第一章 ― 4― 8 ※1111文字
○セーブ先
・頭:能力に目覚めた日の朝。四月第二週の火曜日。
・左肘:能力に目覚めた日の夕方。四月第二週の火曜日。霧島が上野で殺人事件を起こした事を、テレビで知った直後に保存。
・左膝:平石行方不明ルート。放課後より前。四月第三週の火曜日。田中に平石がどうして来ていないのか聞くために、D組の前で保存。
・右つま先:一回目の高校卒業式後に保存。
・左つま先:能力に目覚めた日の朝。四月第二週の火曜日昼休み。コンビニには行かず、寝て学校に来て直哉に平石を知っていると答えた後で保存。
※基本的に何月何週は便宜上つけているだけで、作中では触れていない。
大通りから平石の家まで、約五分といったところだ。元気を取り戻してきた平石は、なんだかとげとげしさが抜けてきたように思われた。
「それでね、ゆきさんに強引に入れられてしまったのよ」
ゆきさんというのは、三条部長のことで、平石の先輩だったらしい。結構、仲が良く高校に入るなり、廃部寸前の報道部に連れて行かれたらしい。
「だから、ゆかりんとかいって親しげだったんだな」
「いや、あれは地だよ。二、三日すれば、狭間君にも変な呼び名つけてくるよ。はざっちとか、いくっちとか」
「……それは勘弁願いたいな。やはり、入部取り消そうか」
「駄目だよ。一回決めたら取り消せないし。私は、挟間君と一緒で嬉しいけどな」
「はい、はい」
こういう手の台詞は、男が誤解するからやめて欲しいものだ。
「あれ、信じてないよね」
「全然、信じてるけど、何か?」
俺は、棒読み気味に答える。それが、気に障ったのか怒り気味に平石入った。
「もう、腹立つな。私は、本当に狭間君の事好きだよ?」
なんだ? 今、へんなこと言ったぞ? 俺の目は、点になっていた。
一瞬の間の後、平石の目も点になり、顔が真っ赤になっていた。
しばらく、お互い気まずさで黙っていたが、平石家の白い塀に差し掛かったあたりで、突然、平石は笑い出しながら言った。
「なんてね。冗談よ、冗談。本気にした? でも、一緒の部になって嬉しいって言うのは本当だけど」
そんなに、屈託無く笑われてもな。一瞬でも本気にした俺が、情けなくなってくる。
「まぁ、そうだろうな。本当にそうだったら高橋がきれそうだ」
乾いた笑いをしながら、俺は目が泳ぐのをとめられなかった。平石の家の塀はきれいだななんて、心の中でぼやきながら。
「さて、家まで無事に着きました。ありがとうね」
「礼を言われるほどの事じゃないさ。なんだったら、明日も駅から送ろうか? 田中に送ってもらうのが気が引けるんだったら」
しばらく、考えるふりをしてから、平石は答える。
「それはよしておくよ。田中君に悪いしね。気持ちだけもらっとくわ」
「そうか?」
「まぁ、今日は、挟間君がいい人だということが分かってよかったよ」
彼女は、家の呼び鈴を押した。
「まぁ。心細かったら部室で声をかけてくれ」
家の扉が開き、女性が家の中から出てきた。
「ただいま、お母さん」
出てきた女性のほうを向きながらそう言うと、俺に向かって去り際に平石は耳元で小さく呟いた。
「あまり優しくされると、期待しちゃうわよ」
俺はただ、呆然と二人が家の中に入るのを見送っていた。
平石の言葉に、心が躍らされたわけではない。
平石の母親が見た顔だったからだ。
このルートの今朝、弁護士事務所に入っていく女性の姿は、まさに今出てきた平石の母親そのものだった。
こんばんは。
ようやく、第一部完了です。一部完了まであとがきを書かないつもりでしたので、ここまで読んでくださった皆様方に挨拶とお礼が遅れて申し訳ありませんでした。改めて御礼を申し上げます。毎回読んでいただき、ありがとうございます。
第一部、完結までもう少し早くいけると思っていたのですが、思いの他、時間がかかってしまい申しわけありません。文字数的には予定内で治まったのですが、何しろ、主人公の能力を伏せたまま最初は進行したので、書きづらくて仕方ありませんでした。最初のセーブポイントに戻る場面で、おやって思えてもらえたら嬉しいです。他にも自分なりに見所はもりこんだつもりですが、満足できるできばえになったかは不安です。特に、恋愛ぽいパートの時点で読者に引かれないかが、一番の心配の種ですが。
(後、美男美女が出ないのも不安といえば不安ですが、それはいまさらですかね)
さて、二部以降の展開も決まっておりますが、何分筆が遅いのと、リアルの忙しさで進行がどうなるかは未定です。最終章まで一年かかるかもです。未解決の伏線の回収もあるので、がんばって、書こうとは思っていますのでよろしくお願いします。もともと、賞に投稿するときからこんなペースで書いていますので、早くなれるようにとは思っていますが。
最後になりましたが、感想、評価、お気に入り登録をして下さった方々ありがとうございました。今後とも、ぜひ、感想、評価、お気に入り、レビューなどをよろしく思います。