Episodio 3 Kanpaku e capo di vice distretto(関白と準管区長)
1
やがて、大広間という感じの部屋の手前の廊下で、我われは止められた。
「こちらでしばらくお待ちください」
案内の武士はそれだけ言うと、ここまで一緒に歩いてきた前田殿、長岡殿、そしてジュストもともに広間の中へと入って行った。
すぐにまた、案内の武士が戻ってきた。
「これより関白殿下の御前にお入りいただきますが、まずはお一人ずつお入りになってお立ちになり、そこでお名前が呼ばれますので、関白殿下に礼をなされて、そのままお下がりになって広間の後ろの縁側にお座りください」
何とも仰々しい作法である。その内容をフロイス師が、逐次コエリョ師の耳元で通訳して伝えていた。
前にオルガンティーノ師とともにこの城に招かれて関白殿下に会った時はこのような作法はなかった。それもそのはずあの時はまだ関白殿下は関白ではなく、ただの羽柴筑前守だったのだ。
すぐに案内の武士が、まずコエリョ師から部屋の中へ入るように促した。コエリョ師はフロイス師から伝えられたように部屋の後ろに立ち、関白殿下の横に座っているドン・シモンに名前が呼ばれると立ったまま一礼して後ろに下がり、部屋の外の縁側に座った。
次がフロイス師、そしてオルガンティーノ師の順で、私、マリン師、ディアス師、パシオ師と続き、最後のロレンソ兄が我われの後ろに座った。
広間と縁側の間の神の扉である襖は開け放たれていたので、縁側といっても広間とつながっている空間だった。だが、関白殿下は遥か上座に座っているのでその顔は全く分からない。
ただ、服装は前に会った時とは比べ物にならないほどきらびやかな赤っぽい貴人の服であった。
「バテレン様方、どうぞ近くに」
その遥か上座から、聞き覚えのある関白殿下の声がした。
その言葉を小声でフロイス師がコエリョ師に告げると、我われはコエリョ師を先頭に立ちあがってゆっくりと部屋の中央まで進みまた座った。
「今日は、ご苦労さでござるのう」
座って頭を下げたままの状態から顔を挙げると、もう関白殿下の顔の表情が分かる位置にまで来ていた。
「そなたがキリシタンの大僧正か」
フロイス師から伝え聞いたコエリョ師は、また頭を下げた。
「本日はお招きに与り、光栄です」
コエリョ師のポルトガル語でのその言葉を、フロイス師が日本語で関白殿下に告げる。関白殿下はにこにこしてうなずき、広間の脇に並んでいた先ほどの殿たちを見た。
「右近殿、そなたはキリシタンゆえ、バテレン様方と同じ側に座るがよいぞ」
関白殿がジュストにそう言うので、ジュストは頭を下げた。
「ありがたき幸せ」
ジュストは立ち上がって、我われの列の後ろに座った。
そして関白殿は首をひねって部屋の外へ大声で呼びかけた。
「大谷刑部! 例のものを」
「は!」
部屋の外から大きな返事が聞こえた。すぐに二人の殿が金の盆を持ってい入ってきて、我われの前に進んだ。
見ると二人とも首に十字架をかけている。たしかに、毎週教会に来ている殿たちだ。私がまだ大坂に来る前に洗礼を受けた人たちのようで、私は顔はしょっちゅう見ているがその名前は知らなかった。
その二人の殿がコエリョ師をはじめ、我われの前に盆を置いた、盆は黄金に塗装され、長い一本の足がついていた。その盆の一つには干した果物、もうひとつにはなにやら日本の菓子が乗っていた。
「美濃の干し柿でござる。秋には美味の柿が採れるのだが、今の季節はこうして干したものが出回っておる。さ、さ、バテレン様方、どうぞ遠慮なさらず」
その言葉をフロイス師を通して聞いたコエリョ師は、まずその干し柿に手を伸ばした。
「そなたらもキリシタンゆえ右近と並べ」
関白殿下にそう言われて、干し柿を持ってきた大谷刑部と呼ばれた殿ともう一人の、二人の信徒の殿は我われの後ろのジュストの隣に座った。
すると関白殿下は一段高くなった台の上の自らの座を立ち、我われの方へ歩いて来て、コエリョ師のすぐ前に座った。コエリョ師は驚いたような表情を見せていた。
「遠路はるばるご苦労でありましたな」
関白殿下はまたもやにこにこしている。織田殿も我われには愛想がよかったとはいえ、ここまでではなかった。
これまで私が訪ねたことのあるどの城も、こういった殿と会見するような部屋はたいてい板張りで、こんなに広い広間であるにも関わらずそのすべてに畳が敷かれているというのは初めてであった。
「本日はお目に書かれて光栄です」
フロイス師の通訳を通して関白殿下の言葉を聞いたコエリョ師も、関白殿下に言葉を返した。それをまたフロイス師が日本語で関白殿下に伝える。その間、どうしても間延びしてしまう。
それにしても、またもやコエリョ師はほとんど笑顔を見せない。我われほど顔の表情を重視しない日本人相手であるとはいっても、このコエリョ師の無愛想ぶりはまずいのではないかと私も思ったが、口をはさめる余地はない。
その言葉を伝えるフロイス師もまた、愛想がいい方とはいえない人だ。
「今回ははるばる九州から起こし頂いたのは、何かご用事でもおありですかな」
「私はこの日本の準管区の上長を拝命しておりますので、定期的に日本準管区を巡察しなければなりません」
「日本の準管区とは」
「私どもの修道会はそれぞれの国をいくつかの管区に分けております。もともとこの日本は天竺(インディア)のゴア管区の中のマカオ管区に属しておりました」
「マカオとは?」
この質問はコエリョ師には伝えることなく、フロイス師が直接答えた。
「日本では天川などと称している明の地名です」
さらにコエリョ師は話を続けた。
「しかし五年ほど前に、日本はゴア管区から独立した管区にしようと話になりましたが、今はその前段階として準管区となっています。私がその日本準管区の長です」
フロイス師からの通訳を聞いた関白殿下のまゆが、少し動いた。
「キリシタンは自分の国ではないほかの国も、勝手にそう区分けしておられるのか」
「いえこれはキリシタンというよりも」
また、フロイス師が直接返答した。
「あくまで我われのイエズス会が、その布教活動のために分担を分けているというだけです」
「ならよいが、日本準管区長などと名乗られても、この日本で帝の次に長になるのはこのわしでぇあも」
関白殿下も少し笑ったので、聞いていた私も安心した。
「そなたは日本に来てから何年になる?」
「もう十四年になります」
「ほう。で、その間、こちらの都の方へは?」
「初めてです。ずっと九州におりました」
「それにしても十四年もいて、全く日本語が分からないのか」
最後のひと言は会話というよりも関白殿下のひとりごとのようなつぶやきだったので、フロイス師はあえて通訳してコエリョ師に伝えることはしなかった。
少し間が空いた。コエリョ師のあまりの仏頂面に、関白殿下もおもしろみを感じなかったのだろうか、急にフロイス師に直接話しかけた。
「通訳殿もかなり日本には長そうですな。日本語も大変お上手で流暢だ。前にはずっと都にいらして、上様とも御懇意にされていたとか」
「はい。親しく接して頂きました。ただ、織田様の突然の訃報に接した時、私は九州におりましたので大変驚きました」
「そうよのう。ウルガン殿もたしかもう日本には長くて、ずっと安土にお住まいだったのでしたよな」
「いかにも。織田様がお亡くなりになるまで、ずっとお膝元の安土におりました」
「皆さんは何度も上様にはお会いしていたようですが、私はその場に同席していたことはありませなんだ。それでもお名前はよくうかがっておりました」
フロイス師か関白殿下と直接日本語で話を始めてしまったらコエリョ師がまるで蚊帳の外になってしまうのを気遣ってか、話の内容はオルガンティーノ師がコエリョ師の耳元でかいつまんで通訳していた。
「ときにコエリョ殿といわれたか、今回は巡察のためにこの大坂に来られたと言われたが、そもそもバテレン殿たちがこの日本に来られたのはどういう目的か。本国からの何か司令でもおありか」
「ございません」
フロイス師の通訳を聞いて、コエリョ師は即答した。
「あくまでキリストの教えを述べ伝え、それを広めるためでございます」
「キリストとはキリシタンの教祖の耶蘇のことか?」
「左様でございます」
「そなた方が『デウス』という本尊を信仰しているのではないのか」
「はい。キリストはその『天主』がお遣わしになった御ひとり子で、御父『天主』とは一体の方でございます」
「うん、わしもキリシタンの教えのあらましは聞いておる。そなたたちはその教えを広めるだけのため、万里の波濤を乗り越えてやって来たというのは称賛に値する」
我われは皆、頭を下げた。
「日本全国にキリシタンの教えを広めたいというのだな」
「はい」
コエリョ師が力強く答えた。
「それは素晴らしい。まさしく称賛に値する。わしもなんとかこの日本の総てを手に入れたいと思っているし、それももうあと一歩だ」
なぜか関白殿下までもが、急に調子づいて得意顔になってきた。顔に多くのしわを寄せて笑っている。私が初めて姫路で会ったときは、こんなにも顔にしわがあったという印象はなかった。
「間もなく日本全土がわしのものになる。そうしたらな、わしはこの国をそっくり弟の美濃守に譲り渡そうと思っている」
「そのあと殿下は、どうなさるのですか?」
フロイス師の通訳を聞いた後で、コエリョ師は少し首をかしげて関白殿下に尋ねた。しかし、その目には鋭い光があるのをも私は見た。オルガンティーノ師も見たかもしれない。
だが、それをよそに関白殿下はしゃべり続けた。
「この国は弟に譲って、わしは朝鮮、そして明国へと攻め入るつもりだ」
私は息をのんだ。オルガンティーノ師とて同じで、私とオルガンティーノ師は思わず顔を見合わせていた。オルガンティーノ師の顔も引きつっていた。
「これはまずいのでは?」
オルガンティーノ師は私に、小声のイタリア語で言ってきた。私は黙ってうなずいた。
かつて織田殿の前で、カリオン師がその故国のスパーニャのインカ侵攻のコンキスタドーレスの話をし、織田殿におかしな野望を抱かせてしまったことが頭に甦る。
しかもあの時は、オルガンティーノ師不在の間にどうもフロイス師が織田殿に何か煽ったような気配さえあった。
今は我われの方からその話をしたわけではないが、同じことを関白殿下は話し始めている。つまり、関白殿下も織田殿と同じ野望を抱いているようだった。
2
それは甚だ危険なことだった。
もしかしたら関白殿下は、織田家の武将時代に織田殿から朝鮮・明国侵攻の野望を聞かされていた可能性はある。
だが、それを阻止しようとして明智殿は自ら汚名をかぶってまでも織田殿を誅した……もちろんこれも可能性の次元の話で、しかもそれだけではなく明智殿は自分の盟友である長宗我部殿と織田殿との不和という動機も併せ持っていたかもしれない。
だが、関白殿下はそのことを知っていたのだろうか……いや、知っていたけれども故意に隠しているふうな感がある。
関白殿下にとって明智は極悪非道な主君殺しでないといけない。なぜなら、自分の今の政治的基盤のもとは、織田殿を殺した明智を滅ぼし、主君の仇を討ったという大義名分が必要だからだ。
それとて我われは事実を知っている。あくまで明智を滅ぼした戦争の総大将は今の関白殿下ではなく織田殿の三男のあの三七殿であり、実際に明智の城を落としたのは今ここにいるジュストなのだ。
だが、今さらそれを蒸し返しても仕方がないので、とりあえずは私もオルガンティーノ師も口をつぐんだ。この場には、その明智殿の娘を妻に持つ長岡殿という殿もいる。
だが、その次のコエリョ師の発言は、私もオルガンティーノ師も度肝を抜かれずにはいられなかった。
「それでは殿下が朝鮮や明国討伐のためには船も必要でしょう。我われの最新の船を、殿下に提供してもかまわないと思っております」
フロイス氏は涼しい顔で、今のコエリョ師の言葉を日本語にして関白殿下に伝えようとしている。
私はまずいと思った。すぐにそれを阻止したかった。だが、準管区長の言葉に私が口出しできるようなそんな組織ではない。
「お待ちください!」
だが、私がしたくてもできなかったことを、おそらく同じ心であろうオルガンティーノ師はやってのけた。フロイス師が通訳しようとするところを、ポルトガル語でオルガンティーノ師は止めに入ったのだ。
フロイス師の眉が動いた。コエリョ師も顔を曇らせた。
「そのようなことは、巡察師からも禁じられて……」
血相を変えて食らいつくオルガンティーノ師を、コエリョ師はにらんだ。
「お静かに。関白殿下の御前であるぞ」
低い声で、しかも一喝するような気迫でコエリョ師はオルガンティーノ師に言い放つと、その顔の前で手を広げ、一切の発言を禁ずるしぐさを見せた。
オルガンティーノ師はまだ何か言いたそうに口を動かしていたが、たしかにこれ以上この場で我われの間でもめるのを関白殿下に見せるのは上策ではなかった。関白殿下は、我われが一枚岩ではないことを悟ってしまうだろう。
もう、フロイス師は滔々と、今のコエリョ師の発言を日本語にして関白殿下に告げている。オルガンティーノ師は、もう何も言えなかった。
確かに巡察師のヴァリニャーノ師は、この国のいかなる殿にも武器弾薬を我われが提供するのを禁じた。つまり、それはこの国の内政への干渉になってしまうからだ。
だが、それはこの国の中での内戦に際してのことではあるが、ましてや外交戦争にとなると事態はなおさら深刻となる。
「その代わり、明の国が殿下の掌中に入りました暁には、かの国での我われの布教を保証していただきたい」
さらにコエリョ師は、このようなことを言っている。だが関白殿下の顔を見ると、コエリョ師の申し出を喜ぶどころか、不快な顔つきまでしているのが見えた。
これはまずい。いや、まずいどころの騒ぎではない。明らかに関白殿下は我われの軍事力に対する警戒心を持ち、それを懸念している様子が感じ取れた。
だが、コエリョ師とフロイス師はどうなのか分からない、むしろ得意になっている。
そもそもコエリョ師に、いや今の我われの修道会に、そのような関白殿下に提供できる軍事力があるのか……そういえばコエリョ師はかつてフィリピーノのスパーニャ総督府に艦船などの軍事力の提供を求める手紙を出したという話があったが、あの返事はどうなったのか私は聞いていない。私が聞いていないということは、オルガンティーノ師も知らないのだろう。
実際のフィリピーナスからそのような艦隊が長崎い到着したという知らせは聞いていないし、実現はしなかったようである。だが、コエリョ師という元軍人の、元が軍人だからという理由だけで色眼鏡で見るわけではないが、そのコエリョ師とフィリピーノのスパーニャ総督府との間には、福音宣教というリヴェロを越えたどす黒いコンドゥトゥーラがあるような気がしてならなかった。
コエリョ師がイエズス会の宣教師であり、準管区長でなければ、仮にそのようなつながりがあってもスパーニャとポルトガルが一つの国になってしまった今では何の不思議ではないが、実際は聖職者が手を染めるべきことではない。
だが今この場では、いや、この場を下がってからでも、私はおろかオルガンティーノ師ですらそのことをコエリョ師には言えないであろう。
少し不快な顔をした関白殿下ではあったが、すぐに笑顔を取り戻し、そして立ちあがった。
「さて、バテレン様方には、この城の中のもっといろいろなところをお目に掛けよう」
そしてジュストを呼んだ。
「右近。そなたがバテレン様方を奥御殿まで案内せよ。わしは天守の入り口で待つ」
そう言って関白殿下はそのまま行ってしまった。
案内を命じられたジュストは立ち上がり、われらの方を見た。
「それでは、ご案内いたします」
ジュストについて我われはぞろぞろと、あちこちに黄金がふんだんに使われた屋敷の中を歩いた。窓は開け放たれていて、さわやかな五月の風が香りとともに入ってきた。
すべてが絢爛豪華という言葉に尽きるものだった。廊下を歩きながらその途中に通過する襖が開け放たれたすべての部屋の中まで見ることができたが、黄金ばかりでなくさまざまな彩色が施された艶やかな絵画が描かれた壁や、この国では珍しくエウローパでもごく限られた高貴な宮殿にしか用いられないような絨毯など、、我われが目を見張るようなものばかりだった。
全くエウローパの豪華な王侯の宮殿に劣らなかった。しかもこの建築もこの国における例外ではなく、すべて木造なのだ。
さらにエウローパと違い、外に向かってはすべての壁が窓になっていて自然の光が十分に差し込み、エウローパの宮殿のような昼でも薄暗いということはなかった。
やがて、渡り廊下は階段となった。
先ほど見えていた高い石垣の上の、一段と高い場所へと登るようだ。このまま階段を登れば、靴を脱いだ状態のまま石垣の上へ行ける。
石垣の上にも、また別の御殿があった。
「ここからは奥御殿でして、関白殿下が日常お住まいの場所となっています」
ジュストが説明をしていると、そこへ我われにとっては実によく見知った顔が現れた。
「おお、ジョアキム」
フロイス師はジョアキムに懐かしそうに声をかけた。
我われは毎週主日のミサで顔を合わせているし、我われにとってこの国の政治的なことの総ての情報源であるともいえた。かつては都の教会で顔を合わせていたが、今は関白殿下にお仕えしているとのことで、この大坂に移り住んでいた。
都にいた頃はあくまでも商人といういでたちだったが、今ではすっかりと武士の格好である。そして、関白殿下の海軍総司令官であるドン・アゴスティーノの父親でもある。
「わてもご一緒するよう、関白殿下から仰せつかりましたさかい、よろしゅうに」
恰好は武士でも、相変わらずの商人口調で愛想笑いを浮かべている。
「いやあ、お懐かしい」
フロイス師にとっては何年ぶりかの再会ということで、珍しくフロイス師も相好を崩していた。
「フロイス様も九州からお戻りで、ほんに懐かしうおます」
フロイス師はコエリョ師に、手短にジョアキムのことを紹介していた。
「ほな、いきまひょか」
ジョアキムはジュストとも目で合図して、再び我われは歩きだした。
目を見張るのは屋敷の内部ばかりではなく、窓から見える庭園もまた素晴らしいものだった。
安土の城の庭園も見事だったが、小さな山の上の限られた面積の安土城に比べると、ここの庭園は規模が遥かに大きかった。大きな池とその中の小島、そして人工的に土が盛られた小山も緑に覆われ、たくさんの木々が植えられていた。
さらには池の周りはちょうど一年で今がいちばん花が多い時期のようで、実に色とりどりの庭園となっていた。
歩きながら気がついたことは、先ほどの表御殿ではたくさんの武士が行き来していて、我われの一行とすれ違う時はさっと道を開けてくれた。だが、この奥御殿には武士は全くおらず、行きかっているのは女官ばかりだ。
そのことをフロイス師は、ジョアキムに尋ねた。
「へえ、奥御殿は男子禁制でございます。ここに出入りを許されているのは、この右近殿とわてだけどす。といってもいつでも自由にいうわけやのうて、限られた時だけどすけどな」
この大坂の城で、信徒が特別扱いを受けているということにフロイス師は満足しているようで、そのことをコエリョ師にも告げていた。
私がかつてこの城に来た時はまだ工事中で、多くの建物は足場の中であり、まだ完成には程遠い状態だった。今はその頃に比べればほとんど城としても屋敷としても立派な景観を備えてはいたが、だからといってもう工事は終わったというわけではなさそうだ。屋敷の外は多くの工事夫たちが資材を引いたり作業を続けていたりしているのだった。
3
そうして我われは、天守閣の真下まで来た。
天守閣は大坂の城の中でも最も高い石垣に囲まれた中央の一画の、その北東の隅にある形になる。
ここから見上げると本当にそれは天を突く塔のようで、その巨大さには息をのむ思いだった。
あの安土城の比ではない。
そして壁といい瓦というふんだんに黄金が使われ、それも金一色というわけではなくてさまざまな文様が側面には描かれていた。
天守閣へは石垣の上の建物から至るなだらかな石段があるが、それは外から入る場合であって、我われが歩いてきた屋敷の建物は側面の石垣とつながり、そこには黒い鉄の扉があって、別の秘密の入り口というような感があった。
そこはまだ工事中のようで足場が組まれて、作業をする人夫が多数いたが、そこに関白殿下が一人の尼僧のような女性とともに現れ、人夫たちに足場を取るよう命じていた。
そして関白殿下は巨大な黄金の鍵でその鉄の扉を開けた。
入る前に、ジュストやジョアキムは、その輿につけていた刀をはずし、控えていた武士に預けさせられていた。
中は薄暗かったが、すぐにかがり火がたかれ、関白殿下が自ら我われを先導して急な木の階段を上った。それはほとんど梯子といってもよかった。
上がりきったところが天守閣の一階のようで、すべての窓があけ放たれていたので急に室内は明るくなった。
その絢爛さに圧倒されてかコエリョ師はほとんど声も発することなくきょろきょろして歩き、我われもまた同様で誰も会話をなすものはいなかった。
私とオルガンティーノ師、ロレンソ兄が前に来た時は、この天守閣すらまだなかった時なのだ。
「さ、皆さん、足元にお気をつけて」
関白殿下だけが気さくに時々は振り返って我われに話しかけてくれたりしていた。
天守閣の中の部屋も、総ての部屋が黄金と朱色、そして極彩色の絵画で装飾されていた。
さらには家具が素晴らしかった。黒く光る素材に金が埋められ、それもまた高価なものであった。
さらには、前に来た時にも見て驚いたが、この天守閣の中にもエウローパのものとほとんど同じ形のいくつものレットが並べられていた、その上のきらびやかな布団は絹のようで、それは完全の我われの文化のものだった。
日本人は寝る時にはレットは使わないはずだが、この城ではいち早く我われの文化を取り入れているのには驚いた。
関白殿下の前には髪を短く切った幼女がその刀を掲げて歩き、時々関白殿下はその幼女に話しかけたりしていた。本当にここは男子禁制で、働いているのは女性ばかりである。
本来天守閣というのは戦争の時の見張りの砦のようなもののはずなのに、ここでは全く平和と権力の象徴だった。
三階まで登った時に、関白殿下は歩みを止めて我われに笑って言った。
「茶などを進ぜますよゆえ、少し休みましょう」
確かに急な階段を上り続けてきたので、呼吸が荒くなっていた。私などはまだいいが、コエリョ師もフロイス師もオルガンティーノ師も年配であるために、きつそうだった。
ましてや老いている上に盲目で白い杖が頼りのロレンソ兄にとっては、同宿の少年が手を引いてはいるとはいえかなりきつそうだ。だから、関白殿下の気配りはありがたかった。
従来がこのような気配りのできる人で、それが人心をつかんだのかもしれない。織田殿に可愛がられていたという理由の一つでもあったような気がする。
我われが座って休み、茶を頂戴している部屋の隣はやはり黄金の壁の部屋だったが、休憩が終わって立ち上がり、その部屋の前を通過した時に、大きなやはり金色の箱が置かれているのが目に入った。
「あれは組み立て式の茶室でござるよ」
歩みを止めて、関白殿下が説明してくれた。
「組み立てればすべてが黄金でできた茶室となるのだが、普段はこうして解体して箱に収容しておりましてな。どこにも持ち運びできて便利だで」
関白殿下は、ひとしきり得意そうに笑った。
「今年の正月には都に運んで、御所で帝にもご覧いただいた。実は昨日まで組み立ててあったのだが、もう一日そのままにしておけばよかった」
「いえいえ関白殿下」
ここでフロイス師が一歩前に出た。
「我われはすべてのことをつぶさに記録して、本国に書き送らねばなりません、どうか特別に組み立てて見せては頂けないでしょうか」
「いやあ、それは」
笑いながら関白殿下は、ジュストを見た。
「その黄金の茶室をここで組み立ててお見せしたら、ここにる右近がほしがって困るじゃろうて、また次の機会に」
そう言って関白殿下は、さらに大笑いをした。ジュストもまた照れたように笑っていた。
それからまた、我われは関白殿下直々の案内で、上の階へと上って行った。ただひたすら上へ上るのではなく、各階も皆案内してくれて、それぞれの部屋の鍵を関白殿下が自分でいちいち開けて我われに中を見せてくれた。
そこには絢爛さを誇る宝物ばかりではなく、ぎっしりと銃や弓、槍、そして刀などの武器が詰めこまれていた。その数のおびただしさに、我われは皆唖然としていた。
関白殿下は口に出してこそ言わないが、まるでこの城にはこれだけの武器があるのだということを我われに誇示しているかのようであった。
コエリョ師は何も言葉を発することもなく険しい表情で、時々眉を動かしながらそれを見ていた。
やがて、最上階に着いた。最上階の床面積は当然どの階よりも狭かった。
ここにはちょっとした座敷があって、やはり畳が敷かれていた。柱も壁も黒い漆塗りで、黄金の装飾が随所にあり、また彩色の絵画も描かれていた。壁の中央は四方とも外廊への出口となっていて、どちらの方角も今は開け放たれていて、五月のさわやかな風が吹きこんでいた。
「さ、どうぞこちらへ」
関白殿下がその外廊に出るので、我われも従った。安土城だとこの場所に当たる最上階の壁はすべて黄金だったが、ここでは柱だけ黄金で、壁は黒く漆が塗られ、扉をはさむ形に巨大な二羽の鳥の絵が黄金で描かれていた。まるでエウローパの伝説の鳥のフェニーツェのようであった。
外廊のすぐ下は下の階の破風という装飾的な三角の屋根の頂上があり、そこにも巨大な黄金の魚の彫刻が据えられていた。頭を下に体を反らせて尾をはね上げさせており、その背の部分をこちらに向けていた。
遠くを見渡すと、大坂の平野が一望であった。もしかしたら都よりも広い平らな土地である。山に囲まれてはいるが、その山は遥か遠くにかすんでいた。
ちょうど真下が我われが渡ってきた屋根付きの極楽橋なので、目で辿っていけば教会は分かる。大坂の城は二重の堀に囲まれているが、その北側にはさらに雄大な淀川が横たわっている。二つの川が合流するかなりの川幅のところにはおびただしい数の帆船が浮かび、まるで水鳥のように見えた。
やはり習性で、ついつい自分たちの教会を探してしまう。教会から間近に今我われが立っている大坂城の天守が見えるのだから、ここからも教会は見えるはずである。
横側の手間の高台を目で追うと、教会はすぐに分かった。屋根の上の十字架が陽光を受けて、きらりと輝いていたからだ。
「あそこがこの大坂の教会です」
オルガンティーノ師がコエリョ師に示していた。コエリョ師はまだ堺に来てから、一度も大坂の教会には来ていない。今日の関白殿下訪問の後に、初めて大坂の教会に来る予定になっている。
考えてみればフロイス師でさえ、大坂の教会は初めてのはずだ。
我われが教会を指差しそんなことを話しているそばに関白殿下が来て、言葉が分からないまでも、教会のことを話しているのはすぐに分かったようだ。
「そう、あそこがバテレン様方の南蛮寺ですよ。ついこの間お邪魔しましたな」
そう言って、関白殿下は笑った。
そしてそのまま目を西の方へ向けると、そこ方角だけすぐに大地は途切れて海が広がっていた。
「どうです。ここから見渡せるこの広い土地だけではないのですぞ。あの山の向こうの向こうも、あの海の向こうの向こうも、この秀吉のものだ」
秀吉とは、関白殿下の実の名前である。
その言葉をフロイス師の通訳で聞いたコエリョ師は、また眉動かした。
「海の向こうの西には、長崎があります。長崎は我われ教会のものです」
その言葉をフロイス師が日本語にして関白殿下に伝える前に、オルガンティーノ師が日本語で話に割って入った。
「今、九州はまだ大友殿や薩摩の島津殿が領有していますね」
関白殿下は高らかに笑った。
「確かに九州の地はこれからも毛利と、大友と、島津で分けて統治するがいいと考えている。でも、基本はわしの土地だ。彼らの領地はこれからだいぶ少なくなろうな」
そうして関白殿下はまた歩きはじめた。南の方は目下に大坂城の奥屋敷が広がっている。まだまだ工事中で、大勢の人足はせわしくなく動き回っているのが見える。
そして、そのうちの何人かが、関白殿下とともに我われが天守の最上階の外廊にいるのを見つけてこちらを指差して示し合い、何人かが固まってこちらを見上げるようになった。その数はどんどん増えている。彼らは何かをささやき合っているように見える。
もちろん顔の表情はここからは全く分からないが、かなり驚いているようだ。
「やつらめ。 わしとともにバテレン様方が天守の上にいるので、かなり驚いているな」
関白殿下は大笑いしながら懐から赤い扇子を出し、それを広げて払うように人足たちに扇子を振って見せた。人びとの間で歓声が上がった。
「さ、中に入りましょう」
中の座敷に戻ると、そこには先ほどのような少女たちによって、今度は茶ではなく酒が用意されていた。
4
我われは輪になって座った。関白殿下も手が届く近さに我われとともに座った。ジュストとジョアキムは遠慮して、我われの輪の外側に座っていた。
「フロイス殿も久しぶりよのう、九州からこちらへ来られたのは何年振りか」
「最後に安土に参りましたのが信長様が亡くなられる前の年でしたから、もう五年も前ですか」
「そうか、その頃わしは姫路におったから、フロイス師にはお会いできなかった。それにしても、フロイス師と了斎殿がともにいると、あの時のことを思い出すなあ」
そう言って関白殿下は、ロレンソ兄を見た。
「あれはいつだったか、都で了斎殿は日乗とかいう法華宗のくそ坊主と論争をしたことがあったよなあ。上様の御前で。あの時の了斎殿は実に見事で、日乗は最後はたじたじだった」
「おや、あの時、いらっしゃったのですか?」
ロレンソ兄が意外な声を発した。
「おったとも。わしもおったのだぞ」
関白殿下はまた、高らかに笑った。
「あの頃わしは木下藤吉郎と名乗って、都の警備を任されておったからな。あれはまだ永禄の頃だったから、もう何年前か?」
「はい、私が都にいたときですから、十五年以上は前ですね」
フロイス師がこうして関白殿下を話をしているので、代わりにオルガンティーノ師がその内容を小声でコエリョ師に伝えていた。
「あのときは日乗め、こと変えてなんと上様のお刀を持ちだしてきて抜いて、了斎殿に斬りかかろうとしたろう。あれにはたまげた。霊魂とやらがあるのならここで了斎を切り殺すから、その霊魂を取り出して見せてみろなんて屁理屈ほざきおってにゃあ」
また、関白殿下は大笑いをした。そして急に厳しい顔つきになった。
「あの時は上様が取り押さえて、その後で日乗を追放したにとどまったが、もしわしの面前で同じようなことをする輩がいたら、わしはその場でその曲者を切り殺すから安心いたせ」
そしてまた、関白殿下は大笑いをした。
そうして我われは酒を酌み交わし、関白殿下の昔の武勇談などを聞きながら、かれこれ一時間くらいはそこにとどまっていた。
「それではそろそろ、失礼するとしよう」
コエリョ師が立ちあがったので、フロイス師がその言葉を関白殿下に伝えた。
「そうだな。バテレン様方もお忙しい身であろう、お引き留めして申し訳なかった。このあと、奥御殿を回っていかれるといい。実は何人かの女たちがバテレン様にお会いしたいと申し出てきたので、わしは許しておいた」
関白殿下も立ち上がり、下の階に向かう急な階段を下りはじめた。
その後、関白殿下に連れられて元の奥屋敷に戻ると、その一室で多くの女たちの来訪を受けた。皆奥屋敷で働く女官たちのようだった。
そしてその先頭に座っているのは、私やオルガンティーノ師にとっては実に顔なじみの女性だった。ずっと我われと同行してきたジョアキムの妻、マリア・マグダレナだ。
「おお、商家の奥方がすっかり奥女中ですね」
オルガンティーノ師が笑うと、マグダレナも笑っていた。ジョアキムがすっかり武士なのだから、当然ともいえる。
「今では家内は、関白殿下の奥方の北政所様の侍女をしています」
実質上、この人は関白夫人の秘書であることはすでに私も知っていた。
「あらまあ、フロイス様。なんとお久しぶりで」
彼女はしょっちゅう会っている我われよりも、やはりフロイス師との再会の方が新鮮なようだった。
それからマグダレナは女官の一人ひとりを我われに紹介し、何人かの女官と一言二言問答があった。
そこではあまり長い時間は費やさず、関白殿下もここで失礼するというので、我われは奥御殿を出た。
驚いたことに、表屋敷の玄関で脱いだわれわれの靴が、いつの間にかこの奥屋敷の出口のところに運ばれていた。
それから我われは、ジュストとジョアキムの案内で一度奥座敷のある本丸と呼ばれている一番高い石垣の上のゾーナを下って、内堀の外へ出た。
ジュストによるとそこに関白殿下の弟の美濃守殿という人の屋敷があるという。すでに我われの訪問は知らされており、我われもまたあらかじめ進物を用意していた。
だが、その屋敷に至るまでの地域はちょうど石垣の工事の真っ最中で、多くの工事人たちでひしめき合っており、また彼らは我われが通ると好奇の目で一様に我われを見るので、なかなか前に進めなかった。
ジュストとジョアキムが先頭でそんな彼らを追い払いつつ進んでいくと、向こうからこっちに向かってくる何人かの人が見えた。
「ええい、通せ、通せ」
先を歩いているのが貴人で、そのほかはその従者らしい。その従者が工事中の人足たちを払いのけながら、貴人は間もなく我われの前に来た。
それは一人の殿で、着物の上に戦争の時に着るような陣羽織という袖のない上着を着ていた。彼が我われの前に近づくと、ジュストとジョアキムはすぐにひざまずいて頭を下げていた。我われも同じようにするべきなのか互いに顔を見合わせていると、逆にその貴人の方が我われの前で膝を折って屈み、頭を低く垂れた。
「関白の弟、羽柴美濃守秀長と申します。今日、バテレン様方が我が屋敷においでになると伺い、お迎えに参上しました」
その言葉をフロイス師を通して聞いたコエリョ師は、とにかくまず立つように言ってほしいとフロイス師に伝えた。
「どうぞ、お立ちください。こちらが我われの準管区長であるコエリョ神父です」
美濃守殿はそれを聞いて立ちあがり、それからもう一度コエリョ師に深く頭を下げた。
「そして私がフロイス。ずっと昔から織田様と親しくお付きあっしていましたから、どこかでお会いしたこともあるかもしれません」
それからフロイス師はオルガンティーノ師や私をも紹介してくれた。オルガンティーノ師も私もずっと大坂におりながら、この殿と会うのは初めてだった。
「立ち話もなんですから、どうか我が屋敷へ。今普請中で、周りが立て込んでおりますが」
それに対して、コエリョ師はフロイス師に耳打ちした。フロイス師は言った。
「実は私どもな関白殿下にお会いして、もうかなり疲れております。もともとほんのちょっとご挨拶をしに伺うつもりでしたので、今ここでお会いできましたから、お屋敷の方へはまたいつかあらためまして」
さしずめ口実ではなさそうだ。関白殿下にお会いしてコエリョ師はたしかに疲れきっている様子であるし、それはオルガンティーノ師も私も同じだったので、その言葉に嘘はないと思う。
「そうですか。ではぜひお待ちしております」
美濃守殿は深々と頭を下げて、我われを城の出口の門まで案内してくれた。
その後、教会までは長い道のりではないが、確かに皆誰もが疲れ果てている様子だった。
考えてみればコエリョ師もフロイス師もオルガンティーノ師も、皆五十歳を超えていた。だが、その疲れは年齢のせいだけではないだろう。まだ三十代半ばの私もへとへとなのだ。私とほぼ同世代のパシオ師やセスペデス師もそうだ。
時刻はもう午後になっていた。
教会で少し休んでからコエリョ師とフロイス師は初めて訪れるこの大坂の教会の聖堂でまずは聖体訪問をして祈りをささげ、それからオルガンティーノ師が司祭館や神学校の方を案内して回った。
「外見はあの砂の教会のままですけれど、だいぶきれいだ。移築の際に新しい建材を使ったのですか?」
フロイス師はそのようにオルガンティーノ師に尋ねていた。彼はこの教会が河内の岡山の砂の教会を移築したものであることは知っているし、その元の砂の教会も何度も行ったことがあるはずだ。
オルガンティーン師は移築の際に、ジュストからかなりの新しい木材を提供されたこと、そして神学校に至っては関白殿下から紀伊の寺院の木材の提供を受けたことなどを説明していた。
「今日は、こちらに泊まって行かれますね?」
オルガンティーノ師は当然のように、コエリョ師に聞いただが、コエリョ師は首を横に振った。
「いや、疲れてはいるけれど、やはり堺に戻ろう。ここはどうも落ち着かない。初めての教会だというだけでなく、すぐ窓の外にあの関白の城が見える」
だが、私はそれを聞いて、内心ほっとした。私が疲れ果てているのは関白殿下との会見ばかりでなく、一日中コエリョ師やフロイス師とともにいたという息詰まりからだとも思う。その息詰まりが、今晩一晩続くと覚悟していたのだ。
そうして早々に、コエリョ師とフロイス師はパシオ師とともに、夕方までには堺へと帰って行った。もうだいぶ日も長くなっているから、暗くなる前には着くであろう。
だが、オルガンティーノ師は不服そうだった。
「言いそびれた。あの関白殿下の御前での準管区長の発言、あれはまずい。私は止めようとしたのに、押さえられた感じだ」
いつも陽気なオルガンティーノ師が、明らかな不愉快な顔つきをしていた。




