第二章 ― 1― 3 ※875文字
○セーブ先
・頭:能力に目覚めた日の朝。四月第二週の火曜日。
・左肘:能力に目覚めた日の夕方。四月第二週の火曜日。霧島が上野で殺人事件を起こした事を、テレビで知った直後に保存。
・左膝:平石行方不明ルート。放課後より前。四月第三週の火曜日。田中に平石がどうして来ていないのか聞くために、D組の前で保存。
・右つま先:一回目の高校卒業式後に保存。
・左つま先:能力に目覚めた日の朝。四月第二週の火曜日昼休み。コンビニには行かず、寝て学校に来て直哉に平石を知っていると答えた後で保存。
・右肘:平石行方不明ルート。四月第三週の木曜日の朝。平石が車に乗って帰ったのを直哉が見た日。この日以降、平石は学校に来ていない。
※基本的に何月何週は便宜上つけているだけで、作中では触れていない。
放課後まで、直哉に質問攻めにされる以外は、当たり障りの無い日常をこなし、俺は報道部へと向かう。自分のために報道部に入部してまで調べてくれるとはと直哉に感謝されたが、少々後ろ暗いところではある。部室には、部長だけが居た。椅子に座って何かを考えているようだったので、声をかけたほうが良いのかまよったが、先に部長から声をかけてきた。
「おや、いくるん、お早いおつきで。二人は取材ででばっちゃってるけど、気にしないでかけてよ」
「取材ですか?」
「そうそう。何でも先生が結婚するのでその心境を取材に行ったのよ。一応公式的なことも乗せておかないと報道部としての立場が無いのよ。いつも、ツチノコを追え! みたいな記事を書いていてもねまぁ、誰も読みたくないだろうけどね、先生結婚報告なんてのは」
「……ツチノコをおったんですか?」
「追うわけ無いじゃない。あんなもん私らが見つけられるんならとうの昔に見つかっているわよ。もののたとえだって」
もののたとえにしても、ツチノコとかどういうセンスなんだ……。昭和初期のおっさんだよ。いや口には出さないけどな。そうそう、センスといえば、平石残念だったな。正解はいくるんだそうだ。
「それにしても、いくるんってなんですか」
「や~きにいらなかったかい。それじゃ、はざっちでも、いくっちでも好きなの選んで。私なりにはいくるんヒットなんだけどな」
「狭間でお願いします」
「検討しておくよ。ところで、いくるん。ゆかりんと一緒じゃないのかい。同じ階なんだから一緒に来れば良いのに」
「一緒って……。まだそんなに打ち解けているわけじゃないので」
「そうなのか。もたもたやっていると、とんびに油揚げさらわれちゃうぞ」
俺は、苦笑しつつ答える。
「油揚げって……。平石には、恋人がいるじゃないですか。知らないんですか?」
「……あ、そうだったねぇ。何かそうだったこと忘れてたわ、ごめん、ごめん」
三条先輩は、わざとらしく笑った。
そんなに思ったほど、平石と仲良くないのかと思いつつ、俺は部室に荷物を置くといったん廊下に出た。このまま、先輩と一緒に居るのは気まずかったからだ。