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第一章 ― 3― 4 ※850文字

○セーブ先

・頭:能力に目覚めた日の朝。四月第二週の火曜日。

・左肘:能力に目覚めた日の夕方。四月第二週の火曜日。霧島が上野で殺人事件を起こした事を、テレビで知った直後に保存。

・左膝:平石行方不明ルート。放課後より前。四月第三週の火曜日。田中に平石がどうして来ていないのか聞くために、D組の前で保存。


※基本的に何月何週は便宜上つけているだけで、作中では触れていない。

 さて、いきなり手詰まりだ。話を聞いてそれで終わりということはまず無いだろうとは思っていたが、この後どうやって平石の情報を収集するというのだ。

 よくあるパターンで、この後、彼女の友人を調べて、そこから住所聞いて家まで様子を見に行くなんて言うのがあがるのだろうが、そう都合よく、そんなキーパーソンが見つかるものか。俺にはそんな気の利いた人脈などはない。

 しかし、このまま分かりませんで終わってしまうわけにも行かない。直哉に分かんなかったと言うのは簡単だが、それでは俺の方の疑問が解決しない。何で、こんな事件が起こっているかという疑問が。


 仕方ない。俺は使いたくなかったが、覚悟を決めた。しゃがんで右つま先を触って、『ロード』と呟いた。


 俺は、校舎の正面玄関を出たところに居た。少し目がくらんだが、すぐに治まる。目の前では、卒業生たちが、色々な所で集まり、記念写真を撮っている。

「おい、行来。何してんだ早くこいよっ!」

 かく言う俺も、今は、卒業生だ。廃部寸前だった文芸部に名前だけ貸していたのだが、その文芸部の記念写真に誘われているところだった。この時点を保存したのには意味は無い。ただ、高校生活最後だからとっておいただけだ。そして、この後の分岐も大して意味は無い。写真をとろうが撮るまいが、最後はバッドエンドだ。どんなエンドになるかは、今は触れたくないし、本題からそれるのでおいておく。

「すまん、ちょっと腹の調子が悪くなった。もう少し待っていてくれ」

 俺は、大声で文芸部のメンバーに声を答え、振り返って校舎の中に戻る。急いで、近場のトイレに入り、かばんを開ける。そして、一冊の冊子を取り出す。卒業者名簿だ。

 平石、平石、平石。名前を呟きながらページをめくる。平石縁。指先にその名前と住所を見つけた時は、ほっと、胸をなでおろした。それだけ、俺は、この時点に戻って来たくは無かったのだと、改めて認識した。

 そして、それは、今も同じだ。彼女の住所を一所懸命に記憶をすると、長居は御免とばかりに、左膝を触って『ロード』と呟いた。

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