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苦悩のC/眠り龍

すいません。色々あって執筆が滞っていました。再開します

 『ご覧ください。これがあの有名な龍人の凍結した姿です。

 専門家によると、全身はくまなく凍っていて通常の生き物なら生存は不可能とされています』

 『川内さん、通常の生き物ということは、氷漬けでも生き残る生き物がいるということなんでしょうか?』

 『研究によると、4万年も前の虫が蘇生されたという報告もあります。生存というよりも、仮死状態とも言えますが、今回の龍人は不明な点も多く、近隣住民は避難誘導がされています。以上で中継を終了します』

 『……川内さん、ありがとうござました。連日世間を騒がせているドレード被害。いったいいつになったら終わりを迎えるのでしょうか。そして、それに敵対する龍人は何者なのか、なぞは深まるばかりです』


 ピッ


 風見家は一連のニュースを見ると、テレビの電源を切ってしまった。


 由香の母である結城はニュースの内容に怒りをおぼえていた。


 「まったく、本当に勝手。大雅君はとってもいい子なのに」

 「母さん、世間はガーディアの正体を知らないんだ。ああなるのも不思議じゃないさ」

 「だからってひどくないかしら。あれだけ皆を守ってるのに、怪物扱い。しかも、聞くところによると大雅君を解体するみたいな話じゃない」

 「それは嫌だが……だが、私たちがどうこうできる問題ではないだろうに」

 「それもそうなのよねえ」


 自分たちは大雅のことを知っているから、ガーディアのことを悪く言わない。だが、自分たちでは大雅を助けることができないという現実は、2人とも口にしないだけで辛いものだろう。

 現在、大雅の凍結像の周りには人が近づけないように多くの警備が敷かれている。その中にはあの有名なガルガウズまでもがいる。

 一般人では、大雅の凍っている姿しか拝めない。


 ちなみに、結城の言う解体という話は本当で、体表の氷を少しずつ溶かしていき本体を取り出し体をばらばらにしようとしているのだ。

 体の各部分などの研究をして、今後の科学の発展に貢献させるために。

 世間はこの動きに肯定的な意見が多い。なぜならば、ドレードの正体の不透明性が原因だ。唯一、対抗できる存在を研究することは自分たちの生活を守ることで、感覚的には薬を投与する実験用マウスと感覚が変わらないのだ。

 まあ、それでも自分たちを守ってくれていたのに、研究材料にするのはどうなのかという、否定的な意見もわずかだが見受けられる。


 「由香はどうしたいの?」

 「有藤には実験材料になんてなってほしくない。純粋な私個人の意見だ」

 「そうよね……もう一人の澄香ちゃん―――とか言ったかしら?あの子は?」

 「ああ、阿内は責任に押しつぶされそうになっていたな。有藤を傷つけてしまったことを本当に公開してる。だが、親の仇も取りたい。それが、仇を取ることから離れていくことと分かっていても自分を抑えられないみたいだ」

 「やっぱり、戦う力を持っても子供ね。由香はせめてみんなを支えてあげなさい。と、言いたいところだけど、受験もあるからほどほどにしなさいよ」

 「はあ、ここで受験の話をするか?」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 阿内澄香は苦しんでいる。


 親を奪ったグレイというマラークを憎む気持ちと、大雅とともに戦わなければグレイは倒せないという理解のはざまで。

 彼女はわかっている。頭では理解しているのだ。大雅の協力なしに自分は死ぬだけだということに。それを毎回止めてくれている大雅に感謝すべきだということも。

 だが、澄香は何としても自分の手で親の仇を取りたいのだ。


 なにもできなかった自分ができる唯一の供養ともいえるのだから。


 澄香はそのジレンマに苦しんでいる。芽衣の言い分も理解できるし、自分の間がままだけではいけないと澄香自身も思っている。だが―――


 「あいつの顔を見ると、途端に憎しみが……」


 あまりの苦しさに澄香は、誰もいない空間で呟きを漏らしてしまう。


 「誰か。助けてよ……」


 一方、大雅が凍結してからの学校はというと―――


 「今日も来てない……」


 姿を見せない大雅を心配している由愛の姿があった。

 大雅は、どんなに授業に参加することはなくても朝と帰りのHRには顔を出していた。だが、最近はそれすらもなく彼が来ている痕跡すら見当たらない。


 それが彼女にとってとても不安なことだった。

 大雅が家に帰っていないことを由愛は知っている。だからこそ、彼の姿を学校で見かけなくなったらなにかの事件に巻き込まれてしまったのではないかと勘繰ってしまう。


 そうでなくても、誰とも知らない女と一緒にいるんじゃないかとも思う。現に、大雅が学校に来なくなった時期と同時期に、転校生の澄香も学校に来なくなった。


 由愛の想像通り事件じみたものに巻き込まれたのは事実だが、彼女の危惧している大雅に女の影というものは現れていない。

 まあ、現在進行形で先輩の風紀委員長を落としてしまったのだが……。それは彼女の知りたくない事実でもあろう。


 「なんだ、有藤は今日も来ないのか!はっ、俺のテストが怖くて来れないんだな!」


 由愛の心情とは別に不快な声が教室に響き渡る。

 その声の主は数学教師だ。なにかと大雅を敵視している教員だ。


 この間、澄香が大雅を連れてくるという話だったが、結局二人とも来ずに小テストは行われ、教師が臆病者だとか言いたい放題なのだ。

 そんな姿を見ているクラスの人達は、由愛を泣かせた大雅は印象良くないが、数学教師は生理的に受け付けないと言い始める生徒が多発し始めた。


 「有藤のついでに阿内も休みか!あの二人、もしかしたらまぐわってるのかもな!まあ、臆病者同士お似合いだろ!」


 ガタッ


 「お、おう、どうした梓?」

 「すいません、なんでもありません」

 「な、なら急に立って睨むな。びっくりするだろ」


 数学教師の物言いに、音を立てて席を立ちあがる芽衣。だが、睨みつけるだけで、彼女は特に何も言わない。

 いや、言えないのだ。大雅たちは命を懸けていることを。それをバカにされたことはたまらくムカついたが、なんとか思いとどまった。


 (私、澄香に最低なこと言っちゃった……。澄香も辛いのはわかってたはずなのに)

 (な、なんで梓さんが大雅をバカにしたような言葉に、ムカついてるの?も、もしかして……)


 こうして、芽衣は自分のしたことに悩み、由愛は勘違いじゃないけど勘違いを加速させていった。

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