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『びん底眼鏡のオタク令嬢、麗しの騎士団を推していたら公爵様に見初められました』

作者: 碧凛睡
掲載日:2026/08/24

リリアーナ・ベルンシュタイン侯爵令嬢。

 社交界での彼女の評判は――。

「地味な令嬢よね」 「いつも分厚い眼鏡をかけているわ」 「髪も適当だし……」

 そして、誰も知らない。

 彼女が――。

「今日も麗しの騎士団が尊い……!」

 重度の騎士団オタクであることを。

 リリアーナの部屋には、騎士団の紋章入りグッズ。

 騎士たちの活躍が載った新聞の切り抜き。

 歴代騎士団長の肖像画。

 さらには――。

「第三騎士団の副隊長様、今日も素敵……!」

 推し騎士の似顔絵まで飾られている。

 彼女は今日も社交界の片隅で、分厚いびん底眼鏡越しに騎士たちを眺めていた。

「はぁ……。麗しの騎士団……最高……」

 そのとき。

「リリアーナ嬢」

「はい?」

 声をかけてきたのは、公爵家当主。

 アルベルト・クローディア公爵だった。

 銀髪に青い瞳。

 誰もが振り返るほどの美貌。

 女性たちの憧れの的だ。

 しかし――。

「……どちら様でしたっけ?」

「…………」

 公爵の笑顔が固まった。

「私はアルベルト・クローディア公爵だ」

「ああ!」

 リリアーナは納得した。

「騎士団の予算を増やしてくださった公爵様ですね!」

「……そこなのか?」

「はい! 素晴らしいお方です!」

 公爵は少し嬉しそうにした。

 だが。

「でも私は騎士団の皆様のほうが好きです!」

「…………」

 公爵の笑顔が消えた。

 その日から、公爵はなぜかリリアーナのことが気になり始めた。

 ある日。

「リリアーナ嬢」

「はい?」

「その眼鏡を外したことはあるのか?」

「ありません」

「一度も?」

「推しを見るために必要なので」

「……そうか」

 公爵は複雑な顔をした。

 そして舞踏会の夜。

 リリアーナは転んで眼鏡を落としてしまった。

「あっ!」

 公爵が拾い上げる。

「これか?」

「ありがとうございます」

 眼鏡を外したリリアーナの顔を見た瞬間――。

 公爵は絶句した。

 そこにいたのは。

 大きく澄んだ瞳。

 柔らかな頬。

 長いまつげ。

 可憐で愛らしい――美少女だった。

「…………」

「公爵様?」

「……君」

「はい?」

「眼鏡を外すと……そんな顔だったのか」

「変ですか?」

「違う」

 公爵は顔を逸らした。

 耳が赤い。

「……反則だ」

「?」

 ところが本人はまったく気づいていない。

 なぜなら――。

「あっ!」

 リリアーナの視線が公爵の後ろに向く。

「騎士団の皆様!」

「…………」

 公爵が振り返る。

 そこには王国騎士団が勢ぞろいしていた。

「素敵……!」

 リリアーナは目を輝かせる。

「今日も皆様、麗しい……!」

 公爵は無言で彼女を見る。

 そして思った。

(……私では駄目なのか)

 麗しの騎士団には勝てない。

 だが――。

(それなら、私が彼女の一番になればいい)

 こうして。

 騎士団オタクの美少女令嬢を巡り、麗しの公爵様の密かな恋が始まった。

 ちなみに本人は――。

「公爵様って、騎士団の皆様と仲が良くて羨ましいです!」

「……そうか」

「はい!」

「……では、私も騎士団の一員になろうか」

「えっ!?」

 公爵様、まさかの推し枠への加入を決意。

 しかしリリアーナはまだ知らない。

 彼女が一番熱心に推している騎士団員の中に――。

 公爵様本人が変装して混ざり始めていることを。

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