15話 我がどのように語られるのか。
剣を手に入れてから一月程経った。
あれから我と子竜は毎日遊び─ではなく散歩をしながら森を歩いておった。
所々、我の縄張りだと主張するように大きな木を真っ白に凍らせたりもしていた。
そしてこれから先遠出をするかもしれぬ。
そこで問題になっていたのが子竜の戦闘力だ。
我一頭なら何も問題はないが、大きな獣と戦う時等でずっとそばに居れる訳でもない。
一度離れて子竜から見えぬように隠れて様子を見てみたが、物凄く泣き喚いたのだ。
辺りを必死に走りながら我を探しており、胸が痛くなったのは我もトラウマだ。
まだ此奴は産まれて一月程しか経っておらん。
だというのに、何故そんな事も分からなかったのか我は我を責めたのだ。
確かに我もまだ三ヶ月程だが、我は我、子竜は子竜じゃ。
同じにしてはならぬと深く反省した。
とするならば、我がここで城を築いても子竜は今は留守番が出来ぬ。
ならば此奴を最低限身を守れるようにしてやるしか無かったのだ。
故に、散歩から帰り次第、我は心を鬼にして子竜に修行をつけた。
確かに彼奴は愛い奴よ。
我に何度も転がされ泣いた時は胸を痛めた。
だが、我は子竜を失う方が怖いのだ。
故に、我は心を鬼にし、修行が終わればある程度甘やかした。
そして一ヶ月経ち、あの部屋で子竜の身体能力を確認したのだ。
その結果がこれだ。
『
個体名 未登録
種族名 暖雪竜
年齢 0歳
level 15
状態 幼体【仮眷族】
筋力:240 知力:326 魔力:273 敏捷:312 幸運:109 魅力:227
スキル
雪魔法lv3 火魔法lv1 氷魔法lv4 回復魔法lv3 牙爪術lv3 魔力技術lv2
進化条件 【未確認】
』
身体能力は一回り強くなり、技が上手になったのだ。
特に雪の技が面白い。
我は氷属性しか持たぬが、子竜は色々出来るようだ。
我の美しさの価値観とは違うが、だが良い信念は持っておる。
我とは別の美しさを持つだろう。
とにかく、この能力であるなら遠出も問題無かろう。
生存能力はかなり上達したと言って良い。
そして我は我で何もしなかった訳ではない。
子竜が頑張っておるのだ。
我が先に頑張る姿勢を見せねば付いて来ぬ。
あまり伝説の獣として努力する姿を見せるのはよろしくは無いが、子竜ならば良いだろう。
そう思い我は剣を扱う練習をした。
剣の能力も十全に使いこなすようになったのだ。
そして分かったことがある。
常に剣を咥えながら振るうのは難しい。
そこで我は思いついた。
この鞄の物を召喚する能力。
仕舞うのは少し遅いが出すのは一瞬だ。
そして我の口元の前で召喚されるのだ。
ならば、振るう瞬間だけ出せば良いのだ。
そこから色々編み出したが、それは次の戦闘でのお楽しみだ。
子竜のついでに我も身体能力を確認したが、あまり変化はなかった為割愛する。
書くとするなら筋力と敏捷が100上がった事と“すきる”の欄に剣術が書かれていた事くらいだ。
では、これからの目的について改めて纏めるぞ。
一つ、我の城の大きさを決めるために森とその周辺の散策。
二つ、森とその周辺の獣の変化の確認。
三つ、川の上流と下流の先を確認。
四つ、人間の生息圏の特定。
そう、とうとう人間に間接的にだが接触する可能性がある。
我はこの産まれた世界に人間が生息しているのはほぼ確信している。
あの剣や鞄、そして洞窟の部屋。
何も知らぬ通常の獣には必要なく、存在している事がそもそもおかしな話だ。
だとするなら、これは人間のための装置と道具。
偶々我がそれらをある程度使い方や存在を知っていたから使えただけにすぎぬ。
何故知っていたかは知らぬし興味もない。
産まれた時から知っていた物をわざわざ疑問に思う必要など無かろう。
故に、興味も関心もない。
ただ情報として知っていただけの事。
それだけなのだ。
そして改めて言おう。
我の夢は伝説の獣になる事だ。
誰にそう認識してもらえれば伝説として語られるようになるか。
それに一番適した生き物が人間よ。
奴らは本を書くのだ。
本とは様々な人間の手に渡り、過去から未来の人間に語られる物だ。
そして我の美しさを正しく認識出来るのも奴らだ。
つまり、本に我の事を書いてもらい、長く人に語られるようになれば数百年後に我は美しい伝説の獣として人々に語られるであろう。
故に目的の四、人間の生息圏の特定が重要なのだ。
ただ、奴らは賢き生き物ではあるが、賢すぎる所があり、そこが厄介なのだ。
普通の獣であれば顔を合わせねば2年で忘れる所、奴らはその気になれば何百年先でも覚えておる。
個体が変わってもだ。
それ以外にもあるが、まぁ奴らの厄介さを言い出したらキリが無い。
我が一度姿を見せた場合、どのような事が起こるやら。
故に、慎重にもなろう。
ただ同時に楽しみでもある。
我がどのように語られるのか。
ふふふ、我の方でも素晴らしい演出を凝らせる様準備を進めるとしよう。




