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つまみぐい

作者: いさねこ



「ねえ、後どれくらいで終わる?」

「5分くらい。」

「わかった。」


料理をする音とパソコンのキーボードを叩く音だけが部屋に響く。

お互い別々のコトをしてるから必要最低限の会話しかしない。そんな空間に愛がないのかといえばそうじゃない。家に仕事持ち帰ってやるのも残業ばっかで私を一人にさせるのは悪いってゆう譲なりの気遣いって知ってる。それに私だって優しい旦那さんのために美味しい夕飯を作ってる。だからこれは無言の相思相愛。


「今日の夕飯ハンバーグか?」

「そうだけど?」

「ペタペタ何か作ってる音がするからそーかな?と思って。」

「ああ、そーゆうこと。ちなみにチーズinハンバーグ。」

「おお、いいな。」


譲はハンバーグとかオムライスとかカレーみたいな子供の好きそうな料理が好物。

外見からは想像つかないけど。そんなのこと言ったらデコピンとか食らわせられちゃうかもなあ。


「このニンジン甘すぎねえ?」

「ちょっとつまみぐいしないでよ!仕事はどーしたの?」

「ん?終わった。」

「じゃあ、後焼くだけだから大人しく待っててよ。」

「暇だからここにいていいだろ。邪魔しねーし。」


そうやって口では言うくせに1度もそれを守ったことがない気がするのは気のせいか。そんな疑惑の目で譲を見る。


「えっ俺ってそんなに信用されてないの?」


本人に自覚が足りないようなのでコクンとうなずいてみせる。

これも優しさだ。


「食べ物とキッチンでの行動に関してはね。」

「酷いなあ。いつも大人しいだろ。それにちょっとの味見くらい許せよ。」


そんなこと言いながら私の腰に腕を回して抱きしめてくる。だから信用ならないって言ってるのがどうも伝わってないらしい。なぜだ?


「確かに100歩譲って大人しいとする。」

「100歩譲ってって。」

「でもさ、いつも言ってるよね?料理中は邪魔だし危ないから抱きつかないでって。だからこれがダメなの。」


ペチペチと譲の腕を叩いてわからせようと試みる。


「 でも抱きつかれんのが嫌なんじゃないんだ。」


そんな嬉しそうにニヤニヤするなって言ってやりたいけど我慢だ。我慢するんだ

神谷あおい。


「ハイハイそーですよ。」

「照れちゃってかわいいなあ、あおいちゃん。」


そりゃそうですよ、照れますよ。好きな人に抱きつかれたら誰だって心臓バクバクしますよ。こんなの付き合い初めの頃だけだと思ってたのに何年も経った今でもそうですよ。譲のその余裕がムカつくんだよね。


「ハンバーグなしにするよ。」

「それはヤダな〜。」

「じゃあ、離れて。向こうでビールでも飲んでて。」

「1人で飲んでもつまんねー。」


私の頭に顎を乗っけてさらに強くぎゅっとしてくる。そんだけはなしたくないってゆう意思表示なんだろうけどちょっと痛いです。これはもう奥の手を使うしかないかもしれない。


「わかった。じゃあ、ちょっと腕緩めて?」

「おお。」


あまり腑に落ちないって顔をしてるけどお構いなくクルッと振り返り譲と向き合う体勢になる。そしてさっきされたように今度は私がめいいっぱいぎゅっとする。


「どうしたっ、いきなり。」


へへへ。焦ってる焦ってる。いつも素直になれない分こういう時に甘えれば効果絶大。本当は毎日こうしてあげたいけどそれはやっぱり恥ずかしいから無理。


「好きだよ。譲。」


勇気を振り絞って自分からキスをする。私からしたのなんて2桁いかないくらいしかないと思う。そんくらい今頑張ってる。

きっと顔真っ赤だし恥ずかしいから照れ隠しに譲の広い胸に顔を埋める。


「だから早くご飯食べよ。それでい、一緒にお風呂入ったりしよ?」

「はあ~。」


なんでそこでため息?

離れて欲しいあまり甘えてバカじゃないのって思ってるのかな?

どーしよう。作戦失敗?


「完敗。俺の負け。」

「じゃあ、」

「もう我慢できない。」

「へ?」


意味がわからないんだけど?なんでまたぎゅってされてんの?

負けたんならおとなしく私にハンバーグ焼かせて。


「可愛すぎ。なんでキッチンでそんな全力だしてくんだよ。」

「え、いや、」


どうゆうこと、と聞こうとしたら唇を塞がれた。


「つまみぐいくらいでいいと思ってたけどダメだ。お前のこと全部食わせて?」


耳元でいつもより低めの声でそう囁かれる。

絶対わざとだ。私がこれに弱いの知っててやってる。この確信犯め。頷くしかないじゃないの。


「いい?」

「いいよ。今後一切ご飯作るの邪魔しないなら。」

「精一杯頑張ってはみる。」






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