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サクッと読める短編集

雨が止んだ日の約束

作者: ある六芒星
掲載日:2026/07/30

私は長編も書いてるので後で見ていってください!

 町外れには、誰も近づかない古い時計台があった。

 「雨の日だけ、時間が戻るらしい。」


 そんな噂を聞いた高校二年生の葵は、梅雨最後の大雨の日に時計台を訪れた。


 中は静まり返り、錆びた歯車がかすかに軋む音だけが響いている。塔の最上階には、大きな振り子時計と、一冊の日記が置かれていた。


 日記の最後のページには、こう書かれていた。


 ――もしやり直したい日があるなら、時計の針を一度だけ逆に回しなさい。


 葵は笑った。


 「そんなわけないよね。」


 それでも、ほんの出来心で長針を逆に回した。


 その瞬間、世界が白い光に包まれた。


 気が付くと、昨日の朝だった。


 机の上には昨日食べたはずのお菓子があり、スマートフォンには「おはよう」と友達から届く前の画面が映っている。


 本当に時間が戻ったのだ。


 葵は、その日事故に遭うはずだった幼なじみの悠斗を助けることに成功した。


 しかし翌日、時計台の日記には新しい一文が現れていた。


 ――誰かを救えば、別の誰かの運命が動く。


 その日の夕方、今度は見知らぬ少女が事故に遭ったというニュースが流れた。


 葵は初めて理解する。


 運命は消えるのではなく、形を変えて流れていくのだと。


 時計台は願いを叶える場所ではない。


 「選ぶ覚悟」を試す場所だった。


 葵は時計台へ戻り、ゆっくりと時計の針を元の位置へ戻した。


 世界は再び白く染まり、目を開けると、あの日の雨が静かに降っていた。


 悠斗は事故に遭った。


 だが命に別状はなく、リハビリを経て歩けるようになった。


 「あの時、お前がいてくれたから頑張れた。」


 そう笑う悠斗を見て、葵は思う。


 人生は、過去を書き換えることではなく、未来を一緒に歩くことなのだと。


 時計台の時計は、その日を最後に二度と逆回りすることはなかった。

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