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bio element  作者: 桃月
14/25

14.Cr

コアの部屋に戻った俺達はお互いに疲れた顔をしていた。

正確な時間も分からず、常に気を抜けない状況。そして一度失敗して体内の元素を奪われたせいか急に目眩が襲ってくる瞬間がある。

一刻も早くここを抜け出さないと俺もアイもどれだけ体力が持つか分からない。

朦朧となりながらも次の元素クロム回収のため「24/1.8.11.16」の扉に入った。


今までのステージとは全く異なった場所になっていた。

そこは部屋の中というよりは屋外。そして校舎裏という言葉が一番適した表現なのかもしれない。

コンクリートで出来た建物にいくつかの窓ガラスがあり、その窓のちょうど下に花壇のようなスペースがある。

そしてそれ全体をさらに囲うように遥か高い壁がそびえている。俺達はどうやらこの壁から扉が出現し、ここの場所に来たみたいだ。


「小学校の校舎裏みたいね」


どうやらアイも同じことを考えていたようだ。ただアイに言われて気付かされたが、俺の通っていた小学校の校舎裏に似ている……。

どこの学校もこんな感じなのかも知れないが。


「それにもう部屋でもなくなってしまった感じだな。外にいるみたいな気分だ」


ただこの壁がある時点で俺達の行動出来る範囲は今までの部屋とさほど変わりはしなかった。

この部屋で怪しいところは……。俺は窓から中に侵入出来ないか試してみたがピクリとも動かない。

この窓……窓というより壁と同じ感触だった。ガラス部分にしても滑らかな手触りでなくコンクリートを触っている感じ。

そして何より叩いてもコンコンではなくドンという低い音が聞こえる。

まるで狐にでも化かされたかのようだ。ふとアイに目を向けると花壇をジロジロと眺めていた。


「このお花枯れちゃってかわいそう。何かが原因でこうなっちゃったのかな?」


花壇にたくさん花が咲いていたが、何故か一部だけ枯れた場所があった。


「見るからに不自然だよな。故意にこそだけ枯らしたようになってる」


その時だった。

俺は目を疑いたくなるような光景を目の当たりにする。

壁と思われていた場所から人がでてきたのである。その人はまるで学校の用務員のようなおっさんだった。

手にジョウロを持ちながらこちらの方に歩いてくる。

俺は呆気にとられ言葉を失っていた。おっさんは花壇についた瞬間、がくっと膝をおとした。


「なんですじゃこりゃー!! またわしが大事に育て上げた花が……枯れとるではないか……」


プルプル震えているおっさんに俺はそっと声を掛けてみた。


「あの……」


おっさんの反応はなかった。ショックのあまりき気付いていないのだろうか。

そして肩を叩こうと伸ばした手は何故か空を切った。


「あ……あれ? 触れない……」


俺は錯覚でも見ているのか!?

訳がわからなくなり俺はおっさんに抱きつくように全身で包み込んでみた。

その行動は煙を掴むような感じで感触がなかった。

俺は叫びながら立ち上がり何が起きているのか分からなくて発狂しそうになる。


「アイ……。アイにも見えてるよな!? このおっさん……」


アイも触ろうとしたが、俺と同じくおっさんに触れることは出来ない。


「何か幻覚でも見せられているのか……」


するとおっさんはショボくれながらまた壁へと消えていった。

その後を追い、おっさんが消えた壁を触ってみたが仕掛けがあるような感じでもなく至って普通の壁だった。

俺は頭を掻きむしりその場に座りこむ。

おっさんは明らかに人間の様だった。それに触れることが出来ないってことは……俺達はもう生きていないってことなのか!?

一種の霊とか魂とか……そんなものにでもなってしまったのだろうか。

……いや、そんなはずはない。

そもそも元素が人として現れる時点でこの世界が普通ではないんだ。

ここの部屋のせいで外にでもいるような気分になってしまったが、俺とアイがいるのは現実ではない世界。

現状ではさっきのおっさんが何者なのかは分からないが俺達がここでしなきゃいけないことは元素を集めることだ。

アイは不安そうな顔つきで俺を見ていた。


「さっきのおっさんが何だったのかは分からないが……とにかく今は元素を集めよう」


俺はさっきのおっさんの言葉を思い出し、花壇を調べてみた。

よく見ると土に紛れてそこら中にオレンジ色のドロドロしたものが付着している。

ここの回収元素がクロムだとすると植物が枯れたのはこれが原因か……。

俺は水素と酸素、ナトリウムと硫黄で重亜硫酸ナトリウムを作り出し、オレンジ色の物体にふりかけた。


「おそらくさっきのオレンジ色の物体は六価クロム。それが原因で草花が枯れてしまったのだと思う。

さっきの重亜硫酸ナトリウムで還元されこれで安全に回収できるはず……」


こうして俺とアイは元素の回収は出来たものの、モヤモヤとした気持ちのまま出口へと向かった。



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