第一章 ― 3― 1 ※721文字
異変に気付くのに、一週間かかった。
別に俺が鈍感だったわけじゃない。例の事件のことは終わったことだと思っていただけだ。
これからの学園生活をどうするのかが、俺の思考時間の中心だった。
一回目の高校三年間は、帰宅部だった。というのも、部活で何かを団体ですると言うのが性に合わなかったからだ。もちろん、文化祭や体育祭は楽しかったが、何かをやり遂げたと言う充実感は無い。余談だが、文化祭の暮らしの出し物は、クラス自体が参加を辞退した。
二回目の高校三年間は、帰宅部は帰宅部だが、バイトをしてみた。バイトなら一人で気楽にできるので、部活よりは敷居が低かったからだ。コンビニ、ファーストフード、ファミレス、ガソリンスタンド、本屋と色々やってみたが、入手できる金額や仕事の内容は変わっても、そこで知り合った人間関係に差はあっても、ほとんどのところ俺には何の魅力も無かった。
三回目の高校三年間は、何か得ようと思ったら、やはり、部活動しかないかと思っていた。ただ、運動部は精神的な壁が高く、文化部にしようと考えていた。かと言って、どこかに仮入部しようと思っていたわけではない。仮入部期間は、もうすぐ終わりになるため、一回仮入部した場所で強引に入部させられそうで危険な気がしたのだ。
それが幸いしたのかもしれない。
結果的には、この一週間、一回目の高校生活となんら変わりなく、俺はすごすことになり、異変の原因は、コンビニの事件にあると、すぐ分かることになったのだから。
あの事件があってから次の週の火曜日。
俺は、おはうようといい、次に今日は寒いなと続けてから席に着いた。
「よう、行来。ちょっと、聞いてくれ」
俺は、耳を疑った。まだ二週間の茨ロードが終わるには早すぎるだろうと。