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bio element  作者: 桃月
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2.H

どの位歩いただろう……。

ふと気付くと俺は辺り一面真っ白な部屋に一人佇んでいた。


「ここは……」


中央にストレッチボールくらいの水の球体がフワフワと浮いている。

それ以外は周りに何もなく四方の壁に扉が一つずつあり、よく見るとそれぞれの扉に数字が書いてある。


「ここが脱出ゲームの部屋なのか……? それにしては近未来的すぎるとゆーか、何をしていいか分かんないんだけど……」


その時、どこからともなく声がした。


「おやおや……。ようこそ、歓迎いたします」


「うおっ! なっ、なんだんだ!?」


突然の声に動揺した俺は辺りを見回したが何処にも人影は見当たらなかった。


「といってもあなたは被害者なだけであり。本来ならこちらに来るべき人物ではない」


何処から声がしているのか全く分からないが、まるで目の前にいるかのようにはっきりと聞こえる。

俺は現状が把握できなくなり胸の高鳴りが強まっていった。


「ですがここの規定には従って頂かなければなりません。折角ですので存分にお楽しみください」


「被害者? 規定? 一体どういうことなんだ……さっぱり分かんないんだけど。これってただの脱出ゲームだよな?」


「では規定の説明に入ります」


「んだよっ! 無視かよ。こっちからの声は聞こえないのか」


「あなたの質問に対して答える価値がないだけです」


「……へぇー、そーですか。じゃあもう聞かねーよ」


「あなたが今からすることはこの空間の中で20種の元素を集めていただくことです」


元素って……。


「そちらのコアの中にあるクロクラを使用し、反応した元素が回収出来るものになります。

一度回収した元素はその元素の許容範囲内であればあらゆる状態で呼び出すことが可能。

クロクラ内で元素複数の化学反応を起こすこともできます。クロクラは手に取り指紋を識別してから使用可能となります」


「ははっ……。全く持って意味わかんねー。コアとかクロクラって何の事だよ」


「あともう一つ。コアの中に共感の粉で造られたシートがあります。

本来の意味合いとは異なりますが、そのシートを身体の一部に貼っておくとあなたの身代わりになってくれます。使用回数は一枚につき一度きりです」


「……。」


「以上がこの空間の規定になります。何かご質問は?」


「答える気もないくせにいちいち聞いてくんなよ」


「では楽しい一時を。いってらっしゃいませ」


あーっ、まじで何なんだ。こんなのただの嫌がらせじゃねーか。

ようは元素を集めりゃいいんだろ。そんなの簡単じゃん。


俺は冷静になるため深く深呼吸をし、この部屋を注意深く調べてみた。

まずこの部屋は正方形の形をしていてどこかに通じるだろうと思われるドアが4つ。

そして中央に浮いてる水玉。それ以外は何もない。そもそも俺が何処から入ってきたかもわからない。

さっきの声はそちらのコアとか言ってたからこの水玉の事か? 俺はその水玉をぐるりと観察し、ゆっくりと手を入れてみた。

するとスライムの様な感触の中に硬いものが手に触れた。


「これは……どう見てもスマートフォンにそっくりだけど、これがクロクラってやつなのか。それにこのダサい錨のタトゥーシール……」


クロクラを弄ってみたが体感的にはスマホにそっくりだった。画面にはEMPTY表示。ボタンは一つだけで、押している間は全体が淡く光っている。


「どうやらこれを使って元素を回収するみたいだな……」


俺はクロクラをポケットに仕舞い、ダサいシールを手の甲に貼った。

問題はどこの扉に入るかだが……。扉にはそれぞれ数字が振ってあった。

正面の扉には「29」。右手側の扉には「19」、背面の扉には「27/13」。左手側には「1/2」と書いてある。

俺は直感で左の「1/2」を選ぶことにした。


扉を開けた瞬間、思わず言葉を失った。入り口を境に暗闇のカーテンでも施してあるかのように中の様子が全く伺えない。

怖気づきそうになったがここで引くわけにもいかない。

俺はゴクリと喉を鳴らし戸惑いながらもゆっくりと足を踏み入れた。視界が徐々に奪われていくのが生々しく伝わってくる。

視覚が全くあてにならないこの状態の中、俺は手探りで慎重に進んでいく。

感触からいくと中は狭い通路で、両手は思いっきり広げることは出来ない。

段差などないか確認するため、すり足で進んでいくと何かにぶつかった。

どうやら壁のようなものでこれ以上進むことができない。

その壁を手で探ると突起物のようなものがあり感覚的にはドアノブのような感じだったので回してみることにした。

すると眩しい光がドアの隙間から入り込み、瞼に真っ白な残像が残る。

視界がはっきりとしないまま中に入ると扉は何かの圧力に押され、バタンという音と同時に薄暗い照明が灯った。


「扉が……消えている……」


呆気にとられた俺は震える手で壁をさすった。


「……俺はほんとに異世界に来てしまったのか」


信じがたい現象に俺は夢でもみているようだった。

部屋の中は未だ薄暗く、正面の壁に三本の配管があり、それぞれバルブが付いている。あとは床の隅の方に一つ排水口の様な物があるだけ。

排水口の穴は手が入るくらいの大きさだが蓋ではなく床と同化しているので外したりすることは出来ない。

それ以外には何もないかと注意深く隅々を調べてみたが何も見つからず。

てことはこの配管から元素を回収するって事しかないよな……。

ヒントとなるのはこの配管に塗られている色。室内は暗かったがよく見ると配管2つは灰色。そして一つだけ赤い色をしていた。


「どう見ても赤が怪しいけど……あえての灰色なのか。そういえばこういう配管の色って……」


『プシューーーーーーー』


「うおっ!!! なんだ? 俺はまだ何もしてないぞ」


どこからともなく気体が漏れるような音が聞こえた。

俺はその原因を探ろうと必死になった。どうやら排水口から何かが噴き出している。

ただ音がするだけで臭いなどはないが、俺の中に緊張と焦りが芽生えてきてしまった。


「と、とにかく急いでこのばぶ、バルブを……」


咄嗟に目の前にあった灰色のバルブを掴み勢い良く回した。キーキーと音がするだけで何かが出てきている様子もない。

ひたすら回し続けたバルブは、勢い余って外れてしまった。


「ぬおっ!! なんも出てこねーじゃねーかっ」


相変わらず排水口からの音は続いている。俺はすぐさまもう一つの灰色のバルブを回してみることにした。


「かっ、硬いっ。 ぐぐぐぐっ……。 ぐぎぎぎぎぎぎっっ」


懸命に歯を食いしばりながら力を込めた。


ガキッ――


う、動いた。と思った瞬間、俺の目を貫くような閃光が映りあたりは真っ白に。そしてすさまじい爆音が聞こえた。


「…………ううっ。なんだ……。一体何が起きたんだ」


まだ視界に光の残像が残っている。

さっきのは何か爆発したのか? いや、そんなわけない。あれが爆発だったら俺が無事でいれるはずが……

まさかと思いシールを貼った手を確認した。


「……消えてる」


背筋に冷たいものが走り、俺は今置かれている状況が現実なのか分からなくなりそうだった。


「……だが、これで答えは分かった! 赤いバルブを回せば良かったんだな」


俺はゆっくりと配管に向かい、ゆっくりと赤いバルブを回した。すると中から透明なスライムのようなものが溢れ出てきた。


「なんかすげー大量に出てきた……。これにクロクラってやつを近づければ……」


俺はポケットからクロクラを取り出そうとした瞬間、下半身に激痛が走る。


「ぐああっっっ!! あっ……がっっっ……」


それは傷口にしみるとかそんなレベルの痛みではなかった。

今まで味わったことのない痛みで一気に血の気が引き、足元を見ると膝付近までスライムがべっとり張り付いている。

その激痛に声も出ず、俺の視界に映ったのは高波の様に覆いかぶさろうとしているスライムだった。

スローモーションの様に見えているのに身体は全く反応出来ない。

そしてそのスライムが俺の頭上に来た時、ドブッという音と共になんとも言えない感覚が全身に伝わる。

視界には単色の真紅が見えていたような気がする。その直後一瞬にして意識が遠のき、何もかもが暗闇になっていった……。


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