第一章 ― 3― 5 ※837文字
○セーブ先
・頭:能力に目覚めた日の朝。四月第二週の火曜日。
・左肘:能力に目覚めた日の夕方。四月第二週の火曜日。霧島が上野で殺人事件を起こした事を、テレビで知った直後に保存。
・左膝:平石行方不明ルート。放課後より前。四月第三週の火曜日。田中に平石がどうして来ていないのか聞くために、D組の前で保存。
・右つま先:一回目の高校卒業式後に保存。
※基本的に何月何週は便宜上つけているだけで、作中では触れていない。
全く、俺は自分を呪ってやりたい。平石家の前まで来て頭を抱える。
平石の家は、俺の家の隣の駅にあった。かと言って別に、彼女の家が、こんな近くにあったことを気付かなかった自分を呪っているわけではない。勢いでここまできて、この後どうするかを全く考えていなかった自分に腹がたっただけだ。いったい彼女の家に来たところで、どうやって、様子を探ろうと言うのだ。二階建てのその家を見上げて俺は途方にくれた。
夕焼けを受け茜色に染まり、窓はすべてカーテンがしてあり、中の様子を伺うこともできない。そう言えば、田中が車で迎えが来ていたとか何とか言ってたなと思い出し、ガレージを覗く。入り口のシャッターは下りてなく、車も置いていなかった。親父さんが会社にでも乗っていたんだろう。奥の方の勝手口が薄暗く見えるだけだった。
中を覗けたら儲けものだと、すみませんと挨拶をして、これで不法侵入にはならないだろうと、ガレージの奥へ進む。
ガシャーンっ!
俺は、足元の何かにつまずく。心臓が飛び出そうなほど驚き、すぐに立ち上がる。急いで逃げ出そうとしたが、家の中から何も反応が返ってこなかったので、俺は落ち着きを取り戻した。足元には、ドライバーやらスパナなどが散らばってしまっていた。どうやら工具箱を蹴飛ばしてしまったようだ。これだけ、音がしても反応が無いところを見ると留守なのか? 俺は期待せず、勝手口のノブをつかみ回した。
ドアは、意外なほどあっさりと開いた。中の様子を伺ってみるが人の気配がしない。俺は、勢いで中へと入る。もう、立派な犯罪者だ。いざとなったら『ロード』すればいいと、いい加減な気持ちで、進んでいった。
凄惨な殺人現場や切羽詰った立て篭もりなどがあるかもしれないと思わずには居られない、暗くひんやりとした空気が廊下から流れてくる。引き返そうかと言う気持ちを抑えて、進んでいくと玄関のドアにたどりついた。そこで、俺は考えこまされる光景を見た。ドアから突っ込まれた新聞が、数日分、靴の上に四散していたからだ。