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『チョーク一つで世界を変える〜異世界教育改革農村編〜』  作者: くろめがね


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34/60

第三十四話 欠けた分を、どう埋めるか

34話です。

朝、畑に空きがある。


人数ではなく、

動線に。


昨日まで自然に埋まっていた場所が、

ぽっかりと空いている。


「……やっぱ、いないね」


誰かが言い、

誰も返さない。



作業は始まる。


止まらない。

だが、

早くもならない。


「……この辺、昨日ユノがやってたな」

「そうだね」


名前が出るだけで、

空気が一段、重くなる。



先生は、珍しく、畑の外を見ていた。


道。

森。

その先。



午前。


集まりができる。


自然発生だが、

いつもより人数が多い。


「……このままで、回る?」

「回らないことはないけど」

「きつくなる」


否定はない。

ただ、

希望もない。



セラが言う。


「誰か、呼ぶ?」


一瞬、

空気が固まる。



「外から?」

「よそ者?」

「……大丈夫?」


言葉が、慎重になる。



先生が、初めて口を開く。


「選択肢は三つです」


全員が、そちらを見る。



先生は、地面に線を引いた。


残った人で耐える


外から人を入れる


村の形を変える


「どれも、

 楽ではありません」



「一は?」

誰かが聞く。


「全員が、

 今より少しずつ重くなります」


「二は?」

「管理が増えます」


「三は?」

「……やったことがありません」


沈黙。



午前の作業に戻る。


だが、

さっきの線が、頭から消えない。



昼前。


水路のそばで、

男が言う。


「……外から来たらさ」

「うん」

「夜の話、どうする?」


一番、現実的な懸念だった。



「ルール、通じる?」

「説明、する?」

「……信じる?」


誰も即答できない。



セラが、小さく言う。


「ユノはさ」

「うん」

「ルール、守ってたよね」


「……うん」


「それでも、

 去った」


その一言で、

“外”の重さが増す。



午後。


作業は続く。


だが、

人の配置が、自然に詰まる。


「……ここ、二人要らない?」

「要る」


誰も、余裕がない。



先生は、畑の端で、

少年と話していた。


「先生」

「はい」


「外って、

 どんな人いるの?」



先生は、すぐに答えなかった。


「選べません」


「え?」

「来る人を、

 都合よく選ぶことはできません」


少年は、考える。


「……嫌な人も?」


「ええ」


「ルール守らない人も?」


「ええ」



「じゃあ……」

少年は、言葉を探す。

「入れない方が、

 安全じゃない?」



先生は、首を振る。


「閉じる方が、

 危険です」


少年は、眉をひそめる。



夕方。


集まりが、正式に開かれる。


「今日、決める?」

「決めないと、

 明日も同じ」


誰も反論しない。



「一で行く?」

「……全員、耐える?」


「二は?」

「……怖い」


「三は?」

「分からない」



セラが、深呼吸して言う。


「先生」

「はい」


「三って、何?」



先生は、地面の線を指す。


「仕事を減らす」

「え?」


「やらないことを、

 決めます」


ざわめき。



「それって……」

「収穫、減る?」

「生活、落ちる?」



「ええ」

先生は、否定しない。

「豊かさを諦めます」


静まり返る。



「外を入れると、

 管理が増える」


「耐えると、

 壊れる人が出る」


「だから」

先生は続ける。

「小さくなる選択もあります」



夜。


集まりは終わらない。


だが、

結論は出ない。



誰かが、言う。


「……明日、

 外見に行くだけ、

 行かない?」


全員が、そちらを見る。



「決めない」

「でも、

 知らないままは嫌」


その言葉に、

皆が頷いた。



翌朝。


畑は、回る。


昨日と同じ速度。


だが、

視線が、外に向いている。



先生は、板を出す。


短く、書く。


欠けた

→ 補充?

→ 変形?

→ 縮小?


少年が、それを見る。


「先生」

「はい」


「これ……

 どれが正解?」



先生は、静かに答えた。


「正解は、

 選び続けた後にしか

 分かりません」



農村は、

初めて

“自分たちの大きさ”を

考え始めた。


増えるか。

保つか。

小さくなるか。


それは、

成長の話ではない。


生き方の話だった。


誤字脱字はお許しください。

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