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人間界逃走の果てに  作者: コサイン
4/14

逃走4:どこ行っちゃったのよ!

急展開…なのかな?


「だからっ!

最初に使われた魔法は火の魔法なのっ!何回言えば分かるわけ?」


「俺ら悪魔は水の魔法って習ったぜ!?」


「あんたら悪魔が最初に使った魔法なんて知らないわよっ!

今やってるのはに・ん・げ・んの魔法使いが最初に使った魔法なのー!」


「ちぇー、混乱するぜ。」


時間はあっという間に過ぎてテストは明日へと迫っていた。

ベルは学校があるのだが、ヴァンのテストを優先して学校を休むという気合いの入れようだ。


「なあ、結構覚えたからご褒美に外出ちゃダメかー?」


ヴァンはこの六日間ベルの家に缶詰だった。ヴァンの勉強を見ているベルもそれは同じなのだが。


「…外に出て何する気?」


ベルはヴァンを睨んだ。ヴァンはそんなベルの顎を人差し指でクイッと持ち上げる。


「言わなくても分かるだろ?淫魔としての活動だ。」


ヴァンはベルを色気をはらんだ目付きで見つめたが、あっさりベルはヴァンの手を「邪魔」と払うと、勉強道具を広げたテーブルに頬杖をついた。


「今は勉強の方が先よ。あたしがわざわざ学校まで休んでやってんだから。」


「えー!!少しだけでも!外に出ても何もしないって約束するから!」


「……まあ、外の空気を吸うくらいなら…。」


「よっしゃー!!サンキューなベル!」


「あ!ちょっとっ!」


有り得ないスピードで家を出て行くヴァン。

ポツーンと取り残されたベルは「待ちなさいよっ!」と慌てて後を追うのだった。



すっかり夜になったレイシア王国は家という家の窓から溢れだす光で綺麗なイルミネーションになっていた。


街には所々外国からやってきた『桜』という品種の樹が植えられており、丁度この春の季節に見頃を迎える。桜が家の明かりに照らされた様子を見に来た人々で街は賑わっていた。


そんな中にヴァンはいた。ベルとの約束を破るつもりはこれっぽっちもなく、ただ外の空気を吸いに来ただけのようだ。


「痛いよぉー!うわーん!」


見ると、人込みから離れた路地で女の子が泣いている。ヴァンは悪魔らしく放っておこうかと思ったが、どうしても気になった。


――俺は悪魔らしくない悪魔だなあ。


そうぼやきながら仕方なく女の子に近付いた。


「どうしたぁ?」


「うっく、ひっく……うわーん!」


まだ五歳くらいの女の子は顔を上げてヴァンの顔を見ると、一層激しく泣き出した。失礼な子供である。


「えっとお…落ち着け、俺は何もしないから。」


泣きやまないどころか激しくなった女の子の声にヴァンは慌てた。


「うわぁん!うわぁん!」


「よ、よーしよし。」


ヴァンは油断していた。それ故に気付けなかった。危険が彼の真後ろに迫って来ている事に。


――ヴァンの背後で何者かが呟く低い声がした。


「――何者だ!?」


人間より数倍早い反応で気付き、振り向いたヴァンだったが事は手遅れ。


「……!!」


音もなく発せられた呪文は成す術もなくヴァンを貫いた。


重力に従い、地面に倒れるヴァンだったが辛うじて意識はあった。


ヴァンが倒れたのを見計らったかのように黒服の男?が女の子に近付き声をかける。


「見事な演技だった、アリア。」


アリアと呼ばれた人物はさっきまで泣いていた女の子だった。アリアは先程とは打って変わって無表情を顔に貼り付け、当たり前だと言うように頷いた。


――この女の子と呪文をかけた奴は仲間!?あーあ…俺、油断しち…まった…。


そこでヴァンの意識は、途切れた。





「ったく!あいつどこ行っちゃったのよ?」


ズンズンと足音も荒く歩く、フワフワの金髪を靡かせる少女。夜のうっすらライトアップされた桜を見る為に集まった上機嫌な花見客でごった返す中、こうも不機嫌そうな表情で歩くのはどこを探したって彼女だけだろう。


――そんなに時間が経ってないからそこまで遠くへはいってないはず…いや、ヴァンの事だから短時間でも遠くへは行けるに違いない。


ベルは深い溜め息をつくと行く人行く人の顔を見ていった。


街行く人の顔をいちいち確かめなくても相手がヴァンではないことはベルも十分に分かっていた。悔しいが、ヴァンはオーラが普通の人とは違い過ぎるのだ。


ドンッ!


「あっ!ごめんね!」


ベルが余所見をして歩いていたせいで幼い女の子にぶつかり、相手の女の子はぶつかった衝撃で地面に尻餅をついてしまった。


手を差し延べて女の子が立ち上がるのを手伝おうとするベルだったが、差し延べられた手に気付かなかったのか。

そこは謎だが、女の子は自分で立ち上がるとスタスタと何処かへ行ってしまった。


「行っちゃった…。

四、五歳くらいかなあ。迷子だったのかしら?」


それにしても、とベルは思う。


「表情が無かったわね…。」



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