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『チョーク一つで世界を変える〜異世界教育改革農村編〜』  作者: くろめがね


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54/60

第五十四話 棚が、溢れる

54話です。

朝、板の端が、埋まっていた。


昨日の兆候。

一昨日の兆候。

その前の兆候。


小さな字が、

隙間なく並ぶ。



夜の兆候

・水:不安

・休み:助かる

・倉:怖い

・人:足りない気がする

・水:多い気がする

・人:余る気がする



「……増えたな」


誰かが言う。


誰も否定しない。



午前。


判断は、いつも通り出る。


水:維持

人:調整

倉:点検


正しい。

揺れない。



だが、

板の端が、視界に入る。



「……今日も、

 兆候、増えるよな」


冗談めいた声。


笑いは、出ない。



昼前。


小さな異変が起きる。


倉で、

手が止まる。



「……大丈夫?」


「……うん」


返事はある。

だが、

間が長い。



ロウが、

板を見る。


兆候の列。



「……増えすぎだ」


声は、低い。



集まりが開かれる。


今回は、

予定外だ。



「……棚が、

 いっぱいだ」


ロウが言う。



「消す?」

誰かが聞く。



「消したら、

 地下に行く」


即答だった。



「じゃあ……

 使う?」


沈黙。



「使わないって

 決めた」


セラが言う。



「……でも」


ミラが続ける。


「溜めすぎると、

 無視と同じ」


空気が、

少し冷える。



午後。


兆候が、

判断に“触れる”。


直接ではない。



「……水、

 今日も不安って出てるな」


「でも、

 数字は合ってる」



「じゃあ……

 どうする?」



誰も、

すぐに答えない。



「……確認、

 一つ増やす?」


妥協案が出る。



夕方。


作業は終わる。


だが、

疲れが残る。



「……理由、

 分かんない疲れ」


誰かが言う。



夜。


人は集まる。


だが、

話題が同じになる。



「……今日も、

 言われなかった」


「……板に書かれただけ」



「……それ、

 意味ある?」


誰かが、

ぽつりと聞く。



セラが答える。


「……ある」


だが、

確信は弱い。



翌朝。


板の端が、

さらに埋まる。



夜の兆候

・倉:怖い

・人:余る気がする

・判断:重い



「……判断、

 重い?」


誰かが読む。



ロウが、

視線を上げる。



「……それ、

 初めてだな」



沈黙。



「兆候が、

 判断そのものに

 触れ始めた」


ミラが言う。



「……棚、

 溢れたな」



誰も、否定しない。



板の下に、

新しい一文が書かれる。


兆候

→ 溜める

→ 量になる

→ 圧になる



農村は、

分かった。


感情を棚に置くだけでは、

足りない。


量になった感情は、

制度を押す。


次に必要なのは、

整理ではない。


放出口だ。


チョークシリーズは他の先生の物語もありますのでよろしければご覧ください。

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