第二章 ― 2― 3 ※1040文字
○セーブ先
・頭:能力に目覚めた日の朝。四月第二週の火曜日。
・左肘:能力に目覚めた日の夕方。四月第二週の火曜日。霧島が上野で殺人事件を起こした事を、テレビで知った直後に保存。
・左膝:平石行方不明ルート。放課後より前。四月第三週の火曜日。田中に平石がどうして来ていないのか聞くために、D組の前で保存。
・右つま先:一回目の高校卒業式後に保存。
・左つま先:能力に目覚めた日の朝。四月第二週の火曜日昼休み。コンビニには行かず、寝て学校に来て直哉に平石を知っていると答えた後で保存。
・右肘:平石行方不明ルート。四月第三週の木曜日の朝。平石が車に乗って帰ったのを直哉が見た日。この日以降、平石は学校に来ていない。
・右膝:平石行方不明ルート。四月第三週の木曜日の放課後。校舎の屋上。平石に質問をする直前。
※基本的に何月何週は便宜上つけているだけで、作中では触れていない。
東雲操。能力者の候補は誰かと考えれば、彼女しかいない。車には他に誰ものっていなかったからだ。もっとも、透明人間がいたとなれば別だが。問題は、彼女の能力がどの程度俺の生活に影響を及ぼしているかという点だと思う。
無難に高校生活を送った一回目や二回目では、平石家の失踪はなかった。これは、彼女が能力に目覚めなかったと考えることもできるが、彼女の影響がたまたま俺の生活圏に入ってこなかったとも考えられる。そして、前者は限りなく可能性が低いと想定される。俺が能力に目覚めた日に同時に彼女も目覚め、平石の母親を操ったというのは、どう考えても都合が良すぎるだろうし、何と言っても彼女の感情操作が、こちらでは感知できない分、先の高校生活で『操られていない』といえるはずも無いからだ。
そんなことを延々と考え、俺は学校を出て、家で飯を食っていた。電話が鳴った。
「すまんすまん、行来か?」
「俺以外この電話に出る奴がいたら、ほぼ盗難されたものだから、警察に連絡頼むわ」
「よし、わかった。まぁそんなことはどうでもいいんだが」
こいつの電話があることをすっかり忘れていた俺は、出なくてもいい電話に出てしまったことを激しく後悔し、憂鬱になる。平石の事を喋ったことも無いとか考えていた自分を殴ってやりたいくらいだ。
「あのさ、俺、名前をいい忘れていたわ」
「何の?」
条件反射のようにテレビをみるが、霧島が上野で事件を起こしてはいなかったようで、少し安堵する。
「例のお前の友人の名前さ」
「ああ」
「田中って言うんだ、頼んだぞ」
頼まれても、お前が入る余地は無いんだよと言いたいのをこらえて、俺は電話を切った。
電話を切った瞬間、そうかと俺の頭の中で考えがまとまった。東雲がいつ能力に目覚めたかが気になるならば、できうる限り早い時期に会いに行けばいいという、極めて気づけば当選の事に気付いたのだ。東雲に会った時の印象が強すぎてあの時点に戻らないと先入観を持っていたが、別に俺が戻れる最大限の日に戻り、東雲に会い能力の有無を確認すれば言いだけの事だ。何でこんなことを思いつかなかったんだろう、我ながら間抜けだ。それと、少しばかり直哉にも感謝してやろう。それは、霧島の事件のことを思い出したからこそ、閃いたに違いないからだ。たまには、役に立ってくれてアリガトウ直哉。
さて、そうと決まれば、今日はしっかり寝ておこう。またコンビニ事件の朝に戻るときに倒れたら意味が無いからな。俺は早々と、ベッドに潜り込んだ。