第一章 ― 4― 3 ※1044文字
○セーブ先
・頭:能力に目覚めた日の朝。四月第二週の火曜日。
・左肘:能力に目覚めた日の夕方。四月第二週の火曜日。霧島が上野で殺人事件を起こした事を、テレビで知った直後に保存。
・左膝:平石行方不明ルート。放課後より前。四月第三週の火曜日。田中に平石がどうして来ていないのか聞くために、D組の前で保存。
・右つま先:一回目の高校卒業式後に保存。
・左つま先:能力に目覚めた日の朝。四月第二週の火曜日昼休み。コンビニには行かず、寝て学校に来て直哉に平石を知っていると答えた後で保存。
※基本的に何月何週は便宜上つけているだけで、作中では触れていない。
二時間の活動の後、平石がすでに入部していると聞いて、報道部に正式に入部した。ちなみにサイズは、二十三だそうだ。もし、何か変なものを期待していた読者諸兄がいたらご愁傷様だ。靴のサイズをさも思わせぶりに言う冗談が、俺の学校では今大流行なんだ。
「お疲れ様です」
俺と平石は、一緒に部室を出た。先輩たちは掃除があるらしく残るらしい。
「狭間君が報道部に来るなんて、意外だったよ」
「そうか? まぁ、俺も田中の彼女が報道部に入部しているなんて思っていなかったけどな」
「最初中に入ってきた時、思わず目をそらしちゃったよ」
とか言う、なんでもない会話をしている内に下駄箱にたどり着く。
「それじゃ、田中君が野球部終わるのを待って一緒に帰るから、また明日ね」
もう少し話をしたいなと俺は考えていたが、こう言われると、ここで別れないといけない。それは避けたかった。俺の名誉のために言っておく。下心からではない。平石の話を聞くには、圧倒的に時間が無いのだ。何故そんな時間が無いのかだってか? 簡単な計算だよ。来週の火曜に、直哉は『平石が、四日間来てないんだ』と言う。つまり、この後平石が学校に来るのは、明日の水曜日しかないのだ。もっとも、俺の稚拙な話術で、その短い時間で、何かしらの情報を聞ける可能性はきわめて低いが。
ここまで考えること、コンマ二秒。俺は少々強引な内容の返事をした。
「いや、俺も田中を待っているよ。どうせ帰る方向同じだからな」
一瞬、平石の表情が曇った気がする。
「そう。じゃぁ、野球部の部室に行こうか」
空気読めとか、野暮な奴だとか内心思っているんだろうなと苦笑しつつ、俺は平石の後尾を追っていった。
野球部で田中と合流し、最寄駅で別れるまで俺は、針の筵の上で座っているような感じだった。自分で選んだとはいえ、二人の会話は、二人にしか分からない物ばかりで混ざれやしなかったし、混ざったところで嫌な目で見られそうだったし、何のために後ろからついてくるんだという田中の威圧感がひどかった。それでも、別れる時、田中は俺にも挨拶をして電車から降りた。
偶然にも、平石と俺の行く方向は一緒で、降りる駅も一つ違いだった。……わざとらしかったか。平石家を知っている俺にとっちゃ、計画通りだ。これで、一駅だけでも二人きりだ。
だが、こんな状況を作り出しても、俺は何と話しかけていいのか迷っていた。
「それで、私に何か聞きたいことでもあるのかな、狭間君は?」
全く予期していなかったことに、平石のほうから俺に声をかけてきた。少し嫌味気味に。