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『チョーク一つで世界を変える〜異世界教育改革農村編〜』  作者: くろめがね


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45/60

第四十五話 戻らないと、決める

45話です。

朝、畑は静かだった。


昨日と同じ配置。

昨日と同じ手順。


先生はいない。

だが、

混乱もない。


それが、少し怖かった。



「……今日も、来ないね」


誰かが言う。


誰も返さない。


返事をしないのは、

期待を置かないためだった。



午前。


作業は進む。


水路は回る。

人は動く。

子どもも数を数える。


問題はない。

――ように見える。



「……先生がいないと」


若い男が言う。


「間違えてるかどうか、

 分からなくならない?」



セラが答える。


「分からない前提で、

 確認するようになった」


沈黙。


それは、

事実だった。



昼前。


集まりが開かれる。


先生はいない。

だが、

全員が来ている。



「……待つ?」


最初に出た言葉。



「探す?」

「呼び戻す?」


声は小さい。

だが、

本気だ。



「……戻ってきてほしい」


誰かが言う。


否定は出ない。



だが、

別の声が続く。


「でも」


一拍置く。



「戻ってきたら」

「また、頼る」


その言葉で、

空気が固まる。



ベテランの男が、口を開く。


「……先生はさ」


全員が見る。



「俺たちが

 頼らない状態を

 作ってから、

 消えた」


誰も否定しない。



「偶然じゃない」

「計画だ」


言葉が、

ゆっくり共有される。



「じゃあ……」


若い女が言う。


「探すの、

 やめる?」



沈黙。


長い。



セラが、深く息を吸う。


「……探さない」


声は、震えていない。



「必要になったら」

「その時に、探す」


それが、

最大の譲歩だった。



午後。


作業は続く。


だが、

一つだけ変わる。



先生が立っていた場所に、

誰も立たない。


自然と、空ける。



「……そこ、

 使わないの?」


子どもが聞く。



「使わない」


セラが答える。


「あそこは、

 判断しない場所だった」


子どもは、少し考えて、頷く。



夕方。


集まりが、もう一度開かれる。


今度は、

短い。



「決めよう」


ベテランの男が言う。



「先生は、

 戻らない前提で進む」


「教育は、

 続ける」


「間違えたら、

 直す」



誰も反対しない。



「……でもさ」


誰かが言う。


「先生が、

 戻らないって決めたら」



セラが答える。


「それでも、

 やる」



夜。


畑に、風が通る。


先生の声は、ない。


だが、

先生のやり方が残っている。



子どもが、板を見る。


あの一枚だけ、

残された板。



いない日が続く

→ 自分で決める



「……先生」


小さな声。



翌朝。


畑は回る。


昨日より、少し早い。


誰かが言う。


「……慣れてきたな」



誰も、笑わない。


だが、

誰も否定しない。



農村は、

一つ、決めた。


先生を

“待たない”と。


それは、

裏切りでも、

忘却でもない。


引き継ぎだった。


チョークの世界は他にもありますので、よろしければご覧ください。

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