漆黒の翼
F・9・2
『カズキはいるか』
「レイアか。今行く」
俺はオリハルコンの扉を開け、レイアの元へ行く。
レイアは何か紙のようなものを持っている。
『龍神様からだ』
"今日の午後から急遽東の闘技場で大会を行うことにした。一族の若者が和樹殿を受け入れるのに反対しているようなので、大会の時にぶちのめしてもらいたい。己の力より和樹殿の力が勝っていると理解したら受け入れるだろう。拒否権はない。"
「受けよう。その闘技場に案内してくれないか?」
『わかった。着いてこい』
俺は昨日練習した【飛行】を使用し、レイアの背中を追う。
10分ぐらい飛び続けると一周21キロはありそうなでかい闘技場があった。
闘技場には数匹の竜がブレスを吐き合い、模擬戦をしている。
そのうち、一匹が俺たちのことを気付いたみたいで話しかけてきた。
『レイア、その後ろにいる人が龍神様がいってた子かい?』
『はい。グロードさん、カズキはどのブロックに出場させる予定ですか?』
『Cブロックだ。彼処は強者の集まりだ。わざわざ弱いAブロックから対戦させたら日が暮れる』
『だそうだ。Cブロック……あの青い旗が掲げられているところにでも居とけ』
俺は青い旗を見つけ、【飛行】をやめて降りる。
『この高さから落ちても無傷か……最近の人間の体は頑丈なんだな』
『いや、カズキが異常なだけでしょう。種族はよくわからないのですが、見た目は人間なので人として扱っていますが……』
『だが、ハーフではなさそうだしな……にしても、物凄い気を放っているな……魔王…伝承にある異界の邪神通りの気を放っているな。だが、それと戦った神の持つ気を持っている。どうだろうな』
『なら、神と邪神の間の人ってことにしておきましょう』
レイア、グロードはカズキについて話ながら龍神のいるところへ向かって行った。
「俺、見た目人だけどなぁ。邪神化してるかもしれないんだよな。後、神の力も所持しているみたいだけど」
俺は邪神の力と神の力を持っている。邪神、神の割合で言えば圧倒的に邪神の力の方が上だ。人と邪神の力で言えばほぼ等しいと俺は思う。
人間1+邪神1=地球にいた俺。
過去の俺+神0,1=現在の俺だろうから、種族は人/邪神となる可能性がある。
けど、俺自身は人だと信じたいので人だとしておく。
『小僧が例の人間か』
「あ"?何かようか?」
黒龍(邪神)に真似て威圧を掛ける。その瞬間、モブ竜Aは気絶した。
『カロン!?ガキ何をした!?』
カロン's友人は俺に殺気を放ってくる。
俺はそれに俺に対する殺意があると感じ、カロンに掛けた異常の威圧を放った。
『ぐっ……』
「俺は、絡まれたから威圧返ししてあげただけだが?これ以上俺に殺気を向けるなら……どうなるかわかるよな?」
あーあ、気絶した。何もかも気絶すれば済む問題じゃないんだがな。
『何事だッ!!』
「絡んできたから其れ相応の仕返しをした」
『貴様ァ!!』
この中で1番強そうな白い竜がブレスを真っ白い吐いてくる。
「闇よ形どれ、【邪悪なる盾】」
ブレスは盾によって四方に受け流され、地を削る。
「お前の本気はこんなものか?」
俺は地面を勢い良く蹴り、竜の顔と同んなじくらいの高さまで飛び上がる。
『まだまだだ……人間の拳など喰らうとでも思ったか!!』
白竜は自分の尻尾を俺に振り叩きつけてくる。
「集え影よ、【突き出す針】」
地面から鋭い針が尻尾を捉え、貫く。
『!?』
「驚いたか?人間の拳は喰らわないって言ったよな?なら、外見が人間の種族の拳はどうなんだろうなァ?」
俺は再び飛び上がり、自身の拳に力を込め、白竜の脳天に叩きつけた。白竜は地に伏せ、地面は周りを巻き込み激しく割れ、土埃が舞う。
「気絶したみたいだし、治療しておくか」
『いいのか?治療して』
「これから大会があるんだろ?その時楽しめなかったらかわいそうじゃないか。何より……俺が楽しめない」
俺はそう言って尻尾と顔の怪我を治す。
「完了。で、お前らはどうすんだ?こいつらみたいになるか?」
『いや、私達は遠慮しよう。メリウスを倒したのなら、私達は勝てない。あいつは龍神様の次に強いからな。無駄に怪我を負いたくない』
「そうか。ならCブロックの連中は認めたってとっていいんだな?」
『ああ。ただ、Aの奴は弱いが物わかりが悪い。しつこく、罵ってくるだろう』
Bは大丈夫なんだな。模擬戦をしていたら腹が減ったし、飯の時間にするか。
俺は鞄から魔結晶の実を取り出し、貪る。貪っている最中、メリウスという白竜が目を覚ました。
『お前は強い。認めよう』
「そうか。魔力を消費しただろ?食え」
持っている魔結晶の実を投げる。白竜はそれを一口で食べる。
魔結晶は魔力の最大値を上げると同時に全回復してくれるとても貴重な実だそうだ。
このドラゴンズ島は大量になっているが、成る成らないの基準は空気中の魔力濃度と地中の魔力量が関係するらしい。
また、これを魔大陸とドラゴンズ島以外のところへ持って行き、売ると1個だけで小国が帰るくらいの金が入ると言われている。
昼食が食べ終わり、トレーニングしに行こうとした時、闘技場の中央からブレスが空へ向かって吐かれた。すると、メリウスは勿論、その他の竜は中央へ向かった。
「中央は彼処か……遠い…仕方ない。【転移】」
その場から和樹は消え去り、別の場所から和樹が出現した。
「到着っと」
俺は竜のメリウスの後ろに回り、これから何が起きるか観察した。
観察していると、開会式だということがわかった。開会式が終えるとCブロックの対戦で早速俺とカロンってのが戦うことになるみたいだ。
開始の合図は中央にいる竜がブレスを吐いた時で、今、ブレスを吐こうと口を開き、……吐き出された。
『さっきは負けたが今回もそうなると思うな!!』
「型取れ影よ、影剣」
カロンは俺に爪を振り下ろしてきた。が、影で出来た剣によって阻まれた。
カロンはそれを想定以内としていたのか、重ねて別の方の爪を振り下ろした。
「【転移】からの、凍れ氷よ、氷の世界」
俺を中心に、冷気が漏れて地面を凍らして行く。カロンはそれを無効にするため、飛び上がった。
その行為が彼の運の尽きだった。
「氷麗」
地中から飛び出た氷麗によって身動きを封じられ、俺の渾身の一撃が背中に炸裂した。
『ぐはっ……中々やるな』
「まだ話せるか。なら仕方ない。舞い寄れ木々よ、拘束」
地面から緑色の蔦が伸び、それぞれの関節をしめる。力を徐々に加えて行くと、尻尾の関節や、手足の関節からメキャッという音がなり、カロンは気絶した。
「結局は気絶か」
『勝者カズキ。次の試合はカズキ対メリウスだったが、棄権したのでカズキと戦いたい奴、出てこい』
それ「待ってました」と言わんばかりに10匹の竜がやってきた。それぞれのブロックはAが9匹Bが1匹だった。
『これより、カズキ対センカPTの試合を行う。合図は前と同じく。では、始め!!』
開始の合図と共に10匹の竜はカズキを取り囲み、尻尾や爪を使い、殺そうとする。
「大人数が集まるとどうなるかわからないのか」
やれやれと呆れた様子を見せ、真上に飛び、攻撃を回避した。回避した時、後ろから悲鳴が聞こえたのはそれぞれの爪や尻尾がぶつかり合ったためだ。
『よくもやったな』
「いや、それ俺のせいじゃないと思う」
この言葉に観客席にいた竜が頷いた。
どうやら、彼・彼女らからしても10匹が密集し、攻撃をするとどうなるかわかっていたみたいだ。
『煩い!!くらえ!!』
同時にブレスを放射して来る。だが、またしてもそれぞれのブレスが相殺し、綺麗な花火が生まれた。
「………」
綺麗な花火……10種類のブレスは10種類の色を放つ花火に変わり、天に星を作っている。
和樹やそれ以外の竜はこれに見惚れている。そんな空気をぶち壊したのはセンカだった。
『な、なんだよっ!?』
冷たい視線がセンカ達を襲う。センカPTの数匹が精神的ダメージを食らい、前に屈む。
「お前は俺達の楽しいひと時をぶち壊した。だから、其れ相応の罰を受けてもらうね」
言葉を言い終える前に空中に蹴り飛ばした。
『かはっ……』
「創れ闇よ、【漆黒の翼】
【漆黒の翼】よ、羽ばたきかのものを地に付させよ【神々から下されし運命】」
俺の背中から漆黒の翼が生え、飛ばされた竜との間を詰め、漆黒の翼から現れた手のようなものが竜を勢い良く地面に叩きつけ、更に地面を叩き割った。
『しょ、勝者カズキ』
俺は【漆黒の翼】を解除し、大会を見て楽しむとともに、服が破れていないか確認したところ、一切敗れていなかった。
あれは、生えてきたのではなく、体の中にある魔力が外へ漏れ、型どられたものがその正体だ。
また、何事もなく大会は終わり、俺は竜族に受けいられた。