第二章 ― 1― 6 ※826文字
○セーブ先
・頭:能力に目覚めた日の朝。四月第二週の火曜日。
・左肘:能力に目覚めた日の夕方。四月第二週の火曜日。霧島が上野で殺人事件を起こした事を、テレビで知った直後に保存。
・左膝:平石行方不明ルート。放課後より前。四月第三週の火曜日。田中に平石がどうして来ていないのか聞くために、D組の前で保存。
・右つま先:一回目の高校卒業式後に保存。
・左つま先:能力に目覚めた日の朝。四月第二週の火曜日昼休み。コンビニには行かず、寝て学校に来て直哉に平石を知っていると答えた後で保存。
・右肘:平石行方不明ルート。四月第三週の木曜日の朝。平石が車に乗って帰ったのを直哉が見た日。この日以降、平石は学校に来ていない。
・右膝:平石行方不明ルート。四月第三週の木曜日の放課後。校舎の屋上。平石に質問をする直前。
※基本的に何月何週は便宜上つけているだけで、作中では触れていない。
周りの景色に慣れるまで、ほんのコンマ数秒ほどかかった。ちょっとした立ちくらみを感じながら、目の前の平石に話しかけた。
「……ストーカのことは田中に話したか?」
「……何を考えているのかなと思っていたら、そのことか」
平石は、溜息をつくと首を振った。
「そのことなら、もういいのよ。田中君に迷惑をかけるまでもないし」
昨日、あんなに怯えていたとは思えないほど、そういった平石の顔はどこと無く冷めていた。今日から姿をくらますつもりだからだろうか。
「言い辛いようだったら、今日も送ろうか?」
こんなカマかけで、この後に起こるであろう事を説明してくれるとは思っていないが、ここは人としても送ろうかといっておくべきだろう。
「狭間君にも迷惑かけるつもりは無いわ。それより、先輩待っているよ。いこうか」
やはりなと俺は思ってから、再度、右膝に触れ『ロード』を行った。
周りの景色が歪んで見えた。『ロード』先に持っていけるのは記憶だけだが、ロード後のこの歪みはいったいなんだろうなと俺は、気持ち悪さでうずくまった。この時点での自分と同期でも取るのに、手間取っているのだろうか。
「ちょっと、大丈夫、狭間君」
「あ、いや、大丈夫だ。ちょっと急に振り返ったからか立ちくらみがしただけだ」
「本当、心配させないでよ。急にうずくまるから何かと思ったじゃない」
「悪かったな。心配していたのが、逆に心配かけさせたみたいで」
「心配していた?」
「いや、何でもない。それより、行こうぜ先輩待っているんだろ」
俺はばつが悪くなって、急いで屋上の扉に手をかける。
「心配って、私の事?」
後ろで、また、平石が尋ねてきた。
「まぁ、俺が勝手に心配していただけだから、気にするな」
俺は、そう言って階段を降り出した。しかし、平石が後ろからついてくる気配は無かった。振り返ると、平石は扉のところで立ち止まってこちらを見ていた。ずっとこっちを見ていたのだろう。
「私の事は、大丈夫だよ。今日で面倒なこととは、全部、さようならだから」