勇者と宝物庫
「目を覚ましてください、異界から来た勇者たちよ」
リリスの問いかけに呼応したかのように2人の少女が目を覚ました。
空色の髪を持つ少女が疑問をつぶやく。
「ここはどこ?」
リリスが返答する。
「ここはシュットガルト王城跡、王座の間です」
金髪の少女が質問した。
「あなたは誰?なぜ私達はここに?」
「わたくしはリリス・フォン・シュットガルト。異界より勇者様方をお呼びしたのは滅びたこの国を復興させるためです。わたくしにも勇者様方のお名前を教えてくださいますか?」
2人は顔を見合わせると、それぞれ自己紹介を始めた。
「わたしはルリって言うの!」
空色の髪の少女が活発そうに答えると、続いて金髪の少女も静かに答える。
「あたしはティオよろしく」
「ルリ様にティオ様ですね!これからよろしくお願いしますね。ところで、御ふたりは気分が優れないとこなどはございませんか?」
ルリは元気よく「ないよ!」と答え、ティオも静かに首を横に振り否定の意をしめした。
それを見たリリスは微笑みながら話を続ける。
「それはよかったです。では早速なのですが、今から宝物庫へ向かいましょう。悪の帝国ガルガンドを打ち滅ぼす武器を授けますので」
リリスは宝物庫へ向かいながら胸をなでおろした。
異界の勇者は体調を崩している様子もなく、アンティオぺ人が異世界でも生存することができる確認ができた。
といってもルリについては何も心配していなかった。ルリはアンティオぺが誇る最強の強化人間らしく戦力としても期待している。
問題はティオの方である。彼女は普通のアンティオペ人であり魔力も強靭な肉体も有していないのである。
そんなことを考えていたら、いつの間にか宝物庫の前へと着いていた。
「こちらになります。どうぞ中へ入って」
扉を開けるとそこには惑星国家アンティオぺの武器や小型の重力制御装置までもが並んでいた。
「何でここにアンティオぺの武器が?」
思わず疑問の声を上げるティオに対してリリスは説明する。
「ここは異界から流れ着いた漂流物を保管している場所なんです」
実際には、アンティオぺから譲渡された道具を並べているだけである。
「さて、どんなものがいいでしょうか……」
リリスは考え込む仕草をする。すると突然ルリが声を上げた。
「ねえ!これなんかどうかな!?」
彼女が手に取ったものは1本の剣だった。それは鞘に収まっており刀身を見ることはできない。
「これは?」
「んー、おとぎ話の異世界の勇者様なりきりセットだよぉ。わたし、おとぎ話の主人公に憧れてたんだ!」
ルリは剣を掲げながら満面の笑みを浮かべた。
「そうですか……わかりました。ではその剣にしましょう!」
「やったぁ!!」
「ただし、その剣を振るう時は気をつけてくださいね。その剣はとても危険なものですから。くれぐれも人を傷つけたりしないようにお願いしますね」
「うん!わかった!」
ルリは素直に返事した。
ティオは小型な重力装置やこまごまとした道具を手に取った。そしてそれらをまとめてバッグの中にしまいこむ。
その後、彼女達はそれぞれ部屋に戻り休むこととなった。王城は荒れ果てていたがいくつかの部屋は休むことはできそうであった。
3人しかいない王城はあまりにも寂しく祖国シュットガルト王国が滅んだことを否応なしに感じさせる。
しかし、それもすぐに終わるだろう。なぜなら2人の勇者がいるからだ。
祖国復興の日も近い、そう自分に言い聞かせてリリスは眠りについた。