第十一話 慣れた夜、重い朝(もう数えない)
第十一話です。
夜は、仕事の続きになった。
灯りは二つ。
布は三枚。
誰が来るかは、板を見なくても分かる。
「……今日は、長め?」
「朝、半日」
「了解」
短いやり取り。
それだけで、体が動く。
服が脱がれ、
汗が移り、
体重がかかる。
触れる場所も、
触れられる順も、
もう説明はいらない。
「静かに」
「分かってる」
声は抑えられるが、
呼吸は抑えられない。
行為は続く。
途中で水を飲み、
位置を変え、
また続く。
数は数えない。
慣れは、計測を省く。
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朝。
頭が重い。
足が遅い。
畑に出ると、動きが鈍い者が目立つ。
笑いは少ない。
「……昨日、やりすぎ」
「言うな」
誰も責めない。
自己責任だからだ。
先生は板を見る。
夜:三
朝:半日×二
数字は合っている。
だが、体は合っていない。
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昼前、事故が起きた。
鍬が落ち、
足を打つ。
大事ではないが、作業は止まる。
「休め」
セラが言う。
「……夜、担当だった」
「知ってる」
言い訳は、もう通らない。
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昼休み。
木陰で、女たちが座る。
顔は赤く、目は冴えていない。
「最近、夜が楽すぎない?」
「……楽」
「でも、朝きつい」
笑いが起きる。
乾いた笑い。
「先生」
誰かが言う。
「回数、制限しない?」
空気が止まる。
制限。
それは、慣れにブレーキをかける言葉だ。
先生は少し考えた。
「制限は、管理を強めます」
「じゃあ?」
「自己申告に戻します」
「……戻る?」
「はい。盛る自由も、失敗も含めて」
ざわめき。
そして、苦笑。
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夜。
今夜は、集まりが悪い。
理由は単純だ。
「明日、重い」
「今日はやめとく」
断ることが、久しぶりだった。
布は一枚だけ。
灯りも一つ。
「静かだね」
「……慣れ直し」
触れ合いはある。
だが、急がない。
今日は、減らす夜だ。
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翌朝。
畑は、少し軽い。
動きが戻る。
セラが言う。
「夜、減ると昼が回る」
「相関です」
「身も蓋もない」
笑いが戻る。
小さく、確かに。
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夕方、板が更新される。
慣れは、効率を生む
効率は、消耗を隠す
港の少年が、それを読む。
読む力が、もうある。
少年は言った。
「……減らす判断も、教育?」
先生は答える。
「止める勇気も、技能です」
夜は来る。
また、来る。
だが、
数えない夜ほど、朝は重い。
村は、
一歩だけ学んだ。
慣れは、
扱わなければならない。
誤字脱字はお許しください。




