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ナゴヤドームで釣りをする

作者: mizunomasayuki

 この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・キャラクターとは一切関係ありません。

 また2008年頃に書いたものであり、話題が古いです。


 ナゴヤドームが床上浸水した。グラウンドがきらきらと光る湖面になって、アユのようなイワナのような、それくらいの大きさの魚が何匹かで群れて泳ぎ回っている。水深は浅いのか深いのかよくわからない。芝が見えないので案外深いんじゃないかと思う。僕は二階ライトのスタンド席にいる。バイトの時の、立ち売りの赤いユニフォームを着ている。商品のポップコーンも持っている。これじゃあ野球ができんがなと呆れながら光景を見ている。僕の今日のバイト代はどうなるんだという思いと、そういえばみんなはどうしたんだろうという思いなどが交錯する。

 いつの間にか隣に山本昌とドアラがいる。ドアラは、まあまあ気を落とすな、こういう時もあるさ、と言わんばかりに、僕の肩を叩いてからスタンド席に座りのんびりとする。のんびりとしながら、レッドブルをごくごく飲んでいる。山本昌はラジコンのホイール型コントローラーを持っている。そして熱心にグラウンドに向かい操作している。湖面にボート型のラジコンを浮かべているのだ。僕はしばらく水上を走り回る白いラジコンボートを見ている。僕も何か買って来ようかと一瞬焦る。だってナゴヤドームのグラウンドでこんな贅沢な遊びをするチャンスなんて、もう一生ない。

 ドアラが手招きをして僕を呼ぶ。ドアラは自分が座っている隣の席を示す。そこには疑似餌つきの釣竿が立て掛けてある。ナイスじゃんドアラ、よっしゃ釣りでもしよまい、と釣竿に手を伸ばしたが、ドアラに阻まれる。なんと、タダじゃ貸せんと言うのだ。ええいケチくさいドアラめ、僕は仕方なく商品のポップコーンをドアラにあげた。ドアラはうまそうにポップコーンをむしゃむしゃ食い始める。


 僕は山本昌の隣でようやく釣りを開始する。きらきらと光る湖面に向かって糸を垂らす。アユのようなイワナのような魚が擬餌の周りをうろうろと泳ぐ。そこに山本昌のラジコンが来て、せっかく集まった魚たちを追い払ってしまう。僕は、ちょっとやめてくださいよ、と当然文句を言う。山本昌はにやにやと笑っている。僕は、そうか、単なる遊びなのだから真剣に釣ろうとしてはいけないのだ、と解釈する。そこでひょいと竿を動かして山本昌のラジコンを釣り上げる。山本昌は激怒する。ドアラは腹を抱えてのたうちまわり大笑いする。

 ドアラが仲裁に入り何とか二人とも気を取り直して(二人とも釈然としないが)それぞれの遊びを再開する。山本昌はラジコンを湖面で優雅に走らせる。僕はグラウンドに糸を垂らしてじっと待つ。ドアラはポップコーンを食べる。

 山本昌と、ウッズともラジコンで遊ぶのかとか、そういう野球とは全く関係のないくだらない話をしていたところ、糸が強く引かれる。大物の手ごたえだ。僕は慎重に竿を上げる。山本昌もドアラも身を乗り出して見守る。

 最初に赤い巨大な尻尾が見えて、おや、と思う。鯛でも釣れたのか? そりゃめでたいわ、と更に竿を上げると、とんでもない、釣れたのは全長一メートル以上はある巨大なエビフライだ。ドアラがオーバーアクションで驚いて、尚且つポップコーンを噴き出す。山本昌も笑いながら、球弁に入ってるエビフライだ、よくここまで育ったな、と手際よくエビフライを釣り糸から外すのを手伝ってくれる。誰か、球弁の残りのエビフライをグラウンドに投げ捨て、それが野生化してここまで大きく育ったと言うのだ。そんな馬鹿なと驚くが、山本昌が言うのだから本当だろうと思う。


 エビフライは最初暴れていたがやがてぐったりとして動かなくなる。触ってみると表面は乾いている。むしろ揚げたてのさくさくだ。衣を少しだけちぎって食べてみると、何の変哲もない、油っぽい衣の味がする。間違いなく、疑いようもなく、エビフライだ。ドアラはどこからか濃い口ソースを持ってきて、エビフライにたっぷりとかける。

 まずは釣った当人から、と山本昌とドアラに強く勧められて、僕が、はあ、じゃあいただきますと巨大エビフライにかぶりついたところで目が覚めた。僕は慌ててバイトに出掛ける支度をした。



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