。
「はっ!? もう終わりって――まだ19個しかないぞ!」
辺りを見渡すともうどこにも扉はない。ただその時、人の気配があるのに気付く。
「誰だっ! アイ……!? アイなのか」
俺は人影に近づこうとした
「……やす君。……お願い、後ろ向いてて」
「後ろ向けって……、無事なのか? 何かあったわけじゃないのか?」
「うん……。わたしは大丈夫。だからお願い……」
その声は間違いなくアイだった。
ただ明らかに様子が変だ。震える声で泣いていたようにも聞こえた。
俺は渋々アイの言うとおりに背を向けるとアイの足音が近づいてきた。
振り向きたい気持ちを抑え、壁に向かって話しかける。
「急にいなくなって心配したんだ」
「……ごめんなさい」
今にも消えてしまいそうな声でアイが答える。
「アイが目印つけてくれたんだろ? でもその通りに行ったのにアイに会うことが出来なかった」
「……ごめんなさい」
「もうっ! 何なんだよ! なんで何も話してくれないんだよ!」
つかみ所のないアイの返答に俺は感情的になってしまっった。
「やす君……本当に幸せな時間だったよ」
「な、なんだよ。そのお別れみたいな言い方は。俺達ここから二人で脱出するんだろ……ってアイ……」
背中に何かがぶつかった。そして服をギュッと掴まれる。
アイの体温が背中から伝わってきた。
「アイ……」
服を掴む手は小刻みに震え、すすり泣く声が聞こえてきた。
「なんで泣くんだよ。もうちょっとでここから出れるじゃないか」
「ぐすっ……ごめんなさい……。泣かないでおこうって思ったのに……」
「謝る必要なんてないよ」
「…………」
「あのさ、アイ。ここから二人で脱出したら俺がアイの……」
「待って! それ以上……言わないで」
アイの掴んでいる力が強くなる。
「……やす君、クロクラ見せてくれる?」
俺はアイに言われるとおりポケットからクロクラを出して手に取った。
するとアイの柔らかい手が俺の肌に触れる。
その時、俺のクロクラから回収する時の変な音が聞こえた。
その音に反応して俺はアイの方へ振り返ってしまった。
びっくりしたアイは咄嗟に顔を隠そうとする。一瞬でも泣き顔を見てしまった俺は胸が強烈に痛くなり無意識にアイをそっと抱きしめていた。
抑えていた感情が溢れ出すようにアイは泣き崩れる。
――どの位の時間二人は抱き合っていたのだろう。
少し落ち着いたアイは身体を離し、恥ずかしそうに目をそらせている。
「そういえばさっき俺のクロクラから音がしていたけど……」
「……最後の元素がまだだったから入れておいたの」
「入れておいたって……クロクラ間で元素の移動は出来ないはずじゃないのか。それにアイの元素は……」
「わたしはもう全部揃ってるよ」
「いつの間に……」
俺は自分のクロクラを確認した。
するとクロクラ内にセレンか回収されていて、すべての枠は埋まっていた。
「じゃ、じゃあこれで俺達はここから出れるのかっ! やったっ! くうっっっ! 最初は失敗したがなんとかクリアしてやったぞーっ!!」
「うふふっ、さすがだったよ。ほーんとかっこよかった」
「そ、そうかぁ。照れるじゃねーかっ。ははっ」
俺は嬉しさと安心感で目が潤んでいた。
「なんか安心したら急に腹減ってきちゃったよ。こんなとこさっさと出て早くうまいもの食べに行こうぜーっ」
「そーだねっ。お野菜いっぱーい食べたいわっ」
俺とアイは笑いながらコアに近づく。
二人はクロクラをコアの中に入れた。
するとまたあの声が聞こえてくる。
「お疲れ様でした。それでは結果の報告をします」
「なんだよ結果って。勿体つけやがって。全部集めたんだから問題ないだろ」
「萩野泰千代。元素回収率100%。違反事項なし。適正」
「ふん。当然だろ」
「相谷おとり。元素回収率85%。違反事項1点。不適正」
「はぁぁぁぁぁぁ!? おかしいだろっ!! 二人とも全部回収してるはずだ! もっとよくみやがれっ!! それに相谷おとりって……」
「よって適正者は帰還。不適正者は再入場となります」
「おいっ!!! だからちょっと待てっていってるだろうが! アイもなんとか言って――」
アイの表情をみた俺は鼓動が止まりそうになる。
それはまるでこうなることを分かっていたような感じだった。
「アイ……まさか……」
アイの瞳から涙がこぼれ落ちる。
「ごめんね……。また泣いちゃったよ……」
「ばかっ!! そんなことよりなんで……」
「嘘ついてごめんなさい。やす君に……もうこんな辛い思いなんてさせたくなかったの」
「このまま俺だけが戻っても何の解決にもならねーじゃねぇかっ」
「そんなことないよ。わたしのせいで巻き込んじゃったから。もうこれ以上は迷惑かけれないよ」
「迷惑なんて思うわけないだろっ! 一体どうすればアイを……」
急に視界が暗くなり激しい目眩に襲われた。
俺は必死に意識を保とうとするがこの流れに逆らえる術はなかった。
「わたしね……ほんとにやす君にまた会えて嬉しかったよ……。だから私の事は気にしないで……」
アイの声なのか幻聴なのかわからないまま俺の意識は遠のいていった。
「こんなの恩返しなんて言わないよね。最後まで迷惑かけちゃってごめんなさい……」




