序章 ※777文字
この世の中と言うのは、何とありふれていて、退屈で、それでいて、思い通りにならなく、窮屈な物なのかと、中学を卒業する頃に思っていた。優秀な頭や、強靭な肉体の持ち主ならそうは思わなかったかもしれないが、とりあえず、俺はそんな幸運な人間ではなかった。そして、周囲のほとんどの友人もそうだった。
某有名私立高校――あえて名前は伏せるが――に合格した頭脳明晰なある友人が言った。
「この一年、ずっと受験勉強してきたから受かったことは素直に嬉しいけど、かと言って、将来が劇的に変わるなんてことはないからな。こう、異界人や宇宙人が侵攻してくるみたいなイベントはないもんかね」
ただの自慢か嫌味かと、ただの県立高校に行くことになっていた俺は、そんなことあるかと軽く流したが、少なくともそんな気分になるのは分かる気がした。
とにかく、この社会は、不条理だし、非合理的だし、優しさも思いやりも足りないし、面倒で仕方がない。それでいて、努力すればなんとかなるだの、夢を信じろだの、諦めたら駄目だの、偽善と建前と根性論ばかり押し付けてくる。
だからこそ、映画や漫画やゲームやアニメやライトノベルとか、現実を忘れるものをエンターテイメントと呼ばれる虚構な物に求めるのだが、結局、その世界に向けての羨望とこの世の虚しさだけが残ることになり、このうつつに押し流されるだけなのだ。せめて特別な何かが起こってくれないかとこれっぽっちも本気に考えていない愚痴とともに。
先に言っておくと、特殊な力を何故か手に入れた今も、その思いは変わっていない。むしろ、強くなってしまったといってもいい。
そんなこんなで、俺は二度目の三年間の高校生活を終え、三度目の十五歳の春を迎えようとしていた。
俺の名前は、仮名で 狭間行来ということにしておが、こんな愚痴にも近い俺の手記でも読んでくれるとありがたい。