聖獣に愛されし少女 (前編)
F・9・7
第7話 聖獣に愛されし少女 (前編)
プレハブ建設がおおよそ終わり、俺はとある卵を抱えている少女の元を訪問した。
何故訪問するかというと、俺は鑑定が使えるから何の卵かわかるので調べて欲しいそうだ。
それと、俺も何の卵か気になるかでもある。
「いるか?」
俺はドアをノックして、許可をもらって部屋の中に入った。
その卵は時々光を放ち、相変わらずその少女が抱えたままだ。
「じゃあ、調べるね」
不死鳥 雌
・聖炎属性
・所有者 アイナ
・契約者 アイナ
状態異常:卵状態
孵化まで後1週間
と、脳内にデーターが流れ込んできた。
どうやら、不死鳥の卵みたいだ。
アイナというのはこの少女のことだろう。
ここである疑問を抱いたが、その答えが脳内に流れた。
聖獣は卵状態の時、自分を覚醒させてもらったものを自分の所有者、親だと認識するそうだ。
聖獣が覚醒、孵化するのには魔力が必要だ。
この少女がどのくらい抱えているのかわからないが、少女の魔力量を考えて3年は持っている筈だ。
「どうだったの?」
「おめでとう。聖獣の卵だよ。
この聖獣は君を主として認めているみたいだから大切に育ててあげてね。
それと、孵化させるのに必要な魔力を補うために君にこれをあげよう」
俺は鞄の中から魔結晶の味を取り出し、
魔法で適当の大きさに切って渡した。
「これはなんですか?」
「んー、魔力を供給できる果物かな。大丈夫。金は取らないし、俺も不死鳥を拝みたいしね」
「不死鳥?」
この言葉が俺の口から出た時、少し動揺した。
何か知っているみたいだ。
「不死鳥がどうしたの?」
「はい…実は6歳ぐらいの頃、あの森で友達と遊んでいたら弱っている炎を纏った鳥が倒れていて。必死に看病したんだけど……ある日、そこには何もいなくて回復したのかな?って思っていたけど、卵になっていたなんて……」
この時再び脳内に解説が流れた。
聖獣や神獣は自分の将来を任せられそうなものに自らの体を託すみたいで、この時点でアイナが所有者となるのが決定していたようだ。
俺が暫く納得したような顔をして卵を見ていた時、あの時みたいにテレパシーが聞こえてきた。
ーーありがとう。
と。何に対してお礼を言っているのかわからないがここのところはゴブリン退治に対してだとしておいた。
なので俺もテレパシーで卵に伝えた。
ーー当然のことをしたまでですよ。ところで、今の魔力量では後3日ぐらいですか?
卵は黙ってしまった。
俺は追求するのをやめ、アイナの魔力量向上に努めた。
その結果、俺が感じ取れるアイナの魔力量が凡そ3倍くらいになった。
「これで当分は大丈夫だな。無理はするなよ?」
俺はそう言ってアイナの家から出て広場へ向かった。
広場では、この村に援軍に来た20人の冒険者と陽炎のチームメンバーが滞在している。
窓から顔を出すと数人の冒険者が木材を担いでいた。
さて、そろそろ復興の方を手伝うか。
「レッドさん、魔獣の襲撃はありましたか?」
「いやない。それよりも私と模擬戦をしないか?戦いたくてゾクゾクするんだが」
「お断りします。戦闘狂さん」
「戦闘狂とは酷いな」
「いえ、貴方にピッタリかと」
レッドは今休憩しているようだ。
ゴブリンやオークの襲来以降、ゴブリンやオークはこの村に姿を見せるこもはなかった。
この村の近辺にある魔獣の巣は片っ端から潰され、
今では隣町まで行くのに魔獣の心配はいらなくなっている。
だが、物資輸送が増えたため、盗賊が増えた。
村に直接襲いにかかる馬鹿は20人ほど居たが、この村の復興のための予算として奴隷として売られた。
また、この村の近くに巣ぐっていた盗賊団は俺の知り合いに襲ってフルボッコにされ、身包み剥ぎ取られて干されていた。
後、突然?だがこの村の名前は色々とつけられていてどれが正しいのかわからないが、代表的なのはメリスである。他にもリカイルとかがある。ちなみに、全部で15通りある。
「さてと、建設♪建設♪」
あのドラゴンズ島で作った俺の家よりも簡単に作れちゃう。
せいぜい20分ぐらいだ。
結界は後で張ればいいことだし、材料は他の冒険者が運んで来てくれる。
自分は加工して組み立てればいい。
それだけだ。
現代日本の一般的な家では魔法を使っても1ヶ月はかかるかもしれない。
その分現代のは複雑でわかりにくい。
電線やら水道やら耐震化やらと沢山することがある。
それに比べて俺がすぐに組み立てている家は電線はもちろん水道は通っていない。
耐震化もあまりしなくて大丈夫だろう。
断層が近くなければの話だが。
「そういえば君の使っていたあの武器はどこで手に入れたのかな?」
「自分で作った」
「今度私にも作ってくれないかい?」
「いえ、あの武器は使い方を間違えば都市区画ごと吹き飛ばすことができるのであまりにも危険です。
戦争に使われるのは嫌ですし、技術が漏れるのはもっと嫌ですからね」
最初の日にミスったあれはどうなったかわからないが、
魔界に行った時、【蒼炎】が喧嘩を売ってきてわざと外したら魔界に点在する1400の古代都市のうち2つの都市が巻き込まれて……
となったので悪用されたくない。
本当、人がいなくてよかった。
いや、実際はいたけどヤバイ人だったので特にいなくなってもそうでなくてもどうでもいいことだし。
「完成っと。えーっと、宿屋?」
「ここら辺はなんだかんだ言って隣の国に行く道中でもあるんだ。宿屋の一つや二つないと旅人や冒険者が困る」
「わかりました。それと、防護壁というのは?」
「魔獣の侵攻を抑えるため。この費用は全てギルドから出ているから戦争に使われることはない」
「そうですか」
俺は作業に取り掛かった。
宿屋のうち1つは温泉をひこうと思う。
火山が近くにあるわけではないが、遠いわけでもない。
火山は隣国にあり、十数年に一度黒煙で空が覆われることがあるそうだ。
特に最近は活動が激しく、5年前……魔獣の大侵攻があった頃、ちょうど大規模な噴火が起きたそうだ。
噴火により、なんでも国土が増えたとか言われている。
きっと噴火によって埋め立てられたのだろう。
そんなことより掘ろう。
「あーレッドさん、この剣あげるんで剣で穴掘ってくれません?」
風で魔獣切るんだもん。きっとやってくれるさ。
「刃の部分がオリハルコンだと!?よし、やろう。ここの土を柔らかくすればいいんだな?」
結果、深さ40mぐらいまでは楽々掘れた。
ここまで来ると何故か暑い。
それに湿度が高いので余計にたちが悪い。
「あと少しかな」
結界を自分の周りに張り、とどめを指した。
水脈に当たったみたいだ。
この水(36℃ぐらい)は徐々にかさが増してゆく。
「後は上を整備するか」
軽く足に身体強化をかけ、ジャンプして地上に出た。
その時に少し衝撃が来たが気にしない。
「あれ?どうしたんですか?」
穴の隣にレッドが倒れていた。
鼻血を出している……。
「癒せ光よ、大回復」
気絶していた?レッドは目覚め、何故か顔を抑えていた。
何故顔を抑えているか聞いてみると、俺の頭が当たったみたいだ。
魔導具を使ったらしいが、抑え込めなく、逃げようとした時には遅かった。
だから、戦闘ろうぜと言ってくる。
「回復させてやったんだから勘弁しろよ」
「わかった。だが、SSSに上がってこいよ?私は待っているからな」
「すぐに上がれないと思いますが?まだE3/3ですし?」
いつの間にかE3/3に上がっていた。
ギルドカードのある部分が光っていたから押して見たらこの依頼が終わったらDまで上がるそうだ。
Dからは、ウルフやキャット、オークなどの討伐系依頼が増え、
Cからは護衛の依頼が増えるらしい。
それから色々と項目が増え、Aになると迷い竜の討伐や魔物の侵攻の時に強制的に参加させられるとこの戦闘狂に教えてもらった。
「さて、この宿屋完成させないとなー」
この後、何事もなくことを終えた。
ある意味がんばった。
あっさりと終わるとアレなので、色々と描写を付け足したり、消したりと。
次回、聖獣に愛されし少女 (後編)?