第二十七話 平等にすると、壊れる
27話です。
朝、畑に集まった瞬間、違和感が走った。
「……配置、変じゃない?」
誰かが言ったが、
すぐには誰も答えなかった。
理由は簡単だ。
全員、気づいている。
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先生は、板を立てていた。
久しぶりに、
はっきりした線が引かれている。
本日の配置
・重作業:全員
・軽作業:全員
・休憩:全員
「……全員?」
「はい」
ざわめきが起きる。
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「先生、それ……」
「平等です」
即答だった。
「重い仕事も」
「軽い仕事も」
「夜の判断も」
先生は続ける。
「今日は、全員同じです」
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午前。
畑は、回らない。
正確には、
回ろうとして、絡まる。
「……ここ、俺やった」
「私も」
「じゃあ、誰がやる?」
誰も動かない。
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重い作業に、
体力のない人間が入る。
「……無理」
「ちょっと代わって」
「いや、俺も」
軽作業に、
慣れている人間が回る。
「……遅い」
「慣れてない」
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「先生!」
声が上がる。
「これ、効率悪い!」
「当たり前です」
先生は、冷静だった。
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昼前。
疲労が、目に見える。
「……なんで、今日だけ?」
「不公平って言ったからです」
空気が凍る。
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「平等なら、文句ないでしょ」
先生は言う。
「同じ量、同じ質、同じ負担」
誰も反論できない。
だが、
納得もしていない。
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昼。
休憩は全員、同時。
だが、
誰も休めていない。
「……座ってるだけなのに、
疲れ取れない」
理由は簡単だ。
頭が休んでいない。
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午後。
畑のあちこちで、
小さな事故が起きる。
鍬を落とす。
水を溢す。
足を取られる。
「……危ない」
声が増える。
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セラが、息を荒くして言う。
「先生」
「はい」
「これ……誰も得しない」
「ええ」
「じゃあ、なんで?」
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先生は、板を指す。
平等
→ 不満が消える?
→ ×
一行、下に書く。
平等
→ 比較が消える?
→ ×
さらに書き足す。
平等
→ 役割が消える
→ 混乱する
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「平等は、
安心を与えません」
先生の声は低い。
「役割があるから、
人は安心します」
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夕方。
全員が、疲れている。
いつもより、
早く疲れている。
「……今日、長い」
「いつもより、何もしてないのに」
それが、答えだった。
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夜。
集まりは、ない。
誰も、来ない。
灯りは、消える。
※①
欲はある。
だが、
疲労が勝った。
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翌朝。
畑は、止まっていない。
だが、
昨日の歪みが残っている。
配置を戻しても、
感情は戻らない。
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先生は、板を立てる。
短く書く。
平等
→ 楽そう
→ だが
→ 一番、重い
少年が、それを読む。
「先生」
「はい」
「じゃあ、どうすればいい?」
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先生は、少しだけ間を置いた。
「公平にします」
「……何が違うの?」
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板に、次を書く。
公平
→ 違いを認める
→ 配置を決める
→ 説明する
少年は、眉をひそめる。
「それ……揉めるやつ?」
「ええ」
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夜。
畑を見下ろしながら、
セラが言う。
「先生」
「はい」
「今日のこれ、
わざとだよね」
先生は否定しない。
「壊れる前に、
見せる必要がありました」
セラは、息を吐いた。
「……ひどい人」
「仕事です」
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村は、
一日で学んだ。
平等は、優しそうで危険だ。
だが、
学んだだけだ。
まだ、
どう公平にするかは
分かっていない。
誤字脱字はお許しください。




