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第二章 ― 1― 2 ※987文字

○セーブ先

・頭:能力に目覚めた日の朝。四月第二週の火曜日。

・左肘:能力に目覚めた日の夕方。四月第二週の火曜日。霧島が上野で殺人事件を起こした事を、テレビで知った直後に保存。

・左膝:平石行方不明ルート。放課後より前。四月第三週の火曜日。田中に平石がどうして来ていないのか聞くために、D組の前で保存。

・右つま先:一回目の高校卒業式後に保存。

・左つま先:能力に目覚めた日の朝。四月第二週の火曜日昼休み。コンビニには行かず、寝て学校に来て直哉に平石を知っていると答えた後で保存。


※基本的に何月何週は便宜上つけているだけで、作中では触れていない。


 絶叫とともに俺は跳ね起きた。嫌な汗が背を伝っていくのが分かる。目は、卓上の時計を必死に探していた。早く今日がいつか確認したかった。日付が、平石が行方をくらます日だったのをみて、俺は深いため息をついた。よかった、夢だったのかと。


 俺がこんなに慌てるのにはわけがある。実は今見た夢は、俺が実際体験した現実そのものだ。

 一回目の高校生最後の日、右つま先の保存されている未来は、今夢で見たことがそのまま起こる。平石家の住所を調べるために『ロード』したときに、触れたくないバッドエンドといったのは、そのことだ。俺はあの時点で間違いなく死ぬ。それが何故、今こうして生きているかといえば、ひとえに俺の能力のおかげである。


 俺の能力は現時点を『セーブ』して、それを『ロード』できるというものだ。通常は、『セーブ』をするのには、体の一部を触れ『セーブ』と発声しなければならない。『ロード』する際は、『セーブ』した体の一部を触れ『ロード』と発声する必要がある。

 ちなみに、保存箇所は体の表面積と同じだから、原理的に言えばほぼ無限といえるかもしれない。ただし、俺が何処に何時時点の『セーブ』をしたか思い出せなければ、『ロード』できないので、結局のところ、俺の記憶できる五、六箇所程度がせいぜいといったところだ。

 この通常時の『セーブ』と『ロード』とは別に、『クイックセーブ』と『クイックロード』がある。『クイックロード』は、老衰以外の死が俺に降りかかったときに自動的に発揮される能力のようで、最初にセーブした時点に強制『ロード』を行うものだ。ゲームのコンティニューと同じといえる。


 この『クイックロード』かと寝起きに思ってしまったというわけだ。あの日の事は、俺の中で大きなトラウマになっているため、慌てふためいてしまったわけだが、冷静になって考えてみれば、卒業式が終わった時点という点で、すでに夢だと気付くべきではあった。右つま先を『ロード』したからこんな夢を見たんだろう。

 

 さて、本題に戻ろう。今日の放課後、平石が車に乗るところを見届けて、何のために行方不明になるかを確認しなければならない。それと、平石の母の存在も気になる。何のために弁護士事務所なんていってたんだろうな。まさか、弁護士ということも無いだろうが……。何せよ、この時点には頻繁に戻ってくることになりそうだ。俺は、右肘を触り『セーブ』と呟いた。 

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