逃走12:決着
後半グダった~
最悪(´_ゝ`)
そしてこの話を
もう一つの物語の方に
投稿しちゃて焦った~
最悪(´_ゝ`)
風がビュウビュウ吹き荒れる。シュメイルはスカートが捲れ上がり、その中身をクラスの男子が涎を垂らす勢いで見ているのを知らなかった。そんな余裕が無いくらい追い詰められていたのである。
苦しい…!何とかしなければいけませんわ…!
風で息が出来ない中、途切れ途切れに詠唱の言葉を紡ぐ。
「水…よ、…我に向かう…障害を流し、消し去れ…『FLOOD』!!」
ゴウッ!!
シュメイルの両手から発生した大量の水はアンジェラの風を飲み込んで津波のようにアンジェラへと向かう。
「………っ!!」
扇子で風を起こしてシュメイルの魔法を薙払おうと試みるアンジェラだったが、風は水を僅かに飛び散らせるだけで効果を成さなかった。
ザアアアア!!
とうとうアンジェラにシュメイルの魔法が直撃する。やり過ぎな位の水の嵐はシュメイルがもう十分だと判断するまで続いた。
「もういいですわね。」
そう言って魔法を止める。水が襲いかかっていた場所にはグッショリ濡れて気絶しているアンジェラが倒れていた。
「ピーッ!勝者、シュメイル=ピン!」
アーサーの判定が入る。
ワァっと盛り上がる男子生徒。彼らの気持ちとしては、「いいもの(パンツ)を見せてくれてありがとう」という所だろう。
戦闘終了後、シュメイルは生徒の中にベルの姿を認めた。彼女はマスクを付け、手に黒い男子用ブレザーを持っている。
「ベル!
遅刻した原因は風邪ですの?」
それにベルは困ったように笑い、
「ええ、昨日体冷やしちゃって。」
と答えた。
「そのブレザー…。」
シュメイルがまじまじとベルが手に持っているブレザーを見ると、ベルは少し顔を赤らめた……ように見える。
シュメイルにはこのブレザーが誰の物かすぐにピンと来た。
――今日ブレザーではなく、ワイシャツだった男子生徒は一人しかいませんわ…。
シュメイルがベルに昨日ヴァンと何があったのか問い詰めようと口を開いたその時!
ドオォオォオオン!!!!
訓練場からそう離れていない所から爆発音が聞こえてきた。続いて、ブシュー!!という水の音。
「な、何事ですの?」
訓練場にいる他の生徒達はパニックに陥っていた。いきなりの爆音に驚いて悲鳴を上げる者、「悪の組織が学園を乗っ取る為に攻めて来たんだ!」と脈絡もない事を叫ぶ者、反応はそれぞれである。
「ピピー!!
皆落ち着けー!
俺が見に行くから皆はここに……おいちょっと!」
アーサーの話もろくに聞かずにアーサーの前を走って通り過ぎる男子生徒二人。一人はシュメイルの従兄弟であるケルンと、うるさい事で有名なジャックリーだった。
「お前たち!戻るんだ!」
アーサーの必死の呼び掛けにケルンは走りながら答える。
「ヴァンがいないんです!
まだ近くにいるだろうからここに呼び戻さないと!」
「あなた達が行くならあたしも行くわ!」
ベルも便乗して走り出す。
「あたし、ヴァンが向かった方向なら分かるから!」
「待ちなさいベル!
私も行きますわ!」
ベルには負けてられない。それはお嬢様としてのプライドでもあった。
「こら!ピン、ヨーク!!」
アーサーは引き止めようと手を伸ばすが、その目の前をAクラスの生徒達が一斉に通り過ぎて行く。
「せんせー、ごめんなさーい。」
「何か楽しそうだから行くねー?」
「先生も来なよー!」
生徒達は口々に声をかけていく。しまいには皆訓練場のゲートを出て行ってしまった。
水道菅は破裂して辺りに水を振りまき、トイレだった空間はすっかり破壊され瓦礫がゴロゴロ転がっている。
そんな中にベル達Aクラスは茫然して立っていた。
「ガーグ!
お前が許婚になってみろーっ!!」
「やだねっ!
あんな怖い許婚いらねえもん!」
この破壊された後と今の彼らの姿を見れば当たり前だろう。
「ガーグって確かあのちっちゃいガーゴイルだったわよね…。」
ベルがぽそりと呟く。
そうなのだ。ベル達の目の前にいる二人は、ヴァンにはワイシャツを突き破って翼が生え、ガーグと思われるガーゴイルは今や170センチぐらいに巨大化していた。
「ヴァンジルド君に翼が…」
「アレってガーゴイルって言うんだよね?」
「ここって確かトイレがあった?」
ザワザワザワ。
「なあ、ヴァン?
騒がしくないか?」
「お前には周りを気にする余裕なんてねぇ、よっ!」
ヴァンはワイシャツの袖からナイフを何本か取り出し、ガーグに向かって投げる。
カカカカッ!
ナイフをガーグが飛んで避けた為、それらはトイレのドアだった白い木片に刺さった。
「やったな!?」
プクッとガーグの頬が膨らみ、黒い煙を吹き出す。
「くっ!」
口を腕で覆いつつ、バサリと煙を翼で払うヴァンだが、追い払った煙の先にケルン達がいる事に気付いた。
「なっ!?
ケルン、ジャックリー!?その煙を吸い込まずに魔法で追っ払え!」
「魔法で?
分かった!」
ケルンが素早く反応して詠唱を始める。
「風よ、すべての物を吹き飛ばし我を助け賜え…【BLAST】」
「そ、その詠唱って……」
ゴォオッ!!
ヴァンが焦って声をかけるが時既に遅し。
風が爆発した。――その場にいた全員が思った。
「お前使う魔法をかんがえろおおおぉぉぉ!!」
風に逆らうように飛びながらヴァンが叫ぶ。
「キャアッ!?」
次々と風にさらわれてどこかへ飛んで行くクラスメイトの中にベルもいた。
「!
ベル!!」
「油断しちゃだめだぜ!?」
風を背にバザバサ近寄るガーゴイルの気配を感じて振り向くと、ニヤリと不敵に笑うガーグが。
「そっちは風下だヴァンジルド王子様っ!!」
「しまった…!」
ケルンの風の魔法でスピードが上がったガーグの黒い吐息は容赦なくヴァンに襲いかかった。
「どうだあ!?
オレの勝ちだっ!!
黒煙で気絶しなっ!」
ガーグが勝ち誇ったように叫ぶ。どうやら黒い煙は相手を気絶させる効果だったようだ。
その時。
突然風が止んだ。
風に飛ばされていた生徒達が地面にボトボトと落ちていく。それは翼はあるが、気絶してしまったヴァンも同じ事だった。
地面に横たわっているヴァンのもとへバサリと着地するガーグ。
「お前には可哀想だが魔界に連れ帰らせて貰おうかな。」
そう言ってヴァンを持ち上げようと手を伸ばした、が。
「馬鹿め。」
ガーグの左頭部に鋭い蹴りが入り、ズザァ!と飛ばされるガーグ。ヴァンは気絶などしていなかった。
「風のおかげで、息止めとけば一瞬で通り過ぎる煙を吸うヤツはいねーよっ!
俺の見事な演技の前に平伏しなーっ!」
ガーグは横たえたまま、ツカツカと歩み寄るヴァンを見てフッと息を漏らす。
「見事…な蹴り…だった…ぜ…。」
「当たり前だアホッ!
……ウッ!?」
ドサリと地面に倒れ込むヴァン。
「やっと…効いたか…。それ…は肌から…染み込む…んだ…………ガクッ。」
「畜生……新タイプ…考え出しやがったか…………ガクッ。」
――こうして傍迷惑な内輪揉めは終結を迎えた。
被害総額:三千万ゴールド(日本円にして三千万円)
被害者:ケルン(風を生み出した本人)とアンジェラ(訓練場で気絶中)を除くAクラスの生徒達
得た物:クラスの団結、傷だらけの笑顔
結論:お金で買えない価値がある(意味不明)