第二章 ― 2― 7 ※827文字
○セーブ先
・頭:能力に目覚めた日の朝。四月第二週の火曜日。
・左肘:能力に目覚めた日の夕方。四月第二週の火曜日。霧島が上野で殺人事件を起こした事を、テレビで知った直後に保存。
・左膝:平石行方不明ルート。放課後より前。四月第三週の火曜日。田中に平石がどうして来ていないのか聞くために、D組の前で保存。
・右つま先:一回目の高校卒業式後に保存。
・左つま先:能力に目覚めた日の朝。四月第二週の火曜日昼休み。コンビニには行かず、寝て学校に来て直哉に平石を知っていると答えた後で保存。
・右肘:平石行方不明ルート。四月第三週の木曜日の朝。平石が車に乗って帰ったのを直哉が見た日。この日以降、平石は学校に来ていない。
・右膝:平石行方不明ルート。四月第三週の木曜日の放課後。校舎の屋上。平石に質問をする直前。
※基本的に何月何週は便宜上つけているだけで、作中では触れていない。
後は東雲の動機だけだな。音声データのバックアップをパソコンに作成しながら俺は思った。
何故、平石家が不自然な夜逃げをしたか。この謎は東雲の能力によるものだということは確認できた。ただ、どうして東雲が平石家を夜逃げさせたのかが、全く分からない。客観的にみて、借金の整理は上手くいっていたことは想像に難くない。おそらく、杉山弁護士というのが上手くやってくれたんだろうと思う。それが証拠に、東雲が絡んでいないルートでは、平石家は傍目には何にも問題が有る家には見えなかったし、事実、何度も言うが夜逃げなどしていなかった。つまり、東雲の思惑だけで夜逃げさせられたという他は無い。その思惑が分かれば、係わり合いにならないですむはずだ。では、どうやってそれを調べればいいのだろうか。俺は、頭を抱え込んだ。
ふと見ると、パソコンの画面は、データのコピー終了のメッセージがでていた。大分考え込んでいたらしい。だが、正直に言おう。全く何も考え付かなかった。まず、探偵とか警察などの第三者に頼めないことは明らかだ。誰がこんな話を信じてくれるというのだ。じゃぁ、俺が自分で調べられるかといえば、そんな手腕などありはしない。ただの高校生に、そんな探偵まがいの捜査などできようはずもない。相手の考えていることが分かる能力とかだったら楽に分かるのだが、残念なことに、俺の能力はご存知の用に現状の保存と保存した場所への移動だけだ。
残された手段は、本人に聞く。それしかなかった。普通に聞けばしらばっくれるに決まっているが、この音声があるなら少なくてもしらばっくれはしないだろうが……。正直、取りたい手段ではない。感情操作されないように気をつければすむ話だが、直接、係わりあいたくないというのが偽らざるおれの気持ちだ。しかし、そうもいってられないだろうな。何時、向こうからこちらの生活圏に入ってくるか分からないのだから。体に触らせなければいいと俺は自分に言い聞かせ、覚悟を決めたのだった。