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1 ありふれたよる


星が煌めく夜に、子供達は寝仕度を始めます。

パジャマに着替え、ベッドへ入り、本を読んで貰います。


そんなありふれた一幕を演じるのは、

とある小さな家の住人達でした。




「ねぇお父さん…。

どうして夜は真っ暗なの?」


寝物語の途中で、ある女の子がそう言いました。

“お父さん”と呼ばれたその人は、優しく答えます。


「夜はね、真っ暗闇の国がやって来るんだ。

だから、皆静かに眠るんだよ。真っ暗は怖いからね…。」


「でもお父さん、いつも起きてる…。

真っ暗闇に連れてかれちゃうよ?」



眠っている筈の娘が、

自分が起きている事に気付いていたとは思わなかった父親は、

優しくこう言いました。


「お父さんは大丈夫なんだよ。

大人は、お外に出さえしなければね。

お外に出るのは、強い騎士様達か悪い奴らだけだから。」


「騎士様!!お母さんだ!!」


「そうだよ。お母さんはとっても強いんだ。

だからお母さんが安心してお外で頑張れるように、

いい子でおやすみしなさい。」


今日は上手いこと話を逸らす事が出来ました。

“いつもだったら”もっと時間がかかっている筈だから。

お父さんは女の子がお話に疑問を持たない内に、

寝かしつけてしまいたいのです。


「うんわかった!

じゃあ続き!続きを読んで!!」


「はいはい、えーと何処だったかな…。」


「『たくさんたくさん、かなしみました。』の後だよ。」


「そうかそうか。じゃあその後からね。

『まっくらやみのくににはおばけがでます……』」

いつの間にか、

女の子はスヤスヤとかわいい寝息を立てていました。

お父さんは女の子の額にキスをして、

ゆっくりと部屋を後にしました。


「あの子は全く、また同じ事を聞くんだから…。

何度も答えた筈だし、あの子も理解した筈なのに…。

それ程、気になると言う事か?それとも…。」


ぶつぶつと独り言を言いながら、

お父さんは自分の部屋へと歩き出します。

その途中で、ガチャン…と玄関が開く音がしました。

その音を聞きつけたお父さんは、玄関へと向かいます。

大好きなお母さんを、お出迎えしに行きましょう。




一方その頃………。

女の子はスヤスヤ眠り続けていました。

どんな夢を見ているんでしょうか?


ふと、枕元に置いてあった本がパタリと倒れました。

きっとただバランスを崩しただけ。

……普通なら、そう思った事でしょう。


倒れた絵本から、何やら黒いもやが現れたのです。

もやは女の子の上でくるくると漂い、

やがて窓辺へと移動しました。


もやは少しずつ姿を変えて、

金色をした双眼が現れたのです。

そして、穏やかに眠る女の子を見据えて言いました。


───ミツケタ─── ……と。


そう言うと、もやは夜の空気に溶けて消えました…。

何か危害を加えるけでもなく、ただ静かに…。



それからは、何事もなく時間が進んで行きました。

やがて真夜中の星空から、薄明の頃へと移り変わります。

煌めく星は少しずつ姿を消していき、

明るく暖かい陽射しが世界を包み始めました。

世界が、鮮やかに色づき始めたのです。


夜は眠りに就き、朝が目覚める時が来ました。



あぁ、ほら…。

女の子も、もうそろそろ起き出すでしょう。

そして今日も、明るい声で言うのです。


「お父さんお母さん、おはよう!

今日もお日さまポカポカあたたかいよ!」


きっとこの子には、素敵な1日が訪れるでしょう。

明日もまた、ありふれた夜を越えて…。

明後日も、明々後日も、ずっとずっと…。

今日は何をしようかな…と楽しげに考え込む女の子を、

暗がりから金の瞳がじっと見つめている事など、

きっと誰も…知らないのでしょうね…。


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