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『チョーク一つで世界を変える〜異世界教育改革農村編〜』  作者: くろめがね


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40/60

第四十話 教える側が、足りなくなる

40話です。

朝、畑は賑やかだった。


声がある。

質問が飛ぶ。

指摘も入る。


――だが、

先生の声は少ない。



「……先生、これどう思う?」


声が重なる。


「ここ、昨日と違いません?」

「この数、合ってる?」

「前の説明と、少しズレてない?」


どれも、正しい聞き方だ。


だが――

同時すぎる。



先生は、一つずつ答える。


丁寧に。

簡潔に。


だが、

追いつかない。



午前。


子どもたちが、互いに教え合っている。


「ここは、こう」

「違う。昨日は、こうだった」


小さな議論が起きる。

止める人間が、いない。



大人たちは、それを見ている。


口を出さない。

だが、

不安そうだ。



「……これ、

 先生いなくても回る?」


誰かが言う。


それは、期待でもあり、

恐怖でもあった。



先生は、板を立てた。


久しぶりに、

大きく書く。


→ 学ぶ人:多い

→ 教える人:少ない



「問題は、ここです」


空気が、張る。



「教えられる人が増えると」

「教える人が足りなくなります」


誰も否定しない。



「先生」

セラが言う。

「それ……

 当たり前じゃない?」



「はい」


先生は、即答する。


「ですが」

「当たり前は、

 対策されません」



昼前。


作業が止まる。


完全に、ではない。

だが、

質問が先に来る。



「先生、これ」

「先生、あれ」

「先生……」


先生の周りに、

自然と人が集まる。



子どもが、小さく言う。


「……先生、

 増えないの?」


誰も、笑わない。



「増えません」


先生は答える。


「私が増えたら、

 仕組みが育ちません」



午後。


一人の大人が、

勇気を出して言う。


「……俺、

 教えていい?」


空気が、動く。



「どこまで?」

誰かが聞く。


「……分かるとこまで」


正直だ。



先生は、即答しなかった。


一拍置いて、言う。


「条件があります」


全員が、息を止める。



「教える人は」

「質問される側になります」


「……それって」



「責任が増えます」


沈黙。



「間違えたら?」

「修正されます」


「誰に?」

「全員に」



その言葉で、

数人が視線を逸らす。



「……やっぱ、やめとく」


誰かが、呟く。


誰も責めない。



夕方。


それでも、

一人だけ前に出る。


ベテランの男だ。


「……やる」


声は低いが、

逃げていない。



「条件、分かってる?」


セラが聞く。


「分かってる」



先生は、板に書く。


仮の教師

→ 間違える

→ 指摘される

→ 修正する



「完璧である必要はありません」


先生は言う。


「続ける覚悟が必要です」



夜。


集まりがある。


いつもより、

静かだ。



「……先生」


ベテランの男が言う。


「正直さ」


一拍置く。



「教える側に立つと」

「怖い」


誰も、笑わない。



先生は、頷いた。


「それが、正常です」



翌朝。


畑は、

少し変わっている。


先生の横に、

もう一人立っている。



子どもが、聞く。


「……どっちに聞けばいい?」



先生は、はっきり言う。


「両方です」



板に、最後の一行が足される。


教育

→ 広がる

→ 薄まる

→ だから

→ 支える人が要る



農村は、

次の欠乏に直面した。


食料でも、

人手でもない。


教育者だ。


ここから先、

村は「学ぶ場所」から

**「教え合う場所」**へ

変わっていく。


誤字脱字はお許しください。

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