第一章 ― 4― 4 ※817字
○セーブ先
・頭:能力に目覚めた日の朝。四月第二週の火曜日。
・左肘:能力に目覚めた日の夕方。四月第二週の火曜日。霧島が上野で殺人事件を起こした事を、テレビで知った直後に保存。
・左膝:平石行方不明ルート。放課後より前。四月第三週の火曜日。田中に平石がどうして来ていないのか聞くために、D組の前で保存。
・右つま先:一回目の高校卒業式後に保存。
・左つま先:能力に目覚めた日の朝。四月第二週の火曜日昼休み。コンビニには行かず、寝て学校に来て直哉に平石を知っていると答えた後で保存。
※基本的に何月何週は便宜上つけているだけで、作中では触れていない。
何を話すべきか。何を話してはいけないことか。俺は何も考えていなかった。そういう時は、話す言葉はいたって簡単だ。まさに、口からでまかせだった。
「俺さ、どこかで平石ちあったことなかったか? いや、高校に入る前とかで」
平石は目を丸くした。
「質問の内容もだけど、そんなことを聞くためについてきたの? 呆れるわね」
冷めた表情というより、何か上手にいえないが、変な表情をしていた。もう少し、的確な表現もあるのだろうが、女性と付き合ったことの無い俺には、無理というものだ。
「既視感というか、何か気持ち悪くてさ。平石の顔を部室で見てたときからずっと気になってて、どうしても確認したかったんだ。だけど、こんなことを聞くのも何かと思って、躊躇してたんだが……」
「答えは簡単よ。同じ中学だったじゃない。覚えてないの。中学の卒業アルバムを見てみたら?」
「中学? そうか、田中ともその時から知合いだったのか」
「そう言うことよ。クラスは違うけどね」
俺は、必死に頭の中から中学時代のことを思い出そうとしたが、何せ十年近く前のことになるので、思い出すことができなかった。
「しかし、平石は良く覚えていたな。俺は、さっぱり思い出せない。すごいな」
素直に感心して、俺は平石を褒めた。それなのに平石は、馬鹿にされたとでも思ったのか、棘のある言葉で締めくくった。
「気が済んだ? それじゃ、明日から、邪魔しないでね」
丁度、駅に着き彼女は電車から降りた。
「何よ、まだ何かあるの?!」
ヒステリック気味な声でにらみつける平石には申し訳なかったが、俺は答えた。
「自転車、この駅に止めてあるんだ。今日、電車が止まったから、ここまで着てさ」
平石は、目をつり上げて俺を睨みつけると、俺に背を向け、一回も振返らず改札から出て行った。
話を聞きだすどころか、明日から話もできない程の険悪さになってしまった。一歩進んで三歩下がるといったところか。
だが、俺は気にしてはいない。冷静に頭を触り『ロード』と呟いた。