聖獣に愛されし少女 (中編)
F・9・8
聖獣に愛されし少女 (中編)
俺は今日、突然戦闘狂に叩き起こされた。
何のようなのかもわからず、そのままアイナの部屋に連れ去られ、不死鳥の生まれる瞬間を目にしている。
「綺麗だ」
レッドがそう呟いた。
あんな奴でもこんなことを思うんだな……
俺は何か悪い意味での変化がないか探すと同時に警戒する。
万が一力が暴走したら……とのことを考えて。
卵は光輝き、ひび割れたところから炎が渦を巻いて卵を覆っている。
卵は徐々に割れて行き、力が強くなって行く。
このままアイナの部屋にいると村が危険なので少し離れたところに場所を移した。
「これが聖獣の誕生……」
陽炎のサブリーダーであるエメルはその神秘的な聖獣の誕生を収めたく思ったのか、とある動画を撮影する魔導具を取り出し、起動した。しかし、中にあった魔石が中心から外側にかけて割れ、魔石として機能しなくなった。
恐らく、魔導具を無効する力を持っているのだろう。
如何なる魔法干渉を受け付けない。
【賢者の知識】通りだ。
【賢者の知識】は地球での情報を再現なく記憶し、また、得続けることができる。そういう力だ。
しかし、それだけではない。
この世界での情報が常に流れ込んでくる。
例えば不死鳥と脳内で検索すれば『とてつもない再生力と生命力を持ち、体の大半が炎で出来ている鳥型の聖獣。
誕生時、死亡時は如何なる魔法干渉を受け付けない。
また、【地帝】グロヴァードと【炎帝】フレイグルーの眷属』
とこの世界の情報が流れてくる。
【地帝】や【炎帝】について詳しく言えないが、【地帝】はこの世界を支配する3柱の神の1柱である。
と言ってもまだわからないだろうが。
「死ぬことはないから安心しろ」
アイナが心配そうに卵を見ていたので声をかけておいた。
アイナはそれでも少し不安にながらも生まれてくる仲間の誕生を待った。
卵は先ほどより更に大きい力をあたりに放出し、時々目を離さないといけないくらい眩しく光っている。
そして……
卵から不死鳥の体が姿を見せた。
あたりは水分が蒸発し、木々は枯れて行く一方だ。
なんとも言えない熱量だ。
不死鳥は木々が枯れ果てて行くことに気づいたのか特殊な力を付与した。
すると、茶色になっていた草が緑色へ変化した。
もしかしたら生き返ったのかもしれない。
『私をこの世に呼び寄せてくれてありがとう。ご主人様』
「ごしゅっ……!?ご主人様じゃなくて普通にアイナでいいよ!?」
『じゃあ、アイナ。これでいい?』
「うん♪」
アイナは不死鳥に微笑みかけた。
不死鳥は相変わらず念話で話しかけているみたいだ。
俺達はその様子を微笑ましく見ていると、不死鳥が俺の方に目をやった。
『ところで、君からあのお方の気配と邪神の力を感じ取られるんだけど何か教えてくれないかな?』
『その邪神ってのは何なんだ?』
俺は相手の質問を質問で返した。
不死鳥は悩む素振りをする。そして意を決して語りかけてきた。
『その邪神は元は世界の神々を束ねる王であった存在だった神なの。
この世界だけではなく、数え切れないほどの世界の神々の王ね。
名前はグランドレウィス。
昔はよくいろんな神から支持を集めていたんだけど……
とある世界に来訪してから変わったんだ。
その世界がこの世界のことだよ。
この世界で何があったのか分からない。
けど何かを守るような感じだったよ。
それから変わったグランドレウィス様はこの世界を捨てようとした神々の世界を滅ぼし、消滅させて行った。
そしてある日、邪神に"堕ちた"。
だけど、それ以降手を出さずに邪神に堕ちたその日から姿を眩ませた。
次に姿を現したのは君が出会った時かな。
グランドレウィス様は龍が大好きな神でよく姿を龍に変えていたと思うけどあってる?』
俺は無言で頷く。
周りは何を話しているのかわからないみたいだ。
確かに聞かれては不味いものだと思うが。
『そう。何色だった?』
『黒』
『黒かぁ…そういえばこの世界に来た時黒い龍で次元の割れ目から飛び出してきたね。
あくまでグランドレウィス様の旧友が言うには黒龍での姿は親しい人。もしくは信頼し、信用できるものにしか見せなかったんだって。
きっと何かを感じられ、自分と同んなじ存在だと思ったんだと思う。
そこはわからない。だって本神じゃないしね。
これ以上は何も知らないわけではないけど……君がその運命を辿るというのなら分かるかもしれない。
意志を次ぐ者よ、幸せであれ。
ってことで私はご主人様の元に戻るね
』
意志を次ぐ者……
何の意志だろう。
俺はその意味を考えつつ、まだ日が昇っていないこともあり眠い。
「じゃあ、俺は寝る」
「私も眠いしカズキ君の案に乗ろう」
「俺も」
「不死鳥行こ?」
『はい♪』
それぞれが自分の部屋に戻ろうとした時、ある人物がカズキを凝視していた。
その人物は陽炎のメンバーでも少年少女7人でもないし、村人でもない。
「カズキの家はどこかな」
この言葉を吐いた本人はニヤッと笑い、カズキの後を付けた。
突然だが俺は今、暑さに悩まされている。
暑い。熱帯夜か?って思うくらい暑い。
それに……妙に下半身が動かない。絡みつかれているような感じだ。
ああ、後たまに「ハァハァ」って声が聞こえる。
「(ここがカズキの部屋♪
食べちゃうぞ〜)」
誰だかお分かりだろうか?
「ああ"もう暑い!!」
俺はあまりの暑さに我慢ならなくガバッと起きた。
「ん?」
布団のある部分が膨れていたので布団をめくって見た。
すると、
「んにゃ!?」
何やら可愛らしい女の子がいた。
「………どうしてレインがここにいる」
「この依頼が終わるのが遅そうだから……だめ?」
「レイン……お前、思春期真っ只中の男子と寝るのはどれだけ危険かこの前言っただろうが」
「えー…別にカズキがいいなら私はいつでもいいよ」
だから良くないんだって……
「兎も角、この状況を誰かに見られたらやばい。早く出て行け!!」
「そんなぁ……ひどい」
「あいつの娘なら丁度いいくらいだ」
「お兄ちゃんひどい」
うっ……
だが、ここで手を出したら負けだ。
俺は動じん。
「誰がお前の兄になった」
「えーっと生まれた時から♪」
「お前も知っているだろうが、俺が生まれた世界とお前が生まれた世界は違うからな?」
「そんなのかんけーない。私とお兄ちゃんは生まれる前から一緒なんだよ!」
「あーはいはい。わかりました」
「じゃあいていいの?」
「いいわけあるかー!!」
俺は朝までレインと話し続け、睡眠不足で作業を続けさせられることになったのだった。
レインside
私の名前はレイン・ウェザー。
魔界の魔貴族を束ねる12人の王の娘。
私のお父様は魔王【蒼炎】と呼ばれる王である日、竜族との仲を深めるために竜族の聖域、ドラゴンズ島へ訪問した。
そこで出会ったのは1人の人族だった。
龍神様によると竜族に認められ、この島に滞在することを許されているそうだ。
私は許せなかった。
私達はここ数年毎年この地を来訪し、竜族に利益をもたらすことや交流をして来た。
けど、あの人族は突如この島に現れ、
ただの竜族の遊びで優勝しただけで認められ、受け入れられる。
これは差別だとお父様は抗議した。だが、龍神様の言い分は
「あの人族からは"あのお方"と同んなじだ。
だから受け入れた。
それにあれは人族という種族に属する者。
我ら竜族は強きものに付き従う者。
強き者は拒まない」
「我ら魔族だって十分に強い。あの人族よりも強い!!」
「ほう……ならば対戦してみよ。あの人族は魔界であろうとも貴様に勝つであろう」
この言葉に乗ったお父様はあの人族を連れて魔界の危険な魔獣の巣穴となっている草原で勝負を挑むことにした。
結果は惨敗。
お父様の攻撃は全て避けられ、逆にあの人族の攻撃は全て当たった。
また、この日からあの人族に憧れを抱いた。
私はお父様が負けるまでお兄様達やお父様の強さに憧れていた。
お父様はお兄様の何倍も強い。
お父様を負かしたあの人族はとても強い存在だと。
それに一緒にいると何故か楽しかった。明るい気持ちで居れた。
そして、あの人族がドラゴンズ島に帰るとなると何か悲しいような寂しいような気持ちになった。
何日だろうか。1週間は引きこもった。
そしてある日お父様にこう言われた。
「あの人族の元に行ってこい。何か学べるかもしれん」
この一言を聞いた私はあの人族と仲が良かった方のお兄様を護衛として竜の島に来訪した。
これが今日、この日までの流れを簡単に言ったものだ。
私は諦めない。何が何でもカズキと一緒にいる。
例え我儘だと言われても。
sideout
後はこの村からアイナ達が旅に出るだけですね。
レインがここに来たまでを簡単に書きました。過去を書くのが苦手なので可笑しいところが多々あると思います。




