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第一章 ― 2― 5 ※1609文字

○2010/11/11時点 

「第一章 ― 3― 1」としていた物を「第一章 ― 2― 5」に改題しました。

 俺は目を覚ました。急いで飛び上がる。


 事件全容を確かめるには、できるだけ早くあのコンビニに行く必要がある。確かめると書いたが、解決できればもっとよいと思いつつ、自転車を引っ張り出し、車道を突っ走る。帰りも自転車をこがなければならないのかと憂鬱になりながらも、歩くよりも十分ほど早く到着する。駐車場に自転車を止めると、普通を装い、店内に入った。


 まだ霧島は来てないようだった。俺は窓際の雑誌置き場に向かう。立ち読みでもして時間をつぶそうと思ったのだが、あいにく、雑誌やコミックはパッケージされていて読むことができなかった。客寄せのため、週刊誌類は窓際において読めるようにしておくというコンビニ経営の定石は、今は昔の話になってしまったのだろう。俺は、舌打ちをして、仕方なく店内を物色するように歩き回る。


 五分後、手ぶらで男が店内に入ってきた。霧島ではない。どこかで見た男だなと思い出そうとしていたら、アタッシュケースを持って霧島が店内に入ってきた。わき目も降らず靴下や下着類が置いてあるコーナへ向かう。おそらく泊り込みだったのだろう。ニュースでも超過勤務といっていたが、訳も無く俺は納得した。現代日本の縮図をここに見た気がしたからだ。少し大げさか。

 霧島が数点物色しているうちに、電話がかかってきたのか、携帯を取り出す。そのまま会話を始めるが、話が立て込んできたのか、次第に声が荒々しくなってきた。店員が掃除具を持って霧島に話しかけ、睨み付けるように店を出て行った。なるほど、ここで霧島は荷物を忘れるんだなと思い、俺は声をかけようとするが、その前に定員が俺に声をかけてきた。

「あなた、どこの高校生?」

 この出会いが、大学生の美人アルバイトと言うのならば俺も歓迎しようが、四十を超えたおばさんと言うこともあり、俺は遠慮させてもらいたかった。しかし、簡単に答えれる状況でもなかった。世間一般では、すでに高校で授業が開始された時間であり、俺は学校の制服を着ていた。電車が止まっているといいたかったが、俺が自転車で着ていたのをこのおばちゃんはしっかりと見ているし、困ったものだと油汗がでてくる。

 しかし、その苦境もあらぬ方向から、救いが入った。店外で取組み合いが始まったのだ。慌てておばさんが店を出る。おれも便乗して店を出た。見ると、霧島が持ってきたアタッシュケースの隣で、霧島ともう一人の男が、つかみ合っていた。さっき、俺の次に店内に入ってきた男だ。同時に、俺は思い当たった。最初、霧島とぶつかった時に、俺たちを避けるように去っていった男だった。そういえば、その時アタッシュケースを持っていたなと、遅まきながら思い出していた。

 事件はそれで解決した。店員が警察を呼びに行った。俺は、こっそりと急いで、その場から自転車を使って走り出していた。学校まで、自転車で行くわけにも行かないので、近くの駅で俺はそれを止めると、電車が復旧するまで待って、学校へ向かった。

 教室に入り、おはようと周りに声をかけ、席に着いた。

「おい、何で電話でなかったんだよ」

 以下、省略。


 そして、待ちに待った夕方。直哉の電話。

「すまんすまん、行来か?」

「俺以外この電話に出る奴がいたら、ほぼ盗難されたものだから、警察に連絡頼むわ」

「よし、わかった。まぁそんなことはどうでもいいんだが」

 俺もお前の電話は、どうでもいいといってやりたい。

「あのさ、俺、名前をいい忘れていたわ」

「何の?」

 会話はおざなり、目線はテレビを注視する。

「例のお前の友人の名前さ」

「ああ」

 適当に相槌を打ちつつ、俺は内心ガッツポーズをとる。

「田中って言うんだ、頼んだぞ」

「ああ、そうか。……て、田中っていったか、お前……?」

 俺は、ニュースで上野事件のことや朝のコンビニの事も出なくて気をよくして、何でも来いよという気分で、険悪な雰囲気が二週間続く茨ロードを選択した。


 ……事件がこれで終われば万々歳だったんだけどな。 

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